中小企業診断士の経験則(その10)…有限責任の意味を理解する

 有限責任と無限責任の違いは責任範囲の違いのことです。責任範囲は、会社が倒産してしまった時、出資者が債権者に対してどこまで責任を負うかを定めたものです。

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 有限責任の定義は、会社が倒産した際、会社に債務があった場合は、出資した範囲内を上限とし、その責任を負うと言うことになります。つまり、資本金などの名目で会社設立時に出したお金は一切返ってきません。しかし、出資した出資額を上限としているため、それ以上の支払い義務も発生しません。

 無限責任の定義は、会社が倒産した際、会社に負債があった場合は、その負債総額を自らの財産を用いてでも債権者に返済しなければなりません。会社が返しきれなかった借金を、個人として返さなければならないと言うことです。よって、最悪の場合は自己破産に追い込まれる可能性もあります。会社設立者からすると、責任の範囲が狭い方が望ましいはずですので、無限責任より有限責任が望ましいと言えます。

 有限責任となっている社員を「有限責任社員」、無限責任となっている社員を「無限責任社員」といいます。なお、ここで「社員」とは会社に出資している人のことを指します。従業員という意味ではありません。

 以下に有限責任者となる場合、無限責任者となる場合を挙げますので、自分がどちらにあるかをしっかり確認しておくことにします。

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 有限責任となる場合は、株式会社と合同会社で、出資者全員が有限責任者です。

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 合資会社には、有限責任社員と無限責任者社員の両者がいます。自分がどちらにあたるかは定義を確認する必要があります。合名会社は出資者全員が無限責任者です。

 合資会社は、一般的には昔からの酒造・醸造会社、離島における海運会社など同族経営を前提とした小規模な企業がほとんどであり、現存数は株式会社や有限会社に比べると圧倒的に少ないといえます。

 合名会社は、社員が無限責任を負っているから、会社自体の財産もさることながら、会社に結集した社員個々人の資産状況が、会社の信用の大きさにつながります。また、社員は会社の財産的裏付けであると同時に経営陣でもあるから、その手腕・技能・知識・経歴や人脈・人望が経営の成否を左右します。合名会社は、このように社員に属する特性(資本の人的な構成)、そして社員間の協調に信用や経営の基礎を置く人的会社です。いわば、合名会社は個人事業主として活動するのとほとんど同じ形といえますから、個人事業主からの法人なりを検討するときにはあまり大きなメリットはないといえます。

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 多くのベンチャーは、株式会社あるいは合同会社なので、創業者は有限責任です。よって本来は出資額以上に会社の債務に責任を負うことはありません。しかし、ベンチャー企業が金融機関から融資を受ける場合には、会社の創業者・経営者が連帯保証人となることが求められことがほとんどです。これはベンチャーには十分な実績や信頼がないためです。

 連帯保証人となると、債務全体の責任を負うことになるので、ベンチャーの創業者は実質的には無限責任者であるといえます。有限責任と無限責任の違いは会社の債務に対する責任範囲の違いです。いくらベンチャーの創業者は実質無限責任とはいえ、個人としての責任範囲は小さいに越したことはありません。

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 会社を設立するなら、有限責任が望ましいです。少し余談にはなりますが、新たに設立される会社のほとんどは、株式会社・合同会社である理由はここにあります。

 合資会社・合名会社は無限責任社員にならないといけないというデメリットを抱かえつつ、合同会社に比べてメリットがありません。

 合同会社に出資したのを機に、責任範囲および利益の配分の問題はっきりさせましたが、皆さんはどう思われますか。



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