高齢期の投資戦略(その6)…澤上流長期投資の考え方

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 著名な投資家というと、ジョージ・ソロス、ジム・ロジャース、ウォーレン・バフェット等の名前がすぐに出てきます。その中で、最近ですが、ゴルフ仲間の川津氏からや岡三証券の寒河江氏から時を同じくして出てきたのが澤上篤人氏の名前です。

 澤上氏は、割安で放置されているバリュー株に的を絞った長期投資戦略を提唱しています。特徴的なのは、通常、ファンドマネージャーは複数のファンドを運用するのが一般的ですが、彼は「澤上ファンド」と呼ばれる1つのファンドを運用しているだけです。このファンドは純資産で3,400億円、顧客数11万6,000人を擁しています。20年に亘る平均利回りが5%ですので、頑張っていると言えます。

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 長期投資家は大きな流れを読み込んで、1つ1つ手を打って行く投資スタンスを取るようです。その根底には投資に対する独自の基本的考え方があるとのことで、今回はそれを確認します。2021年2月に発刊された「金融バブル崩壊」日経BPを参考にしています。

 澤上氏が掲げる長期投資戦略における基本スタンスの6項目は、以下になります。




第1:実体経済に視野を置く

 この投資スタンスは、「金融緩和と資金の大量供給によるカネあまりバブル株高からは一線を画し、ずっと実体経済を視野に置いた投資に徹しなさい」というものです。長期投資家は生活者にとってなくなっては困る企業を応援します。応援するという以上は、みなが売り逃げに走る暴落相場を断固として買いにいきます。そして、経済情勢や投資環境が好転し、みながガンガンに買い群がってきたら、応援対応をしばらく彼らにまかせて、こちらは少しずつ売り上がっていくのです。これは利益確定の売りであると同時に、次の応援買いのための現金づくりとなります。

 長期投資家は、この繰返しを淡々と続けていくだけのことです。その間に、「安く買っておいては、高くなるのを待って売る」の繰り返しで、投資リターンはどんどん積み上がってゆきます。

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第2:リスクのある銘柄の除外

 この投資スタンスは、「金融バブルがいつ崩れても平気でいられるように、投資対象からバブル崩壊リスクがあると思えるものはすべて外しておきなさい」というものです。その中には、債券バブル崩壊による長期金利の急上昇リスクも入っています。現在どれほど隆盛を誇っているビジネスでも、金利上昇の波には勝てないであろう業種は、すべて投資対象から外すのです。

 今で言えば、グロース株を外せとなります。その根拠は、成長産業は銀行から多くの融資を受けていますが、金利が上昇した際には、銀行へ支払う利息が会社にとって負担となり、こげつく可能性があるからです。

 少し、バリュー株投資とグロース株投資について説明します。バリュー株投資とは、割安に放置されている企業の株を買い、その価値が適正な価格まで戻るのを待つ投資スタイルです。一方のグロース株は「成長株」とも呼ばれ、社会構造の変化や革新の創造、高い技術力・ノウハウ、有益な特許などを背景に、景気動向には大きく影響されず、一定期間高い成長を期待できる株です。これにはIT、AIなど次世代の事業を担う、新興企業や成長企業に属する企業などが該当します。米国のナスダック、日本のジャスダックに上場する企業が多くなります。

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第3:自分なりのポートフォリオの構築

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 この投資スタンスは、「金融バブル大崩壊後の修羅場を経て、世の中が実体経済のへこたれることのない動きを再確認し、そういった流れを先読み先取りしたポートフォリオを構築しておきなさい」というものです。
 
 金融バブルが大崩壊し、われわれの投資対象銘柄の多くがV字型の株価上昇となるや、新聞などでは「バリュー投資の復活」と、盛んに書き立てられます。GAFAMやテスラなど急成長企業の株価が大崩れし、グロース株式投資熱が引っ込むのです。それを受けて、バリュー投資が騒がれるのです。投資なんてものは、安く買っておいて高くなったら売るだけのことです。安い時は相場暴落時などですが、いつ高くなるかはマーケットや投資家次第だから、それを待ってのんびりと長期で構えるのです。

 私の場合、株式投資信託、リート投資信託、金投資信託の3つに分けてポートフォリオを組んでいます。株式投資信託は、実体経済を確認するためであり、リートは配当益による儲けの実感を持つためであり、金は実体経済が崩壊した時の避難先として考えています。

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第4:基本方針に則った銘柄選択

 この投資スタンスは、「自分のまわりの人々の生活に、現在も、5年先10年先も欠かせないと思える企業の中から好きな会社を選び出しなさい」というものです。ずっと応援していくぞと、腹を固めた上で選ぶのです。もちろん、毎日の生活を通しての観察は欠かせません。本当にその企業が応援し続けるに値する企業であるかどうかは、常時チェックしていきます。その上で、株式市場の暴落を待つのです。株式市場なんて、年に3回~5回は暴落するものです。だから、そこを待って応援買いに入るのです。その時、「下値はどこまでだろうか」とか、「この下げは急だ、もっと下がるのでは」といった相場観を持ち出さないことです。これは絶対に守って下さい。それが長期投資の原点なのです。

 ちなみに、私はSDGs関連株、脱炭素関連株を選択しています。いずれも自分の専門分野の銘柄であり、将来の日本が掛かっている銘柄と判断しました。

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第5:売り時の見極め

 この投資スタンスは、「みなが売り叩いている間に安く買っておくと、どこで売っても利益になるし、次の応援局面での現金づくりもできる」というものです。これが長期投資で実に楽なものです。売り上がっていく段階で要注意なのは、やはり相場動向を気にしないことです。にわかに応援団がやたらと買いに来ている、ならば、「欲ボケの連中に後はまかそう」位の気持ちで十分です。ここで相場観を出してはいけません。「まだ、さらに高値がありそうだ」とやり出した瞬間、企業を応援するという意識はどこかえ消え去り、普通のゼニゲバ投資にすり替わってしまうのです。これは多くの個人投資家が陥る、見えざるワナです。よほど強く意識していないと、ついついさらなる値上がりを期待してしまいます。

 見えざるワナ、そう、相場を追いかけては、「もっと安値で買いたい」とか、「もっと高値で売れそう」といった欲を出してしまうことです。ひとたびこの欲が顔を出した瞬間、長期投資家のリズムも、ペースも消えてなくなってしまいます。

 売り時の見極めは本当に難しいと実感しています。基本的には今売ることによって最低限の利益は確保できていることですが、まだまだ価格が上昇するかも知れないと言う考えが出てきた時には売れません。また、売った後どうするのかもある程度決めていない事にはうることができません。澤上氏の言われる様におおらかに構えることは本当に難しいです。これも経験が解決してくれるのでしょうか?

 下図は、2020年9月~2021年7月にかけて保有した日本Jリートオープンで、売りタイミングを上手く見つけた時の判断資料です。保有期間中のイベントを眺めていると、売り場を示唆する兆候が見えます。売る直前には、イベントが目白押しで何となくもうそろそろ売り時かなと感じられたことを覚えています。

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第6:マーケット動向に対する立ち位置

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 この投資スタンスは、「長期投資家にとって、まだ生活者投資家にとっても絶対に欠かせないのは、マーケット動向とはつかず離れずの立ち位置を守ること、その上で、生活者にとって大事な企業を応援しているという意識を忘れないこと」というものです。そういった応援意識を大事にすればするほど、自分の長期投資リズムを崩さないで済みます。また、相場暴落時に「ここは応援しなければ」の買い仕込みも、平然とした顔で断行できるのです。

 世の多くの投資家たちは、「儲かりそうだ、損しそうだ」で汲々としています。一方、長期投資家は、ひたすら企業を応援していこうとしか考えません。だから、暴落相場を待ってましたとばかり、買い仕込みにいけるわけです。買う時は買う、売る時は売る。それも、相場動向など一切考慮しない。自分のペースで、ひたすら応援心を大事にして安いと思えば買いにいく。決して、相場全体の値動きなどは意識しないことが大切です。

 ここは応援するぞと思った段階で買いに行きます。そしてにわか応援団が雨後のタケノコのように出てきたら利益確定の売りに入る。このリズムを守ること、そして時間軸を長めに取ること、それが長期投資のすべてです。暴落相場を応援買いに入るのは一瞬ですが、ごく短時間の買い仕込み作業となります。

 一方、売り上がっていくのは上昇相場の熱気がかなり熱くなってきてからです。その時までには、半年かかることもあれば、2年3年の先となることもあります。長期投資家にとって大事なのは、相場動向などを無視してひたすら自分の応援投資をリズム良く、すこし長めの時間軸で実行していくことです。それが当たり前のようにできるようになると、長期投資は本当で楽でいいとつくづく思えてきます。

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 要は、自分の考えがマーケット動向に合致しているのかどうかが面白いのであって、他人の考えを確認したところで何も面白くありません。

 私も、基本的には澤上氏の推奨する長期投資で進めたいと考えていますが、実戦に入るとなかなか難しいものがあります。特に売り場を決めるのは本当に難しいですが、皆さんはどう思いますか。

 
 



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