中小企業経営と向き合う(その12)…確定申告にあたっての心得

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 私が塾経営をするために有限会社を設立したのは、1989年(平成元年)でした。社員が私と妻の2名であったこと、出資者も私と妻の2名であったこと、更には、決算書の公告義務もないことから株式会社ではなく有限会社を選択しました。決算月は11月で、12月一杯までは決算の準備で大忙しとなります。

 一方、個人的には給与所得、不動産所得、雑所得を得ているので、会社の決算が終ってやれやれと思う間もなく、3月の画定申告の準備やらなければなりません。特に、有限会社は家族的な会社形態でもありましたので、会社の経費と個人の経費をどう切り分けるかでも色々と頭を悩ませます。毎年この様な感じで30年が過ぎてしまいました。

 そこで今回は、確定申告に当っての心得として、最低限知っておかなければならないことを整理してみたいと思います。
 
 所得金額の導出方法としては、基本的には収入金額から必要経費を引いた額が所得金額となりますが、図に示す様に所得の種類によって若干の違いがあります。

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 給与所得には、必要経費の代わりに給与所得控除が認められています。給与所得控除は、勤務に伴う様々な経費に相当する額を概算的に控除するもので、収入金額に応じて控除率は定められています。給与所得控除以外にも、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除があります。更に、最後に基礎控除として一律38万円の控除が認められています。

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 給与所得は源泉徴収によります。すなわち、給与所得に対する所得税については、源泉徴収制度が採用されています。すなわち、給料などが支払われる際、その支払い額に応じた所得税が天引きされ、税務当局に納付されます。これは見込みで支払われるため、当然正しい税額とは違ってきます。そこで、その年の最後の給料などが支払われる際、その年中の給与の総額に対する正しい年収額と、天引きされた所得税の額を対比して、過不足額の精算が行われます。これが年末調整です。

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 不動産所得とは、土地や建物などの不動産を他人に貸して地代や家賃、権利金、礼金などを受け取った場合の所得のことです。建物に広告看板を取り付けさせて、その謝金を受けている場合も、不動産所得となります。船舶や航空機の貸付による所得も不動産所得として扱われます。但し、不動産を使って、事業に該当する行為をした時は、その程度によって事業所得になったり雑所得になったりします。例えば、貸間や下宿だけなら不動産所得ですが、賄いつきになると事業所得になります。地代・家賃などの不動産収入から必要経費を引いたものが不動産所得となります。これを他の所得と総合し、各種所得控除を引いて税率を適用すると、所得税が出て来ます。必要経費になるのは、減価償却費、修繕費、管理費、固定資産税などの公租公課、火災保険料、不動産に関連して借入金の利息などです。

パートの収入で注意すること

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 最近は、専業主婦の比率が8割前後に達していると言われますが、専業主婦のなかでは、パート勤務が大きな比重を占めているようです。パート収入の税金については、次の2つのことに注意しておく必要があります。まず、パート収入には、どのくらいから所得税や住民税がかかるかということです。パート収入は、普通、給与所得となります。従って、年収から給与所得控除額を引いた金額が、所得税は基礎控除額、住民税は非課税限度額を越えていなければ、税金はかかりません。

 2019年度現在、給与所得控除額は、年収180万円以下の場合、一律65万円であり、また、基礎控除額は所得税で38万円、住民税で34万円(非課税限度額は34万円)ですから、主婦のパート収入が年額103万円以下なら所得税がかかりませんし、99万円以下なら所得税・住民税ともかかりません。

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 もう1つは、夫の税金との関係です。妻の収入が一定額以上だと、夫の所得から配偶者控除や配偶者特別控除が引けなくなります。配偶者特別控除には、配偶者控除の他に引ける特別控除です。急激に0に持って行くのを避けるために段階的に減らす方式です。

 これらの控除ができる条件ですが、配偶者控除については、妻のパート年収が150万円以下なら、所得税、住民税とも、夫の所得から差し引くことができます。その金額は一律38万円です。

 夫が配偶者控除を受ける場合に、妻のパート収入が201万円以上になると、夫の給与所得から配偶者特別控除が引けなくなり、さらに150万円を超えると、配偶者控除も引けなくなります。また、夫の給与から扶養家族手当がなくなると、妻は健康保険に単独で加入しなくてはならなくなります。パート収入の増加には、こうしたマイナス面もあるわけです。

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 給与、不動産、雑収入と複数の所得がある場合の確定申告は、やはり最後は税理士にお願いするのが良いと思いますが、皆さんどうしていますか。



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