日本外交の目指す方向(その12)…桜井よし子にみる韓国幻滅の真相

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 今回紹介する本は、「赤い韓国」という書籍名で2017年5月に産経新聞出版から発行されました。桜井よし子氏と呉善花(オ・ソンファ)氏の対談が本になったものです。この時期、日本と韓国は非常に難しい二国間関係に陥っており、両氏は少しでも朝鮮半島の実態を知って、どのように対処するのか、何が一番理にかなっているのかを知り、最も賢く対処したいという思いの中で対談しています。

 桜井よし子氏は、ベトナム生まれで、ハワイ州立大学歴史学部卒業しておられます。日本テレビ・ニュースキャスターを経て、フリージャーナリストとして活躍し、2011年に日本再生に向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞しています。2012年、インターネット動画番組サイト「言論テレビ」を起ち上げ、キャスターを務めています。

 一方の呉善花(オ・ソンファ)氏は、1956年韓国に生まれ、大東文化大学卒業後、東京外国語大学大学院修士課程を修了され、現在は拓殖大学国際学部で教授職についています。韓国時代に4年間の女子軍隊体験をしたとのことです。

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 さて、対談の中で桜井よし子氏は韓国の「反日」思想の背景として、次の四つを挙げています。

(1) 儒教の影響による「日本は野蛮」観
(2) 日韓併合による同化政策への「恨」
(3) 全斗換政権時代、日本に60億ドル支援を要請し、拒絶された「恨」
(4) 北朝鮮の対南工作が「イデオロギー」から「民族」へ変化

 以下各項目について、桜井氏が主張しているポイントを紹介します。

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 1つ目は孔子に始まる「儒教の影響」です。韓国は中華文明という大きな秩序の中にあり、中国がトップで、韓国がその下にいて、日本はそのずっと下にいる。中国から遠い日本野蛮であり、文明などは朝鮮が教えてあげたのだという考え方から、日本人を馬鹿にします。


 また、儒教は韓国の歴代大統領選びにも大きく影響を与えています。下表は韓国の歴代大統領の在任期間とその後を示したものです。これを見ますと、いずれの大統領も皆、権力を手放した途端に「お前は正しくなかつた」と言われています。徳を失った指導者は天命により新たな徳ある指導者と交代します。これが儒教に言う革命です。その際、前指導者は当然「悪」として断罪すべき者となります。正しくない者を断罪し潰そうとしたとき、韓国人は徹底的に潰しに行きます。そこでは誰もが絶対正義の立場に立とうとします。あるいはそうしなければ不正義と見なされるようです。

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 2つ目は、日韓併合による同化政策です。「野蛮な日本が韓国を併合した」ということなのでしょう。しかも同化政策で、日本語を教えたり、日本風の規律正しい生活を教えたりしたことに対して、韓国人には恨みつらみがあります。当時の日本人は、朝鮮の人々に対して、自分達と同じように教育を与え、巨費を投じて大規模な土地改良や交通・通信設備の整備、近代工場や大規模水力発電所の建設など社会インフラの整備を広く行いました。しかし、日本が韓国を同化しようとしたという理由で、いま韓国人は日本を恨んでいるのです。

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 3つ目は、全斗換政権(1980年~1988年)の8年間に示された「反日」の背景があります。1981年、アメリカではロナルド・レーガン大統領が誕生し、当時のソ連を「悪の帝国」と呼んで、軍拡路線に走りました。それを見た全斗換大統領は、北朝鮮と対峙するためには、韓国も軍事的に強くならなくてはならないと考えました。そして総額200億ドルの軍事拡大計画を作り、その1/3に当る60億ドルを日本に支援してくれと頼んできたのです。しかし、日本が他国の軍事拡大に資金を出せるわけがありません。拒絶しました。すると全斗換大統領は、恨みを持って反日に転じたのです。1982年には、日本で教科書書き換え問題も起きました。教科書検定で中国・華北への「侵略」が「進出」に書き改められたと報道されました。結局、これはまったくの誤報で、そんな事実はなかったのですが、マスコミはこぞって書きたて、中国や韓国の反発を招きました。

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 4つ目の背景は、北朝鮮の対南工作の変化です。北朝鮮は韓国の反日意識を利用して、激しい工作を仕掛けました。1980年代当時は、社会主義や共産主義が勢いを失くしていた時期です。そのため、イデオロギーを軸に闘争する路線から、「ウリ:我が民族」を軸に据えた工作を仕掛けました。これらが、とどのつまり、日本を悪者にしてすべてを丸く収めるという反日思想の背景にあるのではないかと、これは、朝鮮問題専門家の西岡力氏らが指摘しています。

 2003~2008年、盧 武鉉(ノ・ムヒョン:)大統領の下で、文在寅氏は大統領秘書室長、日本の官房大臣に相当する役職を務めていました。非常に親北朝鮮的で、反日で、親中国でした。その筋金入りの左派である文在寅氏が2016~2021年は大統領を務めました。

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 桜井氏は、文在寅大統領の「経済統一論」については警戒する必要があると言います。文在寅大統領は2015年、光復70周年にあたって経済統一構想と「韓半島の新経済地図」を提示しました。経済を軸にして南北を統一するということです。その基本は盧 武鉉政権の構想にあり、朴槿恵氏もそれを基本的に受け継ぐ形で「ユーラシア・イニシャチプ」構想を展開しました。そこでは、「統一は大当たり」だとして、いわば「南北経済統一プロジェクト」への積極的な姿勢を取っていきました。

 経済的な統一から政治的な統一へという統一論は、すでに韓国の基本となっています。文氏は「韓国経済の活路は北朝鮮と経済共同体をつくること」だと言っています。いま北朝鮮は、どちらかというと中国に頼っていますが、それではいけない、もっと韓国に頼るようにしなくてはならないと、そのような考え方です。

 同じ様な構図が1990年に東西ドイツが統一されたときにも見られます。旧東ドイツは経済的に貧しかったため、旧西ドイツの財政負担は巨額となり、長期にわたって経済は停滞しました。韓国の人が文在寅氏を大統領に選び、経済統一に向かえば、北朝鮮を経済的に引き受けなくてはなりません。北朝鮮は潰れそうな国なのですから、その負担はドイツの比ではないでしょう。韓国は北朝鮮よりはるかに繁栄していますが、やはり2500万人を極貧から救い出し、北朝鮮を盛り返すのは大変なことでしょう。統一は民族として成し遂げるべきだと文在寅氏が大統領は考えています。ただ、韓国の国民がきちんと現実を認識してそこまで考えたうえで文在寅氏を支持しているのかは疑問です。ドイツのような完全な統合を先行させるのではなく、文在寅氏の構想は、政治的な統一の前に、まずは経済共同体を作ろうというのです。これを中軸として、韓国、北朝鮮、中国をつなぐ「新経済地図」を実現させていこうというものです。

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 「新経済地図」は二つの経済圏からなっています。その1つは「環東海経済圏」です。環東海経済圏とは、「東海」を真中にして、韓国の釜山と北朝鮮の羅津(ラジン)、ロシアのウラジオストク、日本の新潟とを結ぶ経済圏を作ると言う構想です。この経済圏構想について、例えば2014年8月12日の韓国紙「中央日報」は「韓半島統一が周辺国に与えるもの」と題するコラムで、ロシアのガス・エネルギー資源と日本の先端技術、韓国の造船・石油化学産業の力量が羅津・先鋒(ソンポン)・ウラジオストク地域と結び付けば、世界的に競争力のある製品が生産されることで北極航路やシベリア横断鉄道を通じて世界最大市場の欧州に直接連結されるだろうと解説しています。

 「新経済地図」のもう1つの経済圏は「環黄海経済圏」です。これは黄海を真中に、北朝鮮の南浦(ナムポ)、海州(ヘジュ)、開城(ケソン)、韓国の仁川(インチョン)、木浦(モッポ)、そして中国の上海を結ぶ経済圏構想です。

 この2つの経済圏を作れば、朝鮮半島は経済の中心になるという考え方です。そのためには、釜山から大陸を結ぶ鉄道の線路を作る必要があります。釜山から北上する線路を敷くことです。文氏はこのような経済圏で、北朝鮮との経済的統一を目指していく考えです。

 文在寅氏が掲げる二つの経済圏構想をみて、桜井氏はすぐに「背後に中国がいる」と指摘します。いまでも日本海には。北朝鮮籍の船が何百層も来ています。これらは船籍こそ北朝鮮ですが、実際は中国が基本的に2年契約でチャーターした船です。中国がオペレーターなのです。そのような船が、何百層も日本海にいて、荷物を積んで北朝鮮の羅津に運び、北朝鮮からは石炭などの物資を中国に運んでいます。つまり輸入しているのです。

 私事になりますが、桜井よしこ氏の文化講演はこれまでに3回拝聴しました。いずれもホテルオークラ京都においてです。
・ 2016年10月27日「南北朝鮮問題」
・ 2017年9月7日「中国の軍事戦略」
・ 2018年6月21日 「日米安保問題」

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 桜井氏は日本の中ではタカ派の論客として知られています。その語り口は非常に特徴的で、話を聞いている間にどんどん桜井氏の世界に引きずり込まれます。語り始める最初は、物静かで非常に女性的で色っぽい感じですが、話の途中で何段にもギアが入れ替ります。最後は絶叫するほどに同じフレーズを何度も繰り返し浴びせ、聴衆を興奮させます。

 桜井氏は日韓関係については強硬論者で、北朝鮮、中国に日本は貶められてしまうことを非常に強く憂えている様に見えますが、皆さんはどう思われますか



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