中小企業診断士の経験則(その3)…簡易企業診断の極意

 企業会計の基本は
1) 貸借対照表
2) 損益計算表
3) キャッシフロー計算書
の3つだと言われています。

1)の貸借対照表は、営業年度が終わった時点で、その瞬間にどれだけの財産(資産)・借金(負債)・元手(資本)があるかを表します。
2)の損益計算書は、その営業年度内にどれだけの売上を上げ、いくらの経費を使って、どれだけの利益を上げたかを表します。
3)のキャッシュフロー計算書は、その営業年度内にどれだけのキャッシュを回し、またキャッシュを調達して手元にいくら残っているという資金の流れと残を表します。

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 本来ならば、3期のB/S,P/Lを並べて詳細に検討すべきですが、取りあえずは、その会社が儲けている会社なのかどうかを漠然と判断しなければならない場合が往々にしてあります。そこで、すぐに判断できる便利な方法がありますので、これを説明します。これは1期のB/SとP/Lによる簡易会社診断法であって非常に便利です。

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Step1 当期利益を見て、赤字会社か黒字会社かの判断をします。
    事例会社は22百万の当期利益を確保していました。

Step2. 黒字であれば収益力のある会社かどうかを判断します。
    ここでは総資本対経常利益率をここでは総資本対経常利益率を計算します。
    総資本対経常利益率(%)=経常利益/負債・資本合計×100=1.2%
    事例会社は、経常利益13.7百万円に対し総資本は1,139百万円で利益率は1.2%
    です。平均6%と言われているので、収益力は低いと言わざるをえないでしょう。

Step3. 収益力が低いのであれば、会社の財務安全性を次に判断します。
    ここでは、自己資本比率を計算します。
    自己資本比率(%)=資本合計/負債・資本合計×100=28.3%
    事例会社は、資本合計322百万に対し負債+資本の総資本が1,139百万円で、     28.3%です。平均37%と言われていますので、収益力は平均より落ちます。

Step4. 財務安全性が低い場合、借金の内容を判断します。
    ここでは、固定長期適合率=固定資産/(自己資本+固定負債)で計算します。
    固定長期適合率(%)=固定資産/(自己資本+固定負債)×100=63.4%
    固定資産539百万円、自己資本322百万円、固定負債528百万円ですので、固定
    長期適合率は63.4%となり、平均の75%より下回っております。100%以上の場
    合が短期借入金に頼ることを意味しまずいと言われますので、事例会社は財務安全
    性については問題ないと言えます。

Step5. 過剰借金状態となっている場合、借金の内容を判断します。
    ここでは、流動比率と当座比率を用います。
    流動比率(%)=流動資産/流動負債×100=208%
    当座比率(%)=(現金+預金+受取手形+売掛金)/流動負債×100=110%
    流動比率は流動資産を流動負債で割った値で、2対1の原則とも言われ、200%
    以上あれば支払能力の高い会社と言えます。また当座比率は現金、預金、手形、
    売掛を流動負債で割ったもので、100%以上であれば支払能力に全く問題ありま
    せん。事例企業では、流動比率は208%、当座比率は110%と借入状態は健全で
    す。

Step6. オフバランス取引による判断
    ここでは手形割引高の多少で判断します。当該企業は手形割引を行なって2億ほ
    ど用立てています。ややお金に困っているのかもしれません。

 ところで、貸借対照表や損益計算書は、発生主義で作成されているため、ここに記された損益は、直接「おカネ」とは結びついていません。発生主義会計では、商品を販売すれば、代金の入金がなくとも売上という収入が計上されましたし、原材料を仕入れれば、代金を支払ってくれなくても、費用という支出が計上されます。ですから、損益と資金残高の増減は一致せず、損益計算書で利益を上げていても、「おカネ」が足りなかったり、その逆に利益は少しでも「おカネ」に結構ゆとりがあるような場合があります。

 損益計算書の利益は、必ずしもキャッシュの裏付けがあるわけではなく、ここに俗に言う「勘定合って銭足らず」という状況が発生します。会社の業績は上手く伸びているのにお金の出し入れで失敗して会社を潰してしまわないように気を付けたいものですが、皆さんどう思われますか



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