学習教室講師の世界(その4)…数学・理科の講師マニュアル
現在、私と妻で学習塾を展開しています。塾の特徴は、妻が英語、国語、社会の文系科目を、私が数学と理科の理系科目を担当し、文系、理系志望のいずれの生徒への道を開いているという点と、集合授業ではなくて、多くても5人程度の少人数クラス制としている点です。しかし、私が73歳、妻が69歳になり、まさに事業承継について考えなければならない時期に来ています。事業承継しないで会社を廃業させることも選択肢として考えており、そのための廃業資金についても税理士と相談してすでに準備も済ましています。しかし、これまでに培ったノウハウを捨てるのはもったいなく、誰か跡を継いでくれる者はいないかと考える今日この頃です。
今回紹介するのは、仮に事業を承継してくれる人材が現れた場合を想定して、現在私が担当している数学と理科の2科目の授業の進め方のノウハウをマニュアル化したものです。
1. 時間割について
小学生コース 算数1.5時間 理科 1時間 週1回
中学生コース 算数1.5時間 理科 1時間 週1回
高校生コース 数学2時間 週1回
夜の7:00~9:30を基本に考えていますが、小学生、中学生では90分程度が限界だと感じています。
2. 中学受験のための小学生アドバンスコース
授業を進めるポイントは、下記のようになります。
(1) 中学受験を真剣に考え挑戦する子
このコースでは、教材も4年、5年、6年用と準備されており、カリキュラムに沿って忠実に授業を進めてゆけば良いです。ただ、教える内容は、中学受験独特のものがあり、講師の方はこれに少し時間をかけて準備し、早くマスターしておかないといけません。少なくとも教材にある例題部分の説明準備は完全にしておく必要があります。小学生の子に解り易く丁寧に教えることがポイントです。
教科書は、育伸社の「中学受験講座アドバンス」算数と理科を使用します。
5年生で使用するアドバンス算数Ⅱには、中学受験で使うテクニックの基本が網羅されており、全体内容も優れた教材です。
H子さんの場合は、2021年現在は20歳で国際基督教大学に進んでいます。2010年頃から当塾の中学受験アドバンスコースに入り、4年、5年、6年の3年間教えた最初の生徒さんでした。私の方も、最初は要領が掴めませんでしたが、三重大学付属中学に入学できほっとしたのを覚えています。
私立暁学園では、小学校から中学校に進学する生徒に、「新入生課題 算数」を与えています。結構難しい問題を集めた冊子ですが、中々良い参考書です。
(2) 取り敢えず中学受験に挑戦してみるという子
公立中学と私立中学の二股をかけている生徒さんで、私立が駄目なら公立に行けば良いという程度の力の入れようの子供さんの場合です。どうしても中学受験したいという強い希望を持っている訳ではありません。この場合には、5年生の半ばまたは6年生になってから入塾することが多いです。このケースは4~6年の教材を使って順次レベルを上げて行くことが時間的に不可能です。
この場合、中学受験で必須となる問題を抽出して、短時間で勉強して貰うというスタイルにならざるを得ません。当方も、これに対応できるような問題集を作成しておく必要が出てきます。そのために、私の場合は、後日紹介しますが、「中学受験を学ぶカンとどころ」という小冊子を準備しています。それに沿って短い期間で基本的な問題を解くテクニックを覚えてもらうようにしています。
3. 中学生コース
公立中学に通い、高校受験を目指す生徒さんが対象となります。この場合は、下に示す様な学校の教材を使用して授業を進めます。
但し、3年生の夏休みと冬休みには「特別教室」と称して、下に示す教材を使用して、徹底的に受験対策を行ないます。
具体的には、問題の内容が基本的なAと応用のBに分れますが、まずはAの基本の部分を全領域に亘って勉強して貰い、Aが完了したらBの部分を進めるというようにします。ここは、受験を目指す個々の生徒さんの様子を見ながら、進度を決めて行きます。
算数については、場合の数、二次関数、幾何が中心となるので、自分なりの授業冊子を準備しておきます。また、理科については、広く浅く学べるように、やはり自分なりの授業冊子が必要となります。これらの冊子も後日紹介します。
私立鈴鹿中等・高等学校では、中学校から高等学校に進学する生徒に、「新入生課題 算数」を与えています。これも結構難しい問題を集めた冊子ですが、参考書して十分に使えます。
4. 大学受験を目指す高校コース
高校高校コースでは、生徒が通う高校の授業で使用している参考書を使用し、学校での補習という形で進めます。一番良いパターンは、高校からは解答集が与えられず、当塾では解答集を入手できる場合です。生徒が解答に手間取った場合には、いつでも説明出来る様に当方も準備しておきます。この準備は徹底します。これは、教師サイドの説明能力を向上させる上で重要なプロセスです。
数研出版のチャートシリーズには、
赤チャート(基礎から発展)、青チャート(基礎からの)
黄チャート(解法と演習)、 白チャート(基礎と演習)
と揃っていますが、主として黄チャートを使用しています。チャートの特徴は解答の解説が丁寧になされていることでしょうか。
一方、2020年度から新たに始まった大学共通テスト対策については、まだ十分な参考書も出版されていないので、塾専用の問題集を作っておく必要があります。そして、授業の中で適宜取り入れて進めます。但し、授業の一部を使って行います。この部分は他の塾ではできないような、工夫をおこない、一味違う教えを提供するように心がけます。
新しい共通テストでは、これまでの大学入試センター試験以上に「思考力・判断力・表現力」が問われる内容になったと言われています。このような内容の問題に対しては、単純に「典型的な解法パターンに当てはめる」と言う考え方では通用しないようです。確かに、例題などを通して典型的な解法パターンを習得することはとても大事なことですが、それ以上に、問題の本質を見通した深い理解が求められます。
以上、授業の進め方は、塾によっても、講師によってもそれぞれ異なります。要は、Only One をどのように打ち出していくかが勝負だと思いますが、皆さんはどう思われますか。