高齢期の投資戦略(その1)…リスク性金融商品の資産構成比率

 日経新聞2020.12.26日版に「運用資産高齢期に見直す」と題した記事が出ましたので、これを自分当てはめて考えてみました。

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 まず、ファイナンシャルプランナー(FP)のF氏は、高齢期の資産運用について次の様に助言しています。『60歳が近づいてくると老後のマネープランを具体的に考え始める人は少なくありません。その際に大切なのは自分が保有する金融資産の棚卸しです。必要な老後資金を見積もったうえで、どんな金融資産をどれくらい保有しているかを確認する必要があります。長寿化で老後が長くなっていることを踏まえると運用の継続が選択肢になりますが、リスク性資産は年齢とともに比率を引き下げていくのが無難です。』と述べています。

 そこで、まずは老後資金はどれくらい必要なのかを考えてみます。

 フィデリティ・インスティテュート退職・投資教育研究所が、2020年に会社員・公務員約1万人を対象に「公的年金以外に必要な退職後の生活資金総額」を聞いたところ、「1000万~2000万円未満」「2000万~3000万円未満」が合計で全体の6割を占めました。平均では2700万円弱となりました。もちろんこれは1つの目安で、実際にどれくらい必要かはケース・バイ・ケースです。夫婦二人での暮らしなら、世帯全体の支出入見通しに基づいて判断することが重要だとのことです。

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 まず収入については、公的年金でどれくらい生活費や医療・介護費などを賄えるかを確認しておく必要があります。一方、支出については、FPの高橋氏は、『高齢期の支出は現役世代に比べて減るのが一般的だが、余裕を持たせるため、支出は現役時代と同等に掛かるとみて計算したい』とアドバイスしています。また厚生労働省の簡易生命表によると4人に1人が男性は約90歳、女性は約95歳まで生きるため、夫婦なら95歳までの収支を考える方が無難だろうと言える様です。

 老後資金が不足する可能性が高いなら運用が一案となりそうです。不足しない場合でも、物価が将来上昇すると現金だけでは資産価値が実質的に目減りしかねません。インフレに備えるためには、株式など相対的に高いリターンを期待できる資産への投資も必用になりそうです。結局、老後にゆとりのある生活を送りたいのであれば、資産運用を行う必要がありそうです。

 以下、老後に資産運用を行うという前提で話を進めます。

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 FPのF氏は、『リスク性資産はどんな割合で持てばいいのでしょうか、という質問に対して、100から自分の年齢を引いた数値が上限の目安の1つになる』と指摘します。例えば60歳なら資産全体の40%を主に株式で運用する投信や株式などリスク性資産で運用し、60%を現預金や個人向け国債といった安全資産に振り向けます。運用の知識と経験があり、投資に意欲的な人はリスク性資産を目安より多く持つのも選択肢です。しかし主要国の金融緩和政策によるカネ余りを背景に株式相場が大きく動きやすくなっているためプラスしても5%程度にとどめておきたい」ということのようです。

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 FPのI氏は、『老後にリスク性資産を運用する際の手段としては投信を勧める専門家が多いと言います。株式・債券・不動産投資信託(REIT)などに分散投資するバランス型投信は株式型に比べてリスクを抑えられます。指数に連動するように運用するインデックス型は一般的に銘柄選択や投資手法などを独自に組み合わせるアクティブ型に比べコストが低く、長期運用に向くとされます。現預金や個人向け国債のほかに、主要国、新興国に幅広く投資する全世界株式インデックス型を1本保有するのが一案』と言われます。

 FPのT氏は、『慎重に考えたいのが毎月分配型投信と言います。国内公募の追加型株式投信(上場投資信託=ETFを除く)の純資産残高に占める毎月分配型のシェアは現在3割程度と、ピーク時の半分以下に縮小しています。ただし投資信託協会の2019年調査では、回答した投信保有者のうち60代は4割強、70代は5割強の人が毎月分配型を保有しています。定期的に分配金を受け取るため、年金を補う手段としてのニーズがなお強いとみられます。しかし毎月分配型は長期運用には向かないとされます。それは分配金を出すことで、運用益を元本に加えてさらにリターンを向上させる複利効果が薄れるからです。コストが比較的高い商品も多く、保有理由が定期的な現金収入を得たいというだけなら、見直し余地がある』と言います。一部のネット証券などでは投信を自動的に取り崩し、資金を振込む定期売却サービスを導入しています。こうしたサービスを利用するのも代替案になります。

キャピタルゲインかインカムゲインの選択

 2019年に金融庁が公表したレポートをきっかけに、「老後2,000万円」問題が議論となりました。超長寿命化を見据えた資産形成は誰もが避けて通れないテーマとなっています。現在、多くの人が取り組んでいる資産形成は、キャピタルゲイン(値上がり益)に比重を置いた投資だと思います。しかし、株式投資などで大きく成長する銘柄を見つけるのは難しいことです。もしそこで失敗したら「二度と投資はしたくない」という思いにもなりかねません。中長期の資産形成の大切さが認識されるにつれて、インカムゲイン(分配金や利子による収益)に着目した投資への関心が高まっていくと考えられます。

 いままで預貯金として寝かせてきたお金であれば、それを投資に振り向ける第一歩として、インカムに注目するのは1つの手です。J-REITはインカムゲインが期待できる金融商品の代表格です。現在のJ-REITの平均分配金利回りは約4%です。あくまで試算ですが、毎月21,900円を積み立て、年率4%で複利運用すれば、35年後には元利金トータルで2,000万円に届きます。さらに、この2,000万円をJ-REITで保有していれば、この資産がさらに利回り4%で年間80万円を生み出します。金融庁のレポートによれば、公的年金だけだと毎月5万円の赤字、つまり年間60万円が足りないと指摘されています。年間80万円の現金収入があれば、老後生活費の一部として、大きな足しになりそうです。

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 老後の資産運用は,他からの収入の途が無い中で行ないますので、慎重さが求められます。常に熟考してアクションを起こすことが求められると思いますが、皆さんはどう思われますか。



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