中小企業診断士の経験則(その7)…中小企業の事業計画と企画書

 私が今回紹介する本に出合ったのは、本書は1995年に出版されているので、今から25年程前で私が45歳頃の時です。本書を読んだ瞬間に「これだ」と思いました。まさに、ワンシート企画書が自分マッチすると感じたのです。それ以降、事ある毎にこのワンシート企画書を作り続けてきました。

企画はシステム

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 目的や目標を実現する手段が企画であり、実現性確保のために、1つ1つの作業をシステムとして組み立てていくことが求められます。システム思考といえば、漠然とごちゃごちゃ考えている現状を、問題点や可能性のある分野等を観察、整理し、頭のなかで系統だてて組み立てていくことだと言われています。ですから、システム化といえば、前例や経験で行っている作業や行動を、一定の作業の流れに沿って体系化するということになります。

書き方のポイント

 書き方のポイントは、わかりやすい言葉で簡潔にということになりますが、その際、子供の頃、国語の時間に習った作文のコツ「起承転結」だけは念頭に置いておくことが重要です。実際に企画書を書く際には、以下のようなことを踏まえれば良いでしょう。

・ 起…現在の社会環境や世の中の動きはこうだ、という企画の背景となること
・ 承…そこで、現在の問題点や課題はこうである、という問題提起
・ 転…問題を受けて、それではどうしたらよいかという解決方法
・ 結…その解決策による効果や、だからこの企画を進めるべきだという結論

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企画書の基本構成

 新規事業の企画書は、表紙(まえがき・目次)、コンセプトマップ、基本システム、サブシステム、フォーメイション、ツール、経営目標、スケジュール、予算(収支)、事業組織、事業イメージ、仮説立案、事例、兆候で構成されます。

 私自身は、本企画塾が提唱しているワンシート企画書(企画の全容を1枚にわかりやすくまとめたもの)を重宝しています。下図にワンシート企画書の基本構成を簡単に説明します。

企画書はだれにでも描ける

 企画書は自分のアイデアを実現するための手段ですから、お手本通りでなければならないなどというものではありません。また、最初からうまく描こうとか、完璧なものを描いてやろうとか、絶対に1度で通してみせるぞ、などと肩に力が入ると、なかなか描けないものです。

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 もともと企画が必要とされる状況というのは、絡まり合った糸のようになっていることが多いのです。これまでに誰も解決できなかったから、今、企画をするチャンスが巡って来ているのです。そんな状況のなかで、ビギナーにはすんなりと手本のような企画書が描けるはずはありません。常日頃から企画書を何枚も作って慣れておく必要がありそうです。

 まずはとにかく描いてみることです。ある程度、状況を分解し、アイデアを分解し、それらを整理して、因果関係を描いてみます。すると、うまく描ききれない部分が出て来るはずです。そこがはっきりすればシメタもの。分解がうまくできていないのか、情報が足りないのか、現実とアイデアとの間にギャップがありすぎるのか、なんとなく描けない理由が見えてきます。理由を自分なりに推測できたら、その答えを出してくれそうな人に相談すればいいのです。特に専門的なことや自分の苦手分野はその道の人に教えてもらうのが得策です。実のところ、企画立案者はそうして自分の企画の賛同者やスポンサーを上手に見付けているのです。どんどん意見を聞いて、自分だけでは集められないような情報をどんどん手に入れて下さい。上手くやれば、これでネゴシエーション(根回し)完了です。自分の企画の実現が日の目を見るのも近くなるはずです。

 「机上の空論」と企画をつっぱねた相手が、企画書の足りないところを一番教えてくれる人かもしれません。それくらいの柔軟さとしたたかさ、そして人の意見を素直に聞ける姿勢があれば、企画書は誰にでも描けるものなのです。

 具体的なワンシート企画書の例を示します。これは操業を開始した小水力発電を活用して、環境教育を展開するという事業です。

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 本書と出会ったのはかれこれ35年ほど前になります。それ以来、ことあるごとにこのワンシート企画書を作成してきました。1枚であることで、言いたいことをいかに簡潔に表現するか、それの訓練にもなりました。ワンシート企画書は私の得意技といっても過言ではありません。これはこれからも大切にして行きたいと考えていますが、皆さんどう思われますか。



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