高齢期の投資戦略(その14)…REIT投資信託市場の動きを読み取る

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 ポートフォリオとは、資産を運用する場合に、複数の資産を組み合わせて持つことで、できるだけ効率的に資産を運用することを考え、そのためには各種の資産の保有比率をどのように決めれば良いのか、といったことを分析することです。

 私自身は、金融商品への投資として、
(1) インデックスタイプの株式投資信託
(2) インデックスタイプの不動産投資信託であるJ-RETE
(3) 金投資信託
の3つを選びました。これら3つの商品は、それぞれの性格が異なるので、その時々の経済状態に合わせて適宜購入することでポートフォリオの効果を実現することを狙っています。

 今回は、3つの金融商品の1つREIT投資信託について、購入および売却タイミングについて検討してみたいと思います。

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 REITとは、投資家から集めた資金を不動産(オフィスビル、賃貸マンション、商業施設、ホテル等)に投資し、不動産から得た賃料収入や売却益などから不動産の維持・管理費用等を支払った後の収益を投資家に分配する仕組みの金融商品です。一般にREITは、利益の大部分を投資家に分配(配当)するなどの一定の要件を満たすことにより、法人課税が減免されるなどの税制面での優遇を受けられる仕組みになっています。また、株式の場合は多くが内部留保に回るため配当は少ないのですが、REITの場合は収益がそのまま配当に回されるので、この配当の多さがREITの特徴となっています。

 RETEでは売買手数料や管理費は実物の不動産に投資するより少ないことから、取組みやすい金融商品と言えます。初心者ならば、国内REIT全体に分散投資するREIT投信がバランスがとれていてです。純資産額が現在トップの大和アセットマネジメントの「ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)」などがあります。海外REITという選択肢もあります。国内REITの投資先はオフィスやホテルが大半ですが、海外ではインフラ、データセンター、森林などに投資するREITもあり「幅広く投資するのでリスク分散できる」として人気を集めています。

 REITの利回りは、キャピタルゲイン+配当-手数料-利子所得税20%で決まりますが、配当として月々確実に現金として受け取れるところに大きな魅力があります。後は、売却時に得られるキャピタルゲインがどれくらいになるかを楽しみにして待てるところが優れており、ベース金融商品として欠かすことができません。

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 いままで預貯金として寝かせてきたお金であれば、それを投資に振り向ける第一歩として、インカム(分配金)に注目するのは1つの手です。J-REITはインカムゲインが期待できる金融商品の代表格です。現在のJ-REITの平均分配金利回りは約4%です。あくまで試算ですが、毎月21,900円を積み立て、年率4%で複利運用すれば、35年後には元利金トータルで2,000万円に届きます。さらに、この2,000万円をJ-REITで保有していれば、この資産がさらに利回り4%で年間80万円を生み出します。金融庁のレポートによれば、公的年金だけだと毎月5万円の赤字、つまり年間60万円が足りないと指摘されています。年間80万円の現金収入があれば、老後生活費の一部として、大きな足しになりそうです。

 気を付けたいのが、分配金には2つの種類があることです。1つは運用によって得た利益の中から支払う普通分配金。もう1つが元本を取り崩して分配金に回す特別分配金(元本払戻金)です。仮に分配金が多くても、元本の取り崩しなら実質的な儲けはなく、むしろ手数料などを損しているといえます。

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 インフレ下ではモノの価値は上がる半面、お金の価値は下がる形になります。従って、現金を持っているよりモノ、すなわち、住宅で代表される不動産、金で代表される貴金属といった他の金融商品で持つ方が優位になりやすいと言えます。資産運用アドバイザーのB氏は年齢が上がればREITに一部資金を振り向けることを勧めています。「40代以降はインフレが長期化した場合のダメージを抑える必要がある」という理由からです。

 2020年3月には、新型コロナウィルスの感染者が世界的に増え続け、終息の兆しが見えないなか、実体経済への影響を警戒した売りが広まりました。そして日経平均株価は2020年3月末は、2月末と比べて2,225円安の18,909円と3年半ぶりの水準へと落ち込みました。すぐに23,000円台に戻しましたが、近いうちに必ず2番底19,000円台が来ると狙っていました。しかし、なかなか下げませんでした。しびれを切らして日経平均と同じ様な動きを示す日本Jリートオープンに目を付けました。

 2020年8月29日に、岡三証券の日本Jリートオープン(毎月分配型)に500万円投資しました。この商品は、マザーファンドの受益証券を主要投資対象とするファミリーファンド方式で運用が行われます。ファミリーファンド方式とは、投資家から投資された資金をベビーファンドとしてまとめ、その資金を主としてマザーファンドに投資することにより、実質的な運用をマザーファンドで行なう仕組みになっています。

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 マザーファンドは、下表に示します様に、日本ビルファンド投資法人・投資証券6.17%、ジャパンリアルエステイト投資法人・投資証券6.17%、日本プロロジスリート投資法人・投資証券5.25%、その他で構成されています。日本Jリートオープンは純資産総額155億円のREIT投資信託です。これは、マザーファンドとなっている投資証券は東京証券取引所第1部に上場されているリート証券であり、岡三アセットマネジメントが日本Jリートオープンという投資信託に仕立て上げ投資家を募集しているものです。

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 500万円の購入分の詳細は下記となります。

(1) 銘柄:日本Jリートオープン(毎月分配型)
(2) 購入額:500万円分
(3) 購入口数 832万口
(4) 配当 30円/口(インカムゲイン)
(5) 分配金 30円×832万口=24,960円/月  税引前
        =19,968円/月  20%税金
        =239,616円/年  
(6) 配当率 239.626円/500万円=4.8%
(7) 手数料で3%の145,208円かかるので、145,208円÷19,968円/月=7.3ケ月、少なくとも8ケ月間は保持しないと配当での益は出てきません。
(8) また本商品は配当額が30円/口と決められているので、不動産市況が落ち込んでいる時には、分配金の一部または全部が実質的に元本に食い込み、配当後の基準価格が配当前に比べ落ち込むことがあります。
(9) 後は売却時のキャピタルゲインを期待することになります。

 ここまでの成果を整理してみます。購入 2020.8.29 現在 2021.6.1 で9ケ月間が経過しています。

【インカムゲイン】
配当収入 24,869円×4ケ月=99,476円
     19,828円×5ケ月=99,090円    計 198,566円

 2021.1から配当金が減少した理由ですが、12月までは配当が元本を取り崩して支払われていましたが、1月からは収益から支払われることになり、20%の税金徴収が5,051円/月ずつ行われているためです。

【キャピタルゲイン】
購入時の約定価格  5,839円/万口
現在の価格     6,777円/万口
 (6,777円-5,839円)×832口=780,416円(含む税金16万円)

インカムゲイン+キャピタルゲイン=978,982円となり9ケ月間としては20%程度の利回りとなり、そこそこの成果を挙げていると思います。

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 上図は、2020.9.1~2021.5までの基準単価の変動を、日経新聞に掲載されたREIT関連の記事を併記したものです。色々な記事がありますが、やはり影響の大きい記事は
・ 外資系ファンドによるREITへの投資
・ 国内地銀によるREITへの再参入
ではないでしょうか。

 最終的には、2021年8月に日本Jリートオープンは売却しました。売却のタイミングの判断は正直言って非常に難しいものがありました。それはまだまだ値上がりするのではという期待を持っていたためでした。それでも、昨年暮れから年初にかけて3万円を目標に頑張っていた日経平均が、目標を達成した後は、29,000円から30,000円の間で停滞していました。これが近い将来上に行くことは考えられないと思われました。一方、日経平均に連動していた日本Jリートオープンの方も上昇の速度がのろくなりはじめ、そろそろ売り時だと感じるようになりました。そして、8月に入って売却を決断しました。結果的にはこれは好判断だと思います。

 2020年2月から金融商品への投資を35年ぶりに開始しました。今回の投資に際しては、
1. 高リスク商品は求めず、長期投資に徹する
2. 株式、REIT、金でポートフォリオを構築して投資を楽しむ
3. 配当収入をベースロードに置く
の3点を中心課題に置いて行うことにしていますが、皆さんどう思われますか。



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