新世界秩序への誘い(その25)-宇宙をひも解く科学者の歴史

 「カオス」とは、一般に宇宙誕生前の形も何もない、あらゆる未来を孕んだ混沌とした状態を指していると定義されています。そこには、光も闇も、無秩序も秩序も、すべての可能性と制約が含まれていると説明されています。

 新世界秩序への誘い(その23)で紹介した人生と仕事の総合コンサルタント高橋圭子氏によれば、私たちに訪れる出会いや出来事が未来にあるとき、今の段階では、まだ形も輪郭もなく、結果も出ていない「カオス」として存在しているとします。そこには、未来に向かうヴィジョンもあれば、問題の種、ありとあらゆる可能性と制約が織り込まれているというものです。

 宇宙誕生前の「カオス」については、ある何かをきっかけとしてビッグバンを起こし宇宙という姿・形あるものが形成されました。その宇宙には銀河系があり、さらにその一部に太陽系が存在し、さらにその太陽系の1つの惑星として我々の住む地球があります。

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 この様に、人間の出来事における「カオス」の結晶化の話は、宇宙でビッグバンが起こる前の状態であった「カオス」が結晶化して宇宙が出来上がったことと同様である様に見えます。そこで今回から、人間と宇宙の関わりについて少し考えてみたいと思います。

 まず、宇宙がどの様な姿をして、どれ位広大であるかを知ってもらうために、宇宙に関して現在解っている数値を紹介します。
(1) 宇宙の寿命は約150億年です。
(2) 地球が誕生して約46億年で、宇宙の寿命からみるとまだ1/3程度です。
(3) 宇宙の広さは150憶光年から180憶光年。ちなみに光の速さは約30万km/秒です。
(4) 銀河系の星の数は2,000億個です。
(5) 太陽系は銀河系の中を220km/秒の速度で2億年かけて一周します。
(6) 天の川を中心とする銀河系の他にも、マゼラン星雲とかアンドロメダ星雲といった宇宙空間が存在します。

 いずれも人間の感覚では信じがたい数字です。まさに神のみぞ知る世界です。昔から宇宙は神の世界に例えられてきたということも何となく納得できます。

 下表には宇宙科学の歴史をまとめてみました。それによれば、古典宇宙科学論、マクロ宇宙科学論、ミクロ宇宙科学論、宇宙モデル論の時代に区分することができます。

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【古典宇宙科学論】

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 天が地球を中心に動いているとする天動説は、紀元前4世紀のギリシャの哲学者アリストテレス(BC384~BC322:写真左)に始まり、アレクサンドリアで活躍したギリシャの学者プトレマイオス(AC83~AC168:写真右)によって確立されました。

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 反対に、地球が回っているとする地動説は、紀元前4世紀のギリシャの天文学者アリスタルコス(BC310~BC230)が唱え始めていましたが、当時はアリストテレスの天動説の方が、遥かに説得力がありました。そして、その後2,000年の長きに亘って天動説が信じられてきました。



【マクロ宇宙科学論】

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 15世紀に入りようやく天動説から地動説に立ち戻ります。ポーランドのコペルニクス(1473~1541年)が、地球上から惑星の動きを詳しく観察していると、時々、本来の運行方向とは逆の方向へと動き出し、暫くすると再び元の動きへ戻ると言う奇妙な現象が現れました。コペルニクスはこの現象を数学的にも無理なく説明することに成功しました。よくコペルニクス的発想の転換と言いますが、2,000年も続いた天が地球を中心に動いているという信仰を間違いであると覆したことに起因しています。

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 イタリアのガリレオ・ガリレイ(1564~1642年)は、コペルニクスの地動説を単なる数学上の仮説に留め置かず、それが現実の宇宙の姿であると認め、その立証に尽力しました。

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 さらに、英国のアイザック・ニュートン(1643~1727年)は、惑星の軌道がなぜ楕円になるのかを具体的に解明することを試み、「ニュートン力学の三法則」と「万有引力の法則」を提示しました。


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 ドイツのアルバート・アインシュタイン(1879~1955年)は、「この宇宙で唯一の基準となるのは、真空中の光の速度である」という「光速度不変の原理」を提唱しました。
 さらに、「光の速度が不変なのは、計測に誤りがあるからではなく、運動体の長さやその周辺で流れる時間の方が伸縮してしまうからだ」とする特殊相対性理論を公表しました。この奇妙な学説は、絶対時間、絶対空間というニュートン力学の常識では説明できない、不思議な現象の存在を予言したものでした。

【ミクロ宇宙科学論】

 通常の世界を支配する時間と空間の関係がほとんど意味を失い、これまでの物理学の法則が成り立たなくなってしまう超ミクロの原初宇宙の探索を進めるためには、そのような世界を扱うために特別に工夫された新しい物理学、「量子力学」がどうしても必要となりました。

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 量子論とは、無限に小さい世界において成り立つ特別な物理学の法則を探り、更にその法則を用いて素粒子の性質を確立する学問です。そして、この量子論の根底を支えたのがドイツの物理学者ヴェルツ・ハイゼンベルグ(1901~1976年)の唱えた有名な「不確定性原理」です。この一風変わった原理の登場は、物理学界に大革命をもたらします。


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 まず、ドイツのプランク(1858~1947年)が、「光は極めて周波数の高い電磁波であり、極めて高周波の電磁波は、不連続な粒子のように見える。ビッグバンの初期に、想像を絶する超高周波、高エネルギーの光が存在していたと考えてもおかしくない。」という理論を提唱しました。

 プランクの理論が、ハイゼンベルクの不確定性理論によって確かな裏付けを与えられ、更に次に述べるシュレディンガーの導いた微分方程式によって大きな発展を遂げます。

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 オーストリアのシュレディンガー(1892~1987年)は、微分方程式を用いて「一定の条件が完全に満たされても、ある出来事が起こるかどうかは、確率的にしか述べることができない。場合によっては起こらないこともある。逆に、予想外のことが起こることもある。」ことを提唱しました。量子論の考えに基づけば、ある日突然、絶対不可能と思われる事象が起こっても不思議なことではありません。少なくとも、その様なことが起こる可能性を合理的に否定することはできないのです。



【宇宙モデル論】

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 アインシュタインが相対性理論を発見した直後、英国のフリードマン(1888~1925年)が、初めて宇宙の非定常性を唱えました。



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 さらに、その教え子ガモフ(1904~1968年)が、1947年に宇宙の起源についての新説を発表しました。量子論の専門家で、核融合反応に詳しかったガモフは、誕生直後の宇宙は、超高温、超高密度のエネルギー素粒子の溶け合う濃密スープみたいなものだったに違いないと考えました。これに「ビッグバン理論」という呼称が用いられました。

 米国のガモフが描いた宇宙構成の構図は、宇宙が1個の宇宙原子的存在だった頃、現在の宇宙の全物質は異常な圧力で圧縮されてエネルギー化、超高温、超高密度な火の玉として微小な一点に凝縮していました。やがて、その超高エネルギーの火の玉は、巨大な核爆発にも似た大爆発を起こして猛烈な勢いで膨張し始め、膨張に伴う急激な温度降下のために、膨大なエネルギーが多様な宇宙構成物質へと転化していったというものです。

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 1916年、一般相対性理論の重力場の方程式を解いていたドイツの天文学者カール・シュバルツシルト(1873~1916)は、驚くべき解を発見し、アインシュタインに報告しました。

 宇宙のある部分には、異常に重い(密度の高い)物質からなる特異点が存在し、その周辺では四次元時空の曲率が無限大になって空間が瞬時に収縮し、強力このうえない重力場が形成されるというのです。この異常重力の世界では、30万km/秒の高速度で空間を走る光の量子さえも、その中心に引き込まれてしまうほどです。暗黒の無限地獄を思わせるこの特異点は、イメージそのままに「ブラックホール」と命名されました。ブラックホールとは、四次元時空のゆがみの中に現れる「四次元空間から見たときの三次元の深い穴」なのです。

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 米国のオッペンハイマー(1904~1967年)は、このブラックホールについて、「巨大な星が収縮すると中性子のかたまりになり、ついには巨大質量をもつ一点にまで収縮してしまうことを論理的に証明したのです。」これを契機にシュバルツシルトの理論は「ブラックホール問題」という新たな名を冠せられ、脚光を浴びることになりました。


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 英国のホーキング(1942~現在)は、宇宙の特異点、ブラックホールの解明に取り組みました。ホーキングは、1965から1970年にかけて、「宇宙の特異点定理」の研究を進め、一般相対性理論に従う限り、宇宙の始まりもまた、一種の特異点でならないことを証明しました。

 特異点とは、時間と空間が消滅し、すべての物理学の法則が成り立たなくなってしまう宇宙論の特殊な領域のことを意味しています。ホーキングは、物理学の法則がすべて破綻しているこのような特異点では、どのようなことも起こりうるし、どのようなものでも生まれ出る可能性があると主張しました。そして、ビッグバン宇宙の原点も、そんな特異点であったはずだと考えたのでした。

 今回は、宇宙について古代から近代そして現代に至るまでの間に、宇宙科学論はどの様な変遷を遂げて来たのかを眺めてみました。さて、宇宙は神が住まう国という考えを皆さんは受け入れられますか。



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