学習教室講師の世界(その8)…中学理科授業のポイントを探る

 中学生の理科は範囲が広いので、計算問題も基本的なものに限定されているようです。従って、教える側としては、各分野の典型的な計算問題について、そのやり方のガイドラインをしっかりと持っておくことが重要と考えています。

 今回は、中学生の理科の計算問題で重要な、化学、電気、地層、地震、天体、遺伝子の6つを取り上げます。

1. 化学計算のポイント

 化学では、化学反応、中和の計算問題が圧倒的に多いように思います。いくつか例題を挙げて、考え方のポイント解説をしてみます。

例1.

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問題(3)
 ここでの基本的関係は、銅と酸素が反応する場合の質量の比を見付け出すことです。表より、銅の質量は酸素の質量の4倍になっていることを読み取ることです。銅0.50gの時酸素は0.12g、できる酸化銅は0.62gなので、基本的関係は下記となります。

銅の質量:酸素の質量:酸化銅の質量= 4 : 1 : 5

問題(4)
 また、マグネシウムと酸素の質量の比は約3 : 2と与えられているので、

     マグネシウム:酸素:酸化マグネシウム= 3:2 : 5

① マグネシウム1.2gと化合する酸素の質量は、
     マグネシウム   酸素
        3   :    2
       1.2   :    x
             3 : 1.2 =2 : x ⇒ x=1.2×2/3=0.8g

② マグネシウム0.6gからできる酸化マグネシウムの質量は、
     マグネシウム    酸化マグネシウム
        3      :      5
        0.6   :      x
             3 : 0.6 = 5 : x ⇒ x=0.6×5/3=1.0g

③ マグネシウム2.0gと酸素1.0gを反応させたとあります。
  マグネシウム2.0gの反応に必要な酸素量を求めてみると、
     マグネシウム   酸素
        3     :   2
        2     :   x
            3 : 2 = 2 : x ⇒ x=1.333 で1.0gより多く必要。

 従って、この場合酸素1.0gは全部反応し、マグネシウムが残ることになる。
そこで、酸素1.0gに反応するマグネシウムの量はどれくらいかを求める。
     マグネシウム   酸素
        3    :   2
        x    :   1
            3 : 2 =x:1   x=1.5g マグネシウム

 従って、この1.5gのマグネシウムは全部反応するので、できる酸化マグネシウムは、マグネシウム1.5g+酸素1.0gの2.5gということになります。

例2

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問題(5)
 同様の問題で、基本は、マグネシウム:酸素:酸化マグネシウム= 3 : 2 : 5

① 反応せずに残るのは、どちらかを確認します。
     マグネシウム   酸素
        3    :     2
        3    :     x
            3 : 2 = 3 : x ⇒ x=2g 
 酸素は3.0g準備されているので、3g-2g=1.0gの酸素が残ります。

② この場合、マグネシウムは全部反応するので、
 できる酸化マグネシウムは、マグネシウム3.0g+反応する酸素2.0g=5.0gとなります。

例3.

基本的反応
  銅 + 酸素  ⇒ 酸化銅   4:1:5
  水素 + 酸素  ⇒ 水     1:8:9
  炭素 + 酸素  ⇒ 二酸化炭素 3:8:11

⑤ 酸化銅5.0gに炭素を加えて加熱したところ、炭素が不足したため、残った物質の質量
 は4.2gでした。ここで、残った物質は、還元された銅と酸化銅を合わせた4.2gである
 ので、5.0g-4.2g=0.8gは、還元で抜けた酸素の量を示すことがわかります。
 また、0.8gに結び付いていた銅の量は、

     銅   :   酸素
     4   : 1
     X   : 0.8
      3 : x = 1 : 0.8 ⇒ x=4×0.8=3.2g…残っていた物質の銅
 残っていた物質で、酸化銅の部分は4.2g-3.2g=1.0g

 加えた炭素は、
     炭素  +  酸素   ⇒  二酸化炭素
      3 :    8
      x :   0.8
         3 : 8= x : 0.8 x=0.3g … 炭素量

例4

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(1) イ:空気より軽い気体である。 オ:火を近づけると、ポッと音を立てて燃える

(2) 表より、アルミニウムのつぶが8個以上では、発生した気体の量が一定になってい
  ます。発生した塩酸の量が360cm3と決まっているため、反応に塩酸がすべて使わ
  れてアルミニウムが溶け残っていると考えられます。従って、アルミニウムのつぶ
  15個加えても、発生する気体の量は360cm3となります。

(3) 表よりアルミニウムのつぶが2個溶けると、気体が100cm3発生することがわかり
  ます。このことから、360cm3には、何個のつぶが反応するかを求めます。

        2個   100
        x個   360
           2 : x =100 : 360 x=7.2個

 すなわち、20cm3の塩酸では、7.2個のアルミニウムのつぶが反応します。

 実験2では、5個のアルミニウムのつぶが用いられます。
これを溶かすに必要な塩酸は、

        20cm3 7.2個
        x    5個
           20 : x=7.2 : 5 ⇒ x=20×5/7.2=13.88cm3

 13.9cm3なので、塩酸がこれよりも少ないと、アルミニウムのつぶは残ります。
従って、A:5cm3とB:10cm3ではつぶが残ります。

(4) 塩酸20cm3で7.2個なので、塩酸30cm3のときは、5個は十分に解けます。
  また、塩酸20cm3のときと、塩酸30cm3の時では、溶解度曲線は一致します。
  溶ける限界が異なるだけです。

         2個   100cm3
         5個    x
            2 : 5=100:x ⇒ x=250cm3

(5) 塩酸20cm3が7.2個のアルミニウムのつぶと反応するので、20個のアルミニウム
  と反応するためには、

         20cm3 7.2個
         x      20個
            20 : x =7.2:20 ⇒ x=56cm3

例5

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 まず、基本となるものを見付けだします。
グラフより、3cm3の水酸化ナトリウム水溶液を完全に中和するためには、2cm3の塩酸が必要です。
         水酸化ナトリウム:塩酸=3 : 2 (基本)

(1) 水酸化ナトリウム水溶液15cm3に塩酸を加えて中性にするためには、
         15 : x =3 : 2 ⇒ x=10cm3
  必要です。

(2) 塩酸2.4cm3と水酸化ナトリウム水溶液3cm3を混ぜると  
  基本は塩酸:水酸化ナトリウム:=2 : 3 なので、
  今回のものは、塩酸が多く酸性を示します。

(3) これは、基本的に中和と加熱による結晶化の問題です。
・ 水酸化ナトリウムを6cm3熱すると、1.0gの結晶ができます。(基本)
・ 塩酸4cm3と水酸化ナトリウム6cm2を混ぜ合わせ熱すると2.0gの結晶ができます。(基本)

 まず、中和反応を考えます。
塩酸5cm3を完全に中和するのに、x : 5 = 3 : 2 x=7.5cm3 の水酸化ナトリウム水溶液が使われます。
この時、食塩は 6 : 2 = 7.5 : x x=2.5gできています。

 反応せずに残った水酸化ナトリウム水溶液は9.0g-7.5g=1.5cm3なので、
加熱による結晶は  6cm3 : 1.0g =1.5cm3 : x ⇒ x=0.25gできています。

 水を蒸発させると合わせて 2.5g+0.25g=2.75gの固体が残ります。

(5) 水酸化ナトリウム水溶液の濃さが2倍になったので、塩酸を中和して中性にするのに
  必要な体積は1/2になります。

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2. 電気のポイント

・ まずは直列回路の話をしているのか、並列回路の話をしているのかで分けます。
・ 直列回路であれば、全体を流れる電流に着目します。
・ 並列回路では、各々にかかる電圧は等しいので、各部にはそれに見合った電流が流れ、
 合計したものが並列部の電流になることに着目します。
・ 直列と並列が組み合わさった複雑な問題では、全体の抵抗値はどうなのか、全体を
 流れる電流はどうなのかを考えるのが良いようです。
・ 電池の並列つなぎでは、全体は1個の電池を繋いでいる場合と同じ電流となる。
 但し、個々の電流は少なくなります。

・ 最終的には、次の3つの典型的な例を覚えてしまえば良いということです。

Case1. 1つは並列回路の電流の扱い方
    ・各抵抗を流れる電流を合わせたものが、全体電流となります。

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Case2. 1つは並列回路を含んだ直列回路

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Step1. 直列回路では最終的に全体電流がポイントになるので、
    まず全体の抵抗の大きさを求めます。
    並列部は1/2、
    従って、全体の抵抗は 1+1/2=3/2
Step2. これに対する全体の電流 2/3
Step3. 並列部は2/3÷2=2/3÷2=2/3×1/2=1/3


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Case3. 並列電池を流れる電流
・ 全体を流れる電流を1とすれば、各電池には半分の電流が流れる。従って、並列の場合
 は寿命が長い。




Case4. 熱の発生は、並列回路では電流が大きいほど大きい。
    直列回路では、電流が一定であるため、抵抗が大きい程大きい。

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Case5. 電池1個電球1個の基準回路との比較で考える

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(1) 豆電球Xについて
・ Xの豆電球を含む並列につながっている部分の抵抗は、豆電球1個の半分になります。
 つまり、回路全体の抵抗は、豆電球1個の0.5+1=1.5倍になります。
・ この回路では乾電池1個で回路全体に流れる電流の大きさは、豆電球1個のときの
 1÷1.5=10/15=2/3倍となります。
・ 従って、豆電球Xを流れる電流は、その半分の1/3倍。
・ Yを外して豆電球XとZが直列に繋がっている時の全体の抵抗は、豆電球1個の場合の
 2倍。
・ この回路全体の電流は 1÷2=1/2倍
・ 従って豆電球Xの電流は、1/3 ⇒ 1/2と増加するので、明るくなります。

(2) 豆電球Zについて
・ 豆電球Zについては、最初の回路の全体抵抗は、豆電球1個の場合の
  0.5+1=1.5倍=2/3倍となります。
・ 従ってZを流れる電流は 1÷3/2=2/3倍です。
・ Yを外した豆電球XとZの直列回路では、回路全体の抵抗は、豆電球1個の場合の
  1+1=2倍となります。従って回路全体の電流は、1÷2=1/2倍
・ 従って、豆電球Zについては、電流が2/3 ⇒ 1/2と減少するので、暗くなります。

Case6. 複雑な電気回路の考え方

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(1) 基本回路の設定

(2) 複雑回路全体の値決め

(3) 取り敢えず基準との比較でもとめ、最後に具体的な値に換算し直します。
 例えば基準電圧が8Vであれば、複雑回路の全体電流値は 4/5A×4倍=16/5Aとなります。



<参考> 電流と磁界

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3. 地層のポイント

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 水平な地層では、同じ種類の層の標高は等しくなります。凝灰岩の層を合わせて柱状図Ⅰ~Ⅳを表すと次の様になります。

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 図より、柱状図Ⅰの地点は、柱状図Ⅲの地点より10m低くなります。柱状図Ⅱの地点は柱状図Ⅲの地点より10m高くなります。柱状図Ⅰの地点は、3地点で最も低いため、Y地点とわかります。また、柱状図Ⅳの地点は、柱状図Ⅰの地点より4m高いことがわかります。

 柱状図ⅠのY地点の標高が40mより、Z地点の標高は、40+4=44mとなります。






4. 地震の揺れのポイント

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① について、
・ P波が観測点Aに到達してから、10秒後にS波がA地点を通過しています。
・ このことから、P波が観測点Aに到達した時、S波は震源地から
  4km/秒×10秒=40km手前の地点にあることが分ります。

② について、
・ 震源からA地点までの距離をL kmとする。
・ P波(8km/s)がA地点に到達する時間はL/8秒です。
・ 三角形の相似関係により、
  (L/8 + 10):10=L : 40
  より、L=80 km

緊急地震速報

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(1) 地震計は震源から132km離れたところにあるから、これを初期微動P波の速さで割る。
  132km÷4km/s=22s 後である。

(2) Tさんの自宅は震源から156lkm離れている。主要動S波(4km/s)が始まるのは
  156km÷4km/s=39s 後となる。

(3) テレビに緊急地震情報が流れ始めたのは、22秒+10秒=32秒後である。
  Tさんが主要動を感じたのは、緊急地震情報を受け取ってから
  39秒-32秒=7秒後である。

(4) Uさんは緊急地震情報を受け取ってから15秒後に主要動を感じているので、地震発生
  から 32秒+15秒=47秒の地点にいる。従って、4km/s×47s=188kmの地点。

(5) Tさんが緊急地震情報を聞いてから主要動を感じるまでに20秒欲しいので、そのために
  は 39秒-20秒=19秒 前に緊急地震情報が流れる必要がある。
  従って、19秒-10秒=9秒 の地点に地震計があれば良い。それは
  6km/s×9s=54km の地点となる。

5. 地球の公転と自転を組合せた問題ポイント

5-1 南の空の星

問:

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 現在10月15日午後7時にA点にある恒星Xは、2ケ月後の12月15日の午後7時には、どの位置に見えますか。

・ 地球の自転によって南の空の星は、時計回りに東
 から西へ1時間に約15度動いて見えます。
   360°÷24時間=15°/時間
・ 地球の公転によって、恒星Xが同じ時刻に見える
 位置は、時計回りに東ら西へ1ケ月に約30度ずつ
 動きます。
   360゜÷12ケ月=30゜/月
・ 時間はPM7なので、公転による変化を考えればよいことになります。
・ 自転軌道面から公転軌道面に移し、2ケ月後の位置Bを求めます。
・ 公転…30度/月  自転…15度/時 ⇒ 30度/2時間

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5-2 北の空

問:

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 10月15日の午後9時に図のeの位置に見えたカシオペア座が、同じく午後7時に図のeの位置に見えるのは何日頃ですか。


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・ 北の空では星は南の空とは逆に反時計回りに東か
 ら西に星が同じ位置に見える時刻は、地球の公転
 によって1日に約4分ずつ、1ケ月では約2時間早
 くなります。



・ まず公転軌道上でPM9を示す月を表示する。
・ 次に、e地点でPM7なので、どの月で再度時点軌道に戻れば良いかを考える。
・ その結果、カシオペア座が午後9時より2時間早い午後7時にeの位置に見えるのは、10月15日から約1ケ月後の11月15日です。

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ポイント
・ まずは与えられた条件を図の上にプロットして、次に自転と公転を考えながら位置合わせをする。

問:
 10月15日の午後9時に図のeの位置に見えたカシオペア座が、同じく午前1時に図のeの位置に見えるのは何日頃ですか。

・ 10月15日PM9時から、4時間後のAM1時に見えるカシオペア座は、自転軌道面上でdの
 位置からさらに30度(eの位置から60度)反時計周りに動いた位置(B点)にあります。
・ 従って、AM1時に見えるカシオペア座は、約1ケ月前の9月15日はdの位置、約2ケ月前
 の8月15日はeの位置(C点)に見えます。

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5.3 金星を考えるポイント

画像の説明

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① 日の入りごろ西の空に見える金星の位置は、F, G,
 Hです。日の入りのときの地平線をXとすると、右
 の図のように表わすことができ、地球から見た位
 置はGが最も高いことがわかります。金星も太陽と
 同じように、西に沈んでいくので、金星がGの位
 置にあるとき、西の空に太陽が沈んでから金星が
 沈むまでの時間が最も長いと考えられます。

画像の説明

② 金星は、地球・金星・太陽の位置関係から満ち欠
 けして見え、地球からの距離によって見かけの大
 きさが変わります。右の図のように、地球からG
 の位置にある金星を見ると、金星は右側が光る半
 月形に見えます。



5.4 日食と月食

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① 本問は、皆既日食が見られる移動線上での話と、その移動線上よりも上の地域、下の地
 域に分けて考えます。まず、皆既日食の移動線上に、福岡とと東京がある場合には、地球
 から日食を見ると、月が西から東に動いて太陽の前面を通過して行きます。従って、西の
 福岡から東の東京の順に皆既日食が見られます。

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② B地点から南西寄りのA地点に本影があるということは、月も南西寄りにあると考えるこ
 とができます。





月食・日食の基礎

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1. 地球の太陽の周りを反時計周りに動き、公転周期は
 1年、地球の自転は反時計周りで自転 周期は1日。
 月の地球の周りを反時計周りに動き公転周期は30
 日、月の自転は反時計周りでその周期は30日。

2. 地球の自転では、太陽や月は東から上がり、南の空
 を通り西に沈む。地球の公転では、太陽との間では
 4基の変化が起こる。月の公転では、月の満ち欠け
 がおこる。自転ではいつも同じ面を地球に向けている。

画像の説明



3. 日食の時、地球を固定して考えると、太陽も月も西
 から東へ動くが、太陽の速度に比べ月の速度が速い
 ので、月は太陽の前面を西から東へ横切って行く。



4. 日食の起こり方:太陽と月の公転軌道は、月の方が5°下に傾いているので、日食は下側
 から欠けて行く。

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5. 月食の起こり方:月は西から東に向かっているので、地球の影に西側から入り、東側へ
 抜けて行く。すなわち、月は東側下から欠けて行く。

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6. メンデルの法則

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(d) 孫に関する問題

画像の説明

 AA : Aa : aa =1 : 2: 1
  aa=1800個
 AA+Aa=x
  (1+2) : 1= x : 1800
 x= 5400個

 AA+Aa-5400個

 Aa=y個
 y= 5400×1/(1+2)=3600個



(e) 孫の自家受粉
 孫にあたる種子のうち、丸い種子の遺伝子は、AAとAaでその数はAA :Aa=1 : 2である。それらを自家受粉させたとき、得られる種子の遺伝子の組合せは下図の様になる。(自家受粉は同じもの同志を掛け合わせることになる)

  丸い種子としわのある種子の数の比は (AA+Aa) : aa=10 : 2 = 5 : 1 となる。

画像の説明

 これまで特に化学の問題に手を焼いていました。今回化学の計算問題の考え方を整理したことで、少し楽になりました。ついでに、電気、地層、地震、天体、遺伝についても教えるネックとなっていた部分を整理してみました。皆さんどう思われますか。



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