証券口座の活用と税務処理について

 コロナ禍に見舞われた2020年以降、下図のように若年層を中心に投資を始める人が増えているそうです。株や投資信託などを購入するには、まず、金融機関で証券口座を開設する必要がありますが、どのような仕組みになっているのかを調べてみました。

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【証券口座の活用】

 証券口座とは、金融商品の売買や管理をするための口座で、証券会社のほか銀行、運用会社などで開設できます。日本証券業協会によると国内証券会社の個人の口座数は2021年6月末で約2800万です。銀行の預金口座は給与受け取りや公共料金の引き落とし、振り込みなど、お金のやり取りや管理が主な役割ですが、証券口座は現金のまま置かれることは少なく、証券の購入のために使用されます。

 証券口座を使い投資する場合、まずはATMなどで口座に入金します。そのお金で通常はマネー・リザーブ・ファンド(MRF)という換金しやすく安全性の高い投信を購入します。株や投信を購入する際はMRFを売却し代金に充て、反対に株などを売るとその代金は再びMRFになります。MRFというのは、証券会社における普通預金といっても差しさわりのない商品です。元本保証がされているわけではありませんが、原則として元本割れしないように極めて安全に運用されている投資信託(公社債投信)です。過去にも様々な急激な景気悪化などがありましたが、そうした中においても元本割れをしたことは一度もない商品となっています。

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 多くの証券会社では、口座を開設する際、MRFの取引口座も同時に開設することになります。この場合、証券会社に入金すると自動的にMRFを買い付けすることになります。買い付けされたMRFはすぐに現金化することができるようになっており、株式などを購入した場合はこのMRFの口座から自動的に引き落とされます。逆に、株式を売却した場合などは、その後自動的にMRFの買い付けが行われ、MRF口座に入金されます。

 MRFは投資信託の一種ですから、分配金が生じることになります。MRFの分配金は1ヶ月分がまとめて翌月に分配されます。分配金は自動的にMRFに対して再投資されますのでMRF残高が増えることになり、複利効果を得ることもできます。なお、気になる分配金の額についてですが、一般的には銀行の普通預金の金利よりも高くなっています。
 
 MRFを買う理由ですが、投資の待機中に利回りを確保するためです。MRFを活用しないと、振り込み手数料が発生して利回りが下がることになります。最近はインターネット証券を中心にMRFを使わないでMRFと同じ効果が得られるスイープサービスと呼ばれる仕組みもあります。この方法でも金融商品の売買をするときは提携銀行の預金口座から自動的に代金を移すことができます。

 証券口座で購入できる金融商品には、株や債券、投信、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などです。ただし、株やREITなどが購入できるのは証券会社のみです。それ以外の金融機関で開設すると、直接購入できるのは投信や国債などに限られます。

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 万一、金融機関が破綻したら株や投信はどうなるのでしょうか。銀行が破綻すると、一般の預金口座で保護されるのは元本1000万円とその利息までです。一方、証券口座で購入した金融商品などは金融機関の資産とは別に管理されています。そのため金融機関が経営破綻しても、購入した金融商品が返ってこないということは原則としてありません。

【金融商品の運用に関わる税務処理】

・ 総合課税と分離課税について

 金融商品の税務処理においては、次の2つに分けて対応する必要があります。

1. 株式の譲渡所得に対する税金…分離課税
2. 配当金所得に対する税金…総合課税

 そして我々納税義務者は、総合課税なのか分離課税なのかという区別の他に、源泉徴収なのか申告課税なのかという税金の納め方も考える必要があります。

 総合課税のイメージですが、総合課税では該当する所得をすべて足し算して、総合課税用の税率をかけることで税金を算出します。このように総合課税では「他の所得との損益通算」が認められていますので、もし株式投資に失敗して赤字を出しても、他の所得の黒字で埋め合わせることができます。

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 総合課税の税率は累進課税制度といって、所得の金額が上がるほど階段式に税率が高くなり、所得が4,000万円を超える人は税率がなんと45%にもなります。仮に仮想通貨(ビットコイン)で1億円利益が出ると控除も含めて40%の4,000万円前後は所得税で引かれて、10%前後が住民税で引かれるので手取りは約半分の5,000万円前後になります。総合課税のデメリットは、それぞれの所得が少なくても合計すると高額になった場合、すべて一律で税金が課せられる点です。年収500万円の人=所得がざっくり300万円の人は本来所得税が21万円前後(約7%)になるところ、上のビットコインが雑所得として発生した場合、給料部分も40%の120万円持っていかれます。

 分離課税のイメージですが、分離課税に分類される所得に対してそれぞれの所得に定められた税率をかけてそれぞれの税金を算出します。一部の所得に分離課税が導入されているのはそれぞれ理由があります。例えば株や投資信託の利益にかかってくる譲渡所得などは株式市場を活性化するために、利益が大きくなっても税率は固定化されています。

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・ 株式の譲渡所得に対する税金

 譲渡所得のうち、株式の売却による所得は分離課税により処理されますが、支払い方法は、申告分離課税か源泉分離課税のいずれかの方式によって課税されることになっています。原則的には、申告分離課税方式により課税されますが、上場株式の譲渡益については、源泉分離課税方式を選ぶこともできます。ただし、公開の日以前に取得した株を、公開の日以降1年以内に譲渡した場合には、源泉分離課税方式は選択できません。

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 分離課税だと、総合課税ではできた「他の所得との損益通算」が認められません。したがって、もし株式投資に失敗して赤字を出しても、他の所得の黒字で埋め合わせることができません。

 また、分離課税の税額は、総合課税のように原則的な所得税の税率によるのではなく、一律の税率によって算出されます。すなわち、申告分離課税方式では、株式の売却代金から、取得費や取得のための借入金の利子を差し引いた額に、一律15%の所得税と5%の住民税がかけられます。証券会社で特定口座で源泉分離課税方式とした場合には、売却代金の15%が所得税として、5%が住民税として源泉徴収されます。

 申告分離課税方式は、確定申告することが必要なのに対し、源泉分離課税方式は、20%が源泉徴収された段階で課税関係は完了するということです。申告分離課税方式では、株式売買で赤字を出せば、税金を納める必要はありませんが、源泉分離課税方式では、赤字かどうかに関係なく1%をとられます。しかし、源泉分離課税方式では、売買代金支払いの報告が税務署に回ることもなく、その他の手続きも簡単なことから、こちらを選ぶ人が多いと言われています。

・ 配当金所得に対する税金

 配当所得とは、株式などの配当や証券投資信託(公社債投資信託を除く)の収益分配に関わる所得をいいます。配当所得につきましては、その支払いの際に20%の源泉徴収が行われたうえで、総合課税の対象とされ、確定申告により源泉徴収分との清算が行われるのが原則です。ただし、公社債投資信託以外の証券投資信託については、20%の源泉分離課税(所得税15%、住民税5%)で課税関係が完了することになっています。

 株式等の配当のうち、1銘柄1回の支払いが5万円(年1回決算の場合は10万円)以下の少額配当所得については、確定申告なしで20%の源泉徴収だけですませることができます。

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【具体的事例】

 日本リートオープン投資信託の譲渡益に対しては、証券会社の一般口座で管理していたため、申告分離課税方式15%が適用され、確定申告を行い納税する必要がありました。一方、岡三証券での管理口座を一般口座から特定口座に変更すれば、源泉分離課税方式とすることができ、同じ税率の15%が掛けられ、そのデータを市役所へ連絡されることはありません。このことは、確定申告の場合は、譲渡所得分も考慮にいれて国民健康保険料が計算されるので、利益が出ているときは健康保険料が高目になることを意味しています。

 日本リートオープン投資信託の配当金については、1回当り配当金支払いが24869円なので、確定申告なしで20%の源泉徴収(所得税15%、住民税5%)だけですますことができます。しかし、総合所得扱いとすると、15%分については確定申告で処理した方が安くなるのでこちらを採用しました。一方、住民税の5%分は確定申告すると10%となるので、源泉徴収のままとしました。

 金融商品の税務処理では、譲渡益は分離課税、配当金は総合課税と異なる点、また、証券会社での管理口座が一般口座か特定口座であるかにより、税金が源泉徴収されるのか、確定申告により申告課税されるかの違いが出できます。なかなか面倒なものとなりますが皆さんどう思われますか。



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