投資家ソロスの足跡(その1)-相場師ジョージ・ソロスの登場

 新シリーズ七十歳代黄金期への誘い(その3)~(その7)では、国が発行する国債が一体どの様な働きを持ち、その国債を運用するにはどの様にすれば良いのかを追いかけてきました。

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 ここからは、少し歴史を遡って1992年9月16日に「ブラック・ウェンズディ」が起こった際に、「イングランド銀行を破綻させた男」と呼ばれる人物、ジョージ・ソロスを登場させます。彼を登場させる理由ですが、ソロスのヘッジファンドは、「グローバル・マクロ」と呼ばれ、世界視野でグローバルに展開される大掛かりなタイプでした。各国政府の政策と経済の状況との間に生じた破綻に狙いをつけ、通貨や国際の利率のずれを標的にするものでした。彼の戦略を紹介したいがために、これまで色々と国債の勉強をしてきたようなものです。

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 ジョージ・ソロスとヘッジ・ファンドは切っても切れない関係にあります。ヘッジファンドは、匿名性が最大の魅力で、個々の金持ちだけでなく、企業や組織の年金機構や大学基金なども、ヘッジファンドに運用を任せています。


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 ヘッジファンドで運用していることを世間に知られたくない人々の間で人気がでました。ソロスの顧客には、モトローラ、ソリューションズ、モンサント、シティグループ、ウェルス・ファーゴなどの会社が、名を連ねています。しかし、大半は個人の顧客で、せいぜい数百名でした。ヨーロッパ人富豪が多く、なかにはスイス銀行の口座名しか知らせてこないほど匿名性にこだわる者もいました。

 ヘッジ・ファンドの原型は、今から70年程前の1949年にアルフレッド・W・ジョーンズが開発したと言われています。その後、1966年から3年以内に130のヘッジファンドが立ち上がり、ソロスは1969年にジム・ロジャースと一緒にクォンタム・ファンドを起ち上げています。

 以下、ジョージ・ソロスの経歴を年表に従って紹介します。なお、越智道雄著「ジョージ・ソロス伝」を参考にしています。

 ソロスは1930年にハンガリーのブタペストで生まれました。両親はユダヤ系の血を持っていましたが、敬虔なユダヤ教徒ではありませんでした。そのような事情もあって、ソロス14歳の時、ナチス支配下のブタペストにあって、弁護士である父親の計略でキリスト教徒に化け、IDを偽装しました。

 19歳で英国に渡り、金融の世界に入りました。26歳の時にニューヨークのウォール街へ進出し、1969年39歳の時に、自らのヘッジ・ファンド(クォンタムファンド)を設立しています。ソロスの設立したクォンタム・ファンド(QF)は、タックス・ヘイブンのキュラソー島とケイマン諸島にあり、マネー・ロンダリングを行なっていた可能性もありそうです。なお当時、ロスチャイルド一族も、ヨーロッパ富豪ともども、600万ドル(6億円)ほどクォンタム・ファンドに投資していたと言われています。

 その後、1973年の第4次中東戦争で大金を得ました。更に、1985年のプラザ合意、1992年のブラック・ウェンズディ、1997年のアジア危機と、世界視野のグローバル・マクロを駆使して活躍を続けて来ました。

 しかし、2008年のリーマン・ショック以降は、オバマ政権が「ドッド=フランク法」を成立させ、ヘッジファンドに対して顧客の身元を報告することを義務づけました。このDF法では1億5,000万ドル以上(150億円以上)だと届け出ないといけないことになったのです。これが理由でヘッジファンドの魅力が薄れてしまったこともあり、2011年81歳でソロスはこの世界から引退することを決断しました。

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 2011年7月に、ジョージ・ソロスは顧客からの預り金を返還しました。以降は、ソロス・ファンド・マネジメント(SFM)を運用し、「ソロス家の資産管理を運用だけに専念する」と発表しました。返還する預り金は、10億ドル弱(1,000億円)、ソロスの手持ちの総資産は250億ドル(2兆5,000億円)もありました。

 相場の世界から、市場原理主義を超えた「オープン・ソサイティ財団(OSI)」に軸足を移したいソロスは、2000年には「顧客を減らし、それまでのように年間30.5%もの利益率を上げる気はない」ことを公表していました。

 ソロスはメディアを支配し、戦争を誘発させて荒稼ぎし、各国政府を転覆させ、世界征服を企む主役とされ、轟々たる非難を浴びせられてきました。19世紀以来のヒトラー時代の「ユダヤの陰謀の黒幕」は、ロスチャイルド一族でした。その「ユダヤ国際資本」の陰謀の黒幕として、現代のソロスが登場したと思われています。

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 少年期、偽IDでドイツ・ナチスから逃れたユダヤ系ソロスにとって、相場で金を儲けることが人生のゴールとなっています。この生き方、皆さんどう思われますか。



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