コーヒーブレイク…講師を引き受ける際の心構え八か条

 今回はちょっと一服してシリーズから離れたテーマ「講師を引き受ける際の心構え八か条」について書いてみたいと思います。

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 吉本興業の「伝説の女子マネージャー」として知られる大谷由里子氏が執筆した「講師を頼まれたら読む本」に非常に参考になるものがありました。私自身はプロの講師ではありませんが、結構セミナー等で講師をする機会があります。一方で、多くの講演を拝聴する機会も多く、聞いていてどんどん話に引き込まれる講演、途中で寝てしまう講演もあり、一体どこにその差があるのかを知りたいと思っていました。

 今回、大谷氏の本を読んで、成るほどと感じることが幾つかありました。そこで、他の本等で見付けた参考になるコメントも合せて、講師を引き受ける際の心構え八か条としてまとめてみました。

第一条

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 講師が一つ目に押さえるべきポイントは、「何をメッセージとして伝えたいのか」をはっきりさせることです。自分がメッセージとして伝えたいことがはっきりすると、講演の価値と目的もはっきりします。「この講師、結局何が言いたかったのだろう。」と思われるのがどうも最悪のようです。


第二条

 講師が二つ目に押さえるべきポイントは、まず結論から、それから理由を説明ということです。聴き手を安心させるには「まず結論から」が鉄則です。具体的な例として、「この金融商品は、間違うとこれだけ損をしますよ。なぜなら ---- 」と結論から始めるのです。

第三条

 講師が三つ目に押さえるべきポイントは、聴取者が知らないことを知ってもらい、行動すべききっかけを提供し、たくさんの「気づき」を促すことです。高価で立派な話をしようと気負う必要はありません。自分の経験を基に、分り易くて、ちょっと役に立ちそうな話が講師に求められているのです。

第四条

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 講師の四つ目に押さえるべきポイントは、「5分ネタをたくさん準備する」ことと、それぞれのネタに「起承転結」を盛り込むことです。具体的には、10分のネタを5~6枚のパワーポイントにまとめます。そして、それぞれのネタに「起承転結」を盛り込むのです。

 この起承転結については、筆者もこれまで色々な場面で活用してきました。例えば、「起承転結」は企画書の作成においても重要な概念です。

 企画書では次の様になります。
・「起」…現在の社会環境や世の中の動きはこうだ、という企画の背景となることを述べる。
・「承」…そこで、現在の問題点や課題はこうである、という問題提起をする。
・「転」…問題を受けて、それではどうしたらよいかという解決方法を提案する。
・「結」…その解決策による効果や、だからこの企画を進めるべきだという結論を導き出す。

第五条

 講師の五つ目に押さえるべきポイントは、説得力に欠ける時は、「人の言葉を借りたり」「クイズ形式で問いかけること」で、場を保つことができます。「先日の○○新聞に△△さんが書かれていたのですが」とか、「私は□□と思ったのですが」とか、「ちょうどこんな話を聞きました」とか、果たして自分が考えたことは正しいのかなと感じたときに上手く繋ぎます。「たまたま、みなさんもご存知の△△の話を聞きに行ったところ、まさに、○○の話が出て来たのです。そして、私も気づかされました。」というのも有りです。

第六条

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 講師の六つ目に押さえるべきポイントは、「アイスブレイク」を上手く使い、一瞬にして場の雰囲気を変えることです。「両隣りの人と握手するよう求める」とか「隣同士で自己紹介をしてもらう」とか「目が合った人に声を掛ける」といったことが考えられます。



第七条

 講師の七つ目に押さえるべきポイントは、「締め」の話を作っておくことです。例えば、「今日はいろんな話をさせて頂きましたが、最後にこれだけは言わせて下さい。今日より明日、明日より明後日と成長するきっかけを作って欲しいのです。」と締めて下さい。

第八条

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 講師の八つ目に押さえるべきポイントは、笑いを取るツボを掴むことです。笑いを取るツボとしては、次の10の方法があります。

1. おおげさな言い回し
2. 勘違い…ボケ
3. たとえ話?
4. 笑いをとりやすいネタや話題を準備する
5. 一言で笑いを取る
6. ジェスチャーで話の臨場感を出して相手を笑わせる
7. 自慢話に「自虐」を添えれば笑いが取れる
8. 共感+「でも・・・・じゃないですか」で話がどこまでも続く…ツッコミ
9. 自己紹介のコツは「相手に見えている自分」を上手く使うこと
10. 誰にでもできる2つの「オチ」の付け方と作り方

1. おおげさな言い回し

 「そんな例えは大げさじゃない?」と思わせて笑わせるツッコミに近いテクニックです。

「最近嫁さん家計が厳しいからって小遣いカットするんだよ」には
「財政が夕張状態ですね」の一言。

「A社との契約? B社の見積り次第だね。A社だってうち以外にZ社と契約しようとしてんだから。」には、
「ダブル不倫ですね」と一言。

2. 勘違い…ボケ

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 馬鹿な自分を演じて、相手は「まったくしょうがないなぁ」と思わせて、ツッコミを入れてもらいます。

「キミ、これB4でコピーしてくれないかな」には
「先輩、ここの地下は2階までしかありませんよ」

「部長、わたし最近買ったデジカメがもう気に入っちゃって。土日なんて一日中、デジカメと遊んでますよ」には
「そうなのかね。ところで、そのデジカメはエサは何を食べるのかね?」

彼女の「あの棚の上の食器取ってくれない?」には
「やっぱし俺の身体が目当てだったのか・・・」とかいう様に勘違いをします。

3. たとえ話?

 見たもの聞いたものを「何かに例える」と結構笑いが取れます。しかもそれが馬鹿げていればいるほど効果的です。

「俺って外見草食系に見えるでしょ? でも中身は肉食系なんだよね」には
「ロールキャベツ系ってこと?」

はげた上司が、怒って真っ赤になっているのを見たら
「タコが茹で上がってるのかと思ったら、部長だったよ」とか

4. 笑いをとりやすいネタと話題とは
 
 笑いを取ることは、相手の理解と共感を得ることがスタートです。

① 情けない話 
自慢話はまったく受けません。つまり逆を言えば自分の情けない話は笑いを取りやすいです。人は誰しも恥ずかしい思いをしたことがありますので、共感を得やすい話題になります。同じように自分が抱かえているコンプレックスを話すのも有効です。

② 例え話
例えることで、相手の頭の中に映像が浮かびます。その例えが鮮明に画像になるようにすればするほど、相手は共感し、笑ってくれます。笑いを狙わなくても相手の頭の中で面白い画像が浮かべは勝手に笑ってくれます。

5. 一言で笑いを取る

 ツッコミはおかしい話、ボケに対して行うものです。「なんでやねん!」とか「それおかしいでしょ!」が代表的な」をツッコミです。一言でもっと笑いを取りたいなら「例えツッコミ」を是非会話の中に取り入れてみてください。

 誰かの言葉に対して、「○○かよ!」とか「○○みたい!」と○○に例えを入れるだけです。コツは例えるものが皆の頭に浮かびやすい、共感しやすいものを入れることです。

おせっかいされた ⇒ 「俺の母ちゃんかよ」(家族)
臭いものを嗅いだ ⇒ 「牛乳拭いた雑巾の匂いするわ」(学校)
合コン解散するとき ⇒ 「家に帰るまでが合コンだよ」(遠足の思い出)

6. ジェスチャーで話の臨場感を出して相手を笑わせる

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 エレベータに乗るシーンは腕を下から上に動かしたり、人物が二人登場する場合は位置関係をジェスチャーで表現したりしています。そうすると、聞き手はその場にいるように話に引き込まれます。

両手を広げて「こんなに大きな・・・」とか、電話をかける、自転車に乗る、犬が歩いている、などそれぞれのシーンでなんとなくフリをすればいいんです。やればやるだけ聞き手を引き込めるので、笑いも一気に取りやすくなります。

7. 自慢話に「自虐」を添えれば笑いが取れる

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 自慢話は聞き手を退屈させます。なので、話さないに越したことはないのですが、話しても良い場合があります。それは自慢話から最後自虐ネタに落とせる場合です。

例えば、高層タワーマンションに住んでいる場合、
A「景色が良い50階建てのタワーマンションに住んでます」
B「良いところに住んでますね(自慢話か・・・)
ここで「まあね」って言って終わってしまうと、自慢話で終わってしまいます。なので、ここで自虐ネタにします。
A「とはいっても2階なんですけどね」

タワーマンションで高層階を思い浮かべたところで、実際は2階。そのギャップで笑いが取れます。こうすれば嫌味になりません。

8. 共感+「でも・・・・じゃないですか」で話がどこまでも続く…ツッコミ

 特に先輩や上司に有効なテクニックです。「でも○○じゃないですか」と返すだけです。

上司が「もう年だから、仕事がしんどいんだよね。」と言ったとします。
ここで、「そんなことないですよ」では物足りないですね。
「でも、夜は元気ですよね」と返すと笑いが取れます。

仕事の話を「夜」にずらしているのがポイントです。

上司「ボクは山田部長に嫌われてるんだよ」
部下「でも、受付の田中さんは課長のことカッコイイって言ってましたよ」

上司「最近仕事がうまくいかなくてね」
部下「でも、課長、奥さんきれいじゃないですか」
と少しずらして返すと笑いが取れます。

9. 自己紹介のコツは「相手に見えている自分」を上手く使うこと

 あなたのことを知らない人たちは、まず見た目で何かしらの感想を持ちます。落ち着いているな、ふけてるな、太っているな、真面目そうだな、背が高いな・・・などなど。その印象を自己紹介であなたが口に出せば、聞き手は「そうそう、思ってた!」となり
笑いが起こります。

「表情が外に出ないので、落ち着いて見られがちですが、今緊張で足が震えています。」
「老けて見えるかもしれませんが、大卒の新規採用です。一応本当に22歳です」
「真面目そうに見られたくて、今日は伊達メガネをしてきました。」
「背が高いせいでよく頭をぶつけるので、クッション用にパーマをかけてます。」

他にも、見た目とのギャップを話すのも効果的です。
「細く見えますが、趣味は実は登山です。」
「派手に見えるのは顔だけです。趣味は切手集めです。」
意外な事実が分かると、聞き手にしっかり覚えてもらうことができます。

10. 誰にでもできる2つの「オチ」の付け方と作り方

 落ちの付け方と作り方には、2つの基本パターンがあります。
① 自分をみっともなく見せる。
② 体験から学んだことを伝える。

 自分をみっともなく見せるためには、
「電車が遅れまして、遅刻をしないように全力ダッシュしました。そしたら足がつっちゃって・・・もうオッサンですよ」

 体験から学んだことを伝えるなら
「電車が遅れまして、遅刻しないように全力ダッシュしました。意外とまだ走れる自分に勇気をもらいました。」

自分をおっさんと下げたり、学んだことを伝えたりするだけで、クスッと一笑い起きる可能性もありますし、なによりも聞き手も
「そういえば、私も似たようなことがあって・・・」と話が広げやすくなります。

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 以上講師を引き受ける際の心構えについて、色々な人の意見を取り入れ、挙げてみました。ところで、私は毎年、ジャーナリストである桜井よし子さんの講演を聞きに行くのを楽しみにしています。初めから終わりまで、一秒たりとも聞き逃すまいとメモも一生懸命取ります。眠っている暇なんかありません。これぐらい人を引き付ける魅力とは一体何なんでしょうか。皆さんはどう思われますか。



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