学習教室講師の世界(その5)…中学受験算数を学ぶカンどころ
妻が経営する塾の手伝いを始めたのが1982年、本格的に数学・理科の講師を受け持ち始めたのが2008年、そして中学受験算数・理科を教え始めたのは、平成22年(2010年)ですから、これももう10年前になります。当時小学5年生だったH子さんが私にとって中学受験第1号の生徒さんでしたが、彼女は現在国際基督教大学に在学しています。今年2021年に20歳の成人式を迎えたと聞きましたが、色々なことを思い出します。
中学受験の算数は、通常の公立中学に通う生徒が学ぶ算数とはだいぶ違います。しいて言えば、問題を解いていくに当り、通常よりも思考過程を重要視するという独特のものがあることが、私自身もこの10年間で学ぶことができました。一口で言えば、難しいパターンや公式を覚えて解くというよりも、問題をステップを踏みながら順番に進めていくというものです。
このような、中学受験算数を教えるに当っては、受験生が学んでおかなければならないポイントが幾つかありますので、ここではそれを紹介したいと思います。
1. 計算のきまりを確実に覚える
ここで下記8点をポイントとして挙げたのには理由があります。小学生を教えていて凡ミスのような形で間違いを犯すのにこの3点は特に多いと思うからです。
一番多いのが、式中の割り算をうまく処理できず間違う場合です。処理方法としては、÷の記号が式中に現れたら、これを掛け算×に置き換えてしまうことです。もちろん÷の後ろの分数は分子と分母が入れ替わります。
次に多いのが、-で括った数式の符号の問題です。-を使いたい場合には面倒でも一度は-( )の形に表示し、括弧を外すのはその後です。
2. 図を描いて問題の主旨を正確に把握する
中学中学受験用算数で最も重要だと感じるのは、「図を描いて問題の主旨をいかに正確に把握するか」ということにつきると思います。絵を描くことで、問題の主旨や与えられた条件の概要を掴むことができます。特に面積図では、図を駆使して行きますと、縦横に何を持ってくれば良いのかがはっきりと見えてきます。この様な問題把握の進め方は、将来社会に出てもいつでも応用を効かすことが可能であると思います。私の処にやつてくる子供に対しては、何はさておき、絵を描かせることから指導する事にしています。
3. 割合に関する問題に慣れる
割り戻しとは、対象となっている部分の実際の値が分かっていて、かつ、その部分の全体に対する割合をも扱っている時には、与えられている実際の値をその部分割合で割ってやると、割合としては1となる全体の値が求められると言う考え方です。この考え方は色々な場面で登場してきますので、絶対にマスターしておくべきテクニックであると言えます。実際においても、現在分かっている部分の情報から、全体を捉える場合に使える方法です。
4. 速さに関する問題を使い慣れる
速さは、速さ×時間=距離となるので、面積図の問題でもしばしば取り上げられます。応用問題も色々な形で作成できます。また、速さについては換算なども確実に対応できるようにしておきたいものです。
5. 図形の問題の特徴を見極める
図形の問題は、中学・高校での幾何の問題に直結しますので、その基礎を確実に自分のものにしておくことが非常に重要です。特に、三角形における内角・外角の関係、平行線における錯角・同位角の関係、二等辺三角形における垂直二等分線の関係は非常に重要です。その他にも、水の深さと底面積の関係、図形の折り返しの問題、扇形の考え方、などいずれも重要です。
6. 三角形の面積問題
ここでは、相似比と面積、同一三角形内の複数の三角形の底辺と面積の関係、は非常に重要です。高校入試において頻出する幾何の問題を解く上で、これらの関係を使いこなしておくと大きな味方となります。
7. ダイヤフラム
ダイヤフラムのダイヤフラムの問題は、その中で色々な場面でた旅人算が使われますので、マスターしておきたい問題です。
8. 規則性
規則性の問題は、数学的思考を訓練するために不可欠の問題です。また、一度これをマスターしてしまうと、かなり深い領域まで入り込むことができるようになります。
下表には、上で紹介した中学受験の典型的な例題を幾つか準備しましたので、これらのパターンをしっかり学習して下さい。
例1. 計算のきまり ⇒ 式中の割り算の処理
例2. 計算のきまり ⇒ -で括る場合の符号の処理
例3. 計算のきまり ⇒ 少数や帯分数処理
例4. つるかめ算
例5. 過不足算
例6. 等価面積
例7. 和差算
例8. 分配算
例9. (1) 差一定問題
(2) 和一定問題
例10. 割合と比
例11. 年齢算
例12. 植木算
例13. 方陣算
例14. 消去法
例15. 割戻し算
例16. 食塩水問題
例17. 商品販売問題
例18. 仕事算
例19. 通過算
例20. 旅人算
例21. 流水算
例22. 時計算
例23. 三角形の内角・外角
例24. 平行線と錯角
例25. 二等辺三角形と垂直二等分線
例26. 図形の折り返し
例27. 水の深さ
例28. 図形の移動
例29. 渦巻線
例30. 相似比と面積
例31. 底辺の比と面積
例32. 旅人算の応用
例33. 等差数列
例34. 数の規則性
例35. あまりによる分類
公立中学と私立中学の二股をかけている生徒さんで、私立が駄目なら公立に行けば良いという程度の力の入れようの子供さんがみえます。どうしても中学受験したいという強い希望を持っている訳ではありません。この場合には、5年生の半ばまたは6年生になってから入塾することが多いです。このケースは4~6年の教材を使って順次レベルを上げて行くことが時間的に不可能となります。
この場合には、中学受験で必須となる問題を抽出して、短時間で勉強して貰うというスタイルにならざるを得ません。当塾も、これに対応できるように、「中学受験を学ぶカンとどころ」という小冊子を準備し、短い期間で基本的な問題を解くテクニックを覚えてもらうようにしています。皆さんどう思われますか。