七十歳代黄金期への誘い(その11)…財テクゲームとしての株式投資

 今回から2回に分けて株式投資や金先物投資についての自分自身の経験談を紹介します。結論から言うと、株式投資で稼いだ金を金先物投資ですべて無くしてしまったので、成功談というよりは失敗談ということかも知れません。その後は株や商品先物といったリスクの高い投資からは完全に足を洗い、不動産投資へと向かいました。

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 日本では、1990年にバブル崩壊が起こりますが、そのバブル崩壊直前に相当する時期で、株式は高騰していました。空前の好景気に沸く中で、「財テク」と呼ばれる投資ブームが熱を帯びていました。確か、当時の財テクは、自分が保有する資金を3つに配分し、それぞれを「株式」「預貯金」「不動産」に分散投資して儲けなさいというものでした。

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 私自身も、1985年(昭60)~1990年(平2)にかけて、株式投資に手を染め、つづいて金先物投資へとエスカレートしていきます。当時、大手鉄鋼メーカーに勤め、1982年、34歳で係長に昇格したばかりで、誰もが少しでも裕福な暮らしを夢見ていました。


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 株式投資を始めたきっかけは、会社の持株制度を利用して月々積み立てていた自社の株式が1,000株に達したのを機にこれを売り払ったところ結構小遣い稼ぎができたことです。再度、自社の株3,000株の買い増しを行ないました。当時、一株350~400円の値を付けていましたので、100万円近くの投資となりました。

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 当時、株式市場は、右肩上がりの状況で、安値で仕入れて高値で売り抜けるということが、現物取引の鉄則でした。従って、株式投資の基本的スタンスは、色々な会社を探しに行って、大化けしそうな会社を探し当てることでした。そこでは、自分で目ぼしい銘柄の株価を新聞で拾い、自分自身で移動平均線(週足)を描き、この移動平均線を眺めながら、どのタイミングで買い、どのタイミングで売り抜けるかを一生懸命模索したものです。また、大化けしそうな会社を探すのに、四季報という業界本を購入し、株の実力評価チェックシートを作成し、収益力、資産内容、成長力等を調べました。

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 現在の株取引はインターネットでの少額取引も可能になり、奥さん連中や学生さん達が株取引きを行う様になりました。私が、やっていた当時は、証券会社と担当者を決め、基本的に1,000株単位での取引きを電話で売買の指示を出すやり方でした。当時の記録を見ると、大同特殊鋼、三井物産、日本電気、リコー、池貝鉄工、モリ工業、三井不動産、NTT、西部鉄道、資生堂、京セラ、日立、西部鉄道の株を購入していました。

 NTTについては、1987年(昭和62年)2月に政府保有株が1株119万7千円で売り出され、個人投資家が群がりました。直後の4月に株価は最高値の318万円に駆け上がりました。個人株主数はバブル末期に160万人を超え、個人投資家の裾野拡大に一役買いました。

 私が株式投資に投入した資金は、最大で500万円程度だったと思います。財テクゲームの1つとしては面白いものでした。しかし、誰でも経験しますが、だんだん詰まらなくなります。なぜか、それは利益は出ますが、時間を掛けて調査して分析した割には、得られる利益は大した額ではないからです。財テクで儲けなさいという話が雑誌等で紹介されていましたか、あまりにも差がありすぎて、「自分は何をやっているのだろう」と思い始めたからです。

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 そこで、考えることは、もっとも大きな金額を運用できないかということでした。信用取引という方法を使えば3倍のレバレッジでの取引を可能です。私の場合、それをやろうかなと思っていた時に、レバレッジ30倍の金先物取引に手を出してしまいました。これについては、次回詳細に説明しますが、まずはレバレッジ3倍の信用取引の仕組みを以下に紹介します。

 株式の信用取引とは、証券会社から資金や株式を借りて売買することです。一般には証券会社に預けてある株式や現金などを委託保証金という形で担保とし、その3倍までの売買が可能となります。

 例えば、100万円の委託保証金なら300万円までの取引が行なえます。信用取引の場合には、顧客は信用買いや、信用売り(空売り)などの方法で売買を行ないます。

 信用買いの場合は、株価の上昇分が、空売りの場合は売値より安く買い戻した場合の差益が儲けとなります。手持ちの資金以上に大きな取引ができ、成功すればリターンは大きいのですが、その分、失敗した時のリスクも大きくなります。

 信用取引の場合には、信用買いの際に借りたお金や空売りの際に借りた株式を6ケ月以内に証券会社に返すという条件が加わります。これが信用取引のリスキーなところです。現物売買の場合には、予測が外れて株価が下がっても再度上昇して来るまで、1年でも2年でも塩漬けしておくことができますが、信用取引では6ケ月以内に反対売買を行わねばなりません。

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 信用取引のリスクは以下の様なものです。

・ 3,000万円の株式を信用買いします。3倍のレバレッジですので、委託保証金は1,000万円となります。
・ 株価が3,000万円から2,700万円下落しました。購入した株のポジション3,000万円の1割すなわち300万円の下落が追証発生条件となりますので、追証900万円を直に差し入れなくてはなりません。(2,700万円÷3倍=900万円)
・ 従って、対象銘柄の価格が下がると、1割下がるごとにどんどん追い証が膨らんできます。
・ 追証が払えなくて手仕舞したとします。
 (1) 当初自己資金 1,000万円 
 (2) 信用取引のレバレッジ 3倍
 (3) 購入株式 3,000万円
 (4) 株式の損失3,000万円-2,700万円=300万円
 (5) 委託証拠金 1,000万円
 (6) 手数料+税金等 50万円
 (7) 合計損失 300万+50万円=350万円

 自己資金1,000万円に対し、数ケ月で350万円の損失ですから、痛手は大きいものとなります。

 株式投資の取引きで得た私なりの経験則ですが、次の3つの領域に分けて自分のスタンスを固める必要がありそうです。
 (1) 個人の趣味範囲でのゲーム感覚での株式投資…自分で資料集めをし、予測する。但し、大きな利益をこの段階で求めるのは止めたいです。
 (2) 自分の生活をも掛けたセミプロとしての株式投資…信用取引によりリスクは高くても大きな儲けを狙う。
 (3) 機関投資家レベルでの株式取引…証券取引所に上場されているインデックスタイプの投資信託です。インデックスとは、日経平均株価やTOPIXのように、市場全体の値動きの方向性を示すものです。

 株式投資はやるなら飽くまでゲーム感覚でやるというのが、私の現在の考えです。しかし、日銀の出口戦略といった国のレベルのことを調べていると、日常、機関投資家の株式市場での動向をウオッチすることも必要と考えています。皆さんどう思われますか。



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