高齢期の投資戦略(その4)…投資信託の仕組みとリスクを検討する

投資信託の仕組み

 「投資信託(ファンド)」とは、一言でいえば「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。「集めた資金をどのような対象に投資するか」は、投資信託ごとの運用方針に基づき専門家が行います。

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 投資信託の運用成績は市場環境などによって変動します。投資信託の購入後に、投資信託の運用がうまくいって利益が得られることもあれば、運用がうまくいかず投資した額を下回って、損をすることもあります。このように、投資信託の運用によって生じた損益は、それぞれの投資額に応じてすべて投資家に帰属します。つまり、投資信託は元本が保証されている金融商品ではありません。この点は銀行の預金などとは違うところですので注意が必要です。

投資信託の大きなメリットはリスク軽減

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 投資の基本は、資産を株式、REIT、金に分けてリスクを分散させる「分散投資」です。個人の投資家が、自分だけで分散投資しようとすると、多くの資金が必要となりますが、投資信託は小口のお金を集めてひとつの大きな資金として運用するので、さまざまな資産に分
散投資し、リスクを軽減することが可能になります。投資信託は、このよう様な考え方から生まれた金融商品です。

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 投資信託と株の売買が決定的に異なるのは、投資信託は安全性が高いことです。それはなぜかを数学的にひも解いているのが、岡田正彦著「考える力がつくやさしい数学」です。次回のブログでそれを紹介します。





投資信託の種類

 投資信託は大きく分けるとインデックス型とアクティブ型に分けられます。運用成績が日経平均株価など指数の動きとほぼ同じになるように運用するインデックス型と、プロの運用者が個別に資産を選別し指数を上回る成績を目指すアクティブ(積極運用)型があります。国内に約6,000ある公募型投信のうちアクティブ型は9割近くを占め、運用成績や手数料はまちまちです。

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 アクティブ型はプロが個別企業を調査したうえで投資先を選ぶ手間をかけている分、信託報酬は一般的に高くなります。例えばインデックス型は信託報酬が年1%を下回ることが珍しくないのに対し、アクティブ型は1~2%程度の場合が多いようです。

 株式など金融商品の運用で価格変動はつきものですが、こうした価格変動リスクに対してどれだけ高いリターンを出したかを示す指標が「シャープレシオ」です。一定期間のリターンをリスクで割るなどして算出します。数値が高いほど、「リスクをうまくコントロールしながらリターンを出す運用効率が良かったことを示します」。例えばレオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」は1.14と分類平均の0.83を上回っています。

 また、相場が荒れた局面で理由や背景、今後の見通しなどを金融アドバイザーが示してくれるので投資信託は安心できます。

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投資信託の市場規模

 投資信託の市場規模が急速に拡大しています。公募投信の残高は2021年9月に初めて160兆円を超え、10年前に比べると3倍近い水準になりました。このうち金融政策の一環で上場投信(ETF)を購入してきた日銀の保有分が50兆円ほどを占めますが、急ピッチな市場拡大は日銀の購入だけでは説明できません。新型コロナウィルス禍を境に、20~30代の間で投資信託で資産形成を始める人が増えているのは心強い限りですません

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 一方、供給者である金融機関側に目を移すと、販売や運用の改善点は多いと言わざるをえません。日本の投資信託は長年、供給者の金融機関が自らの利益を優先し、手数料を稼ぐために投資信託を次々と顧客に乗り換えさせる「回転売買」が珍しくありませんでした。成績がいい投資信託ほど利益確定で解約が増え、長期に残高を増やす優良な投資信託が育ってこなかったと言えます。

 最近、金融庁が長期分散投資の重要性を強調してきた効果もあり、こうした短期売買はあまりみられなくなっています。しかし、はやりの投資テーマを冠した新商品に頼る販売方法は相変わらずです。そのため、金融機関は、優れた長期の運用実績をもつ既存投資信託を優先して販売する戦略に転換すべきだという声もあります。

 運用力の底上げも必要です。多くの投資信託の成績が市場の平均値を示す指数を安定的に超えられていないのは、各種の調査が示しています。投信運用各社は優秀なファンドマネージャーの育成を急ぐとともに、長期に指数を超える運用方法の開発に取り組んでほしいものです。

 ファンドの数が多すぎるのも問題です。公募投信は上場企業(約3900社)を上回る約5900本もあります。小規模投信の統廃合や償還を進め、米欧より割高な地数料の引き下げにつなげるべきです。約2千兆円の個人金融資産に占める投資信託の比率は4.5%で、10%前後に達する米欧との差は大きいと言えます。金融機関は投資信託を個人が安心して長期に資産を託せる金融商品に育て、「貯蓄から投資へ」の流れを後押ししてもらいたいものです。

株式投資信託の分配金

 投資信託資産を運用するときに気になるのが分配金です。長期の運用では利益は再投資に充てるのが鉄則ですが、年金生活者などが定期収入として分配金を受け取りたいという需要も根強いものがあります。私もこの考え方に同感です。足元ではこの数年振るわなかった「毎月分配型」で人気化する商品も出てきていますので、仕組みを理解した上で付き合い方を考えたいものです。

分配金は投信が運用する資産の中から投資家(投信の保有者)に払い出すお金のことです。その有無や金額については運用会社が決めます。分配金は投信の決算に合せて出すことができ、商品ごとに基本的方針があります。毎月、分配金を出す投信は毎月分配型と呼ばれ、老後資金で購入し、年金の感覚で分配金を受け取りたいというシニアは多いと言えます。

分配金提示型投資信託

 かつて国内の投資信託(投信)の主流は毎月分配型で、2011年には純資産ベースで7割を占めていました。しかし、運用成績の悪化などにより資金が流出しました。元本を取り崩して高水準の分配金を維持するといった手法への批判もあり、最近のシェアは20%台にまで下がっています。こうした環境下で最近、人気を集めているのが毎月分配金提示型の投資信託です。「予定分配金提示型」と呼ばれる商品です。日興リサーチセンターによると18年末時点で運用されていた予想分配金提示型は13本で、合計の純資産総額は4,556億円。それが21年5月にはそれぞれ49本、1兆9,876億円まで増加しています。

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 予想分配金提示型は投信の値段である基準価格の水準で分配金が決まります。例えば三井住友DSアセットマネジメントの「グローバルAIファンド(予想分配金提示型)」は、決算期末の前営業日の基準価格が1万円口あたり1万4,000円以上の場合、分配金は同500円。基準価格が下がると1万3,000円台では400円、1万2,000円台では300円と分配金は減ります。1万1,000円を割り込んだ場合は、基準価格の「水準などを勘案して決定」されます。2021年に入り分配金は500円が続いています。

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 この仕組み自体は目新しいものではなく、2012~13年に設定された商品もあるようです。最近の人気についてニッセイ基礎研究所のM氏は「債券など安定した運用での利回りが低下する中、株の値上がり益を分配金に反映する仕組みが投資家のニーズを捉えた」とみています。足元で人気の投信には国内外の株式、特に人工知能(AI)関連など成長期待の大きい銘柄で運用するものが目立ちます。この数年の株価の上昇で分配金が高水準になりやすく、投資家の支持を獲得した面もあるとみられます。

 もっとも、株式で運用する予想分配金提示型には注意点もあります。まず、株式相場が低迷すると基準価格が下がり、分配金が減る可能性が高まります。この数年、海外株で運用する投信は好成績が目立ちますが、今後も続く保証はありません。実際に2020年3月に株式相場が急落した局面では、一時的に分配金をゼロとする投信がありまた。かって毎月分配型の売れ筋だった先進国の債券を中心に運用する投信に比べ、値動きは大きくなりやすくなっています。

 信託報酬など保有にかかるコストも高めです。投信信託協会によりますと、2021年4月末時点の信託報酬率の平均(追加型株式投信)は1.04%。主に海外株で運用し指数を上回る成績を目指すアクティブ型の投信はそれより高くなる傾向があり、予想分配金提示型でも2%近いものが散見されています。追加型株式投信とは、当初募集期間、また運用開始後にかかわらず、いつでも購入可能な投資信託のことで、オープン型投資信託とよばれています。追加型投資信託に対し、当初募集期間のみしか購入できない投信のことを単位型投資信託と言います。

 老後資産を運用しながら毎月の収入を得るなら、証券会社の投信の定期売却サービスを使う手もあります。保有する投資信託のうち毎月決まった額(または割合)を解約するもので、インターネット証券や独立系運用会社が提供しています。毎月分配型の投信よりも安い費用で同様の効果を得られる場合があります。FPのI氏は、毎月分配型の仕組みを便利だと感じるのは理解できるとした上で「費用面などで不利になることが多い」と指摘します。多少の手間はかかるが「年に一度、自分で金額を決めて現金化するほうが、資金額を把握する機会にもなる」と話しています。

 投資信託では、投資家が負担する費用には、購入時にかかる販売手数料(1~3%)や保有中にかかる信託報酬(0.5~2%/年)そして解約時にかかる信託財産留保額(0.3%)があります。信託財産留保額は、投資信託を保有し続ける投資家に迷惑がかからないようにするための費用です。すなわち、解約して投資家に代金を支払うためには投資信託の中の資産を売却する必要があり、そのための手数料を負担しています。

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 現在の私の投資スタンスとしては、購入するのはリスクの小さい投資信託とし、その投資信託もポートフォリオの観点から、株式、金、RETEと分散させるのを基本に据えて今後やっていこうと考えています。ただ、投資信託はリスクが小さいので、資金を大きくしないと十分な益が出ません、これが500万円単位で運用する理由となります。また、投資信託は基本は長期投資にあるので、少々変動しても慌てないのが肝要です。下落時は短期回転を長期貯蓄に切り替えれば良いのです。皆さんはどう考えますか。



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