FRBの金融政策とインフレ(その1)…FRBの発足と歴史

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 ニュースやマーケットレポートなどを見ていると「FRB」という略語が出てきます。FRBとはどんな組織なのでしょうか、今回は、経済について学ぶなら必ず知っておきたい「FRBについて、一から追跡します。


FRBとは

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 FRBとは、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の略称で、米国の中央銀行にあたります。FRBは金融政策の実施を通して、米国の雇用の最大化、物価の安定化、適切な長期金利水準の維持を実現し、その結果として米国経済を活性化することを目標としています。日本でいうと、日本銀行のような役割を果たす機関で、FRBは日本銀行と同じように独立した政府機関であると同時に、国民と議会に対して説明責任を負っています。

 FRBの動向は世界中で注目されています。それは、米国経済が世界経済の中心的存在であり、その米国経済を大きく動かすのがFRBであるからです。FRBが実施する金融政策はもちろん、アメリカの金融政策を決定するFRBの会合であるFOMC(Federal Open Market Committee(米連邦公開市場委員会))で話し合われた内容やFRB議長の発言は、世界経済を動かすことがあるほど、大きな力を持っています。

 ポール・ボルカー以降のFRBの歴代議長を下記に示します。
1976年~1987年   ポール・ボルカー
1987年~2006年   アラン・グリーンスパン
2006年~2014年   ベン・バーナンキ
2014年~2018年   ジャネット・イエレン
2018年~2022年現在 ジェローム・パウエル

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FRBの組織体系はどうなっているか

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 FRBという組織は、安全で柔軟な、安定した通貨・金融システムを国家に提供するという目的のもとに連邦議会によって創設されたFRS(Federal Reserve System(米連邦準備制度))という制度のもとに設置されました。歴史は古く、FRBの前身米連邦準備局は1913年に創設され、1935年に現在の名称FRBに変更されました。一方、FRSは、FRBと各地区の連邦準備銀行、FRS加盟銀行、FOMC、FAC(米連邦諮問委員会)によって構成される制度です。

 FRBは議長1人、副議長1人を含む理事7人で組織されています。FRBは理事会であり、銀行ではないため、実際にはこのFRBのもとで各地の連邦準備銀行が中央銀行業務を行い、米国の金融政策が実施されます。

 日本では、日本銀行が金融政策の決定から実施まで担当しますが、米国は連邦制のため地方分権の意識が強く、このような仕組みになっています。

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 FRBの会合であるFOMCは、通常は年8回開催(緊急時には随時開催)され、金融政策を決定しています。日本でいうと日銀の金融政策決定会合にあたるものです。FOMCでは、FRBの理事7人と、12地区の連邦準備銀行総裁(以下、連銀総裁)のうち5人が投票権を有しており、各地区の連銀総裁の5人の内訳としては、ニューヨーク連銀総裁を常任として、残り4人を他の地区連銀総裁から輪番制で選出されることになっています。なお、投票権を有していない他の連銀総裁もFOMCには出席し、議論に参加します。

 FRBが実施する主な金融政策の手段は、”割引率(公定歩合)の審査・決定”、”預金準備率の決定”、”公開市場操作”の3つであり、そのうち、政策金利(FF金利)の誘導目標をはじめとした公開市場操作の方針決定をFOMCが担当しています。

 余談ですが、FOMCに参加する理事・連銀総裁のなかで、政策金利の引き上げに積極的な人を「タカ派」、慎重な姿勢である人を「ハト派」と呼び、FOMCの実施に際しては、そういった各派の姿勢も今後の動向を予想するうえでは重要となることもあるので注目しておくとよいでしょう。

FRBによる金融政策とは

 ここまでFRBの概要などについて説明してきました。実際にはどんな金融政策を実施しているかを見てみます。FRBによる主な金融政策は、リーマンショック以降、以下のように実施されてきました。

<2008年9月 リーマンショック>
2008年11月 QE1(量的緩和)開始(米国では初)
2008年12月 ゼロ金利政策の実施
2010年11月 QE2開始
2012年9月  QE3開始
<2013年5月 バーナンキショック>
2014年10月 量的緩和政策終了
<2015年8月 チャイナショック>
2015年12月 ゼロ金利政策終了→政策金利引き上げ
<2020年3月 コロナショック>
2020年3月 QE4

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 上のグラフにあるようにFRBは量的緩和や政策金利の誘導等を通して米国経済の活性化を試みています。QE( Quantitative Easingとは量的緩和政策のことを言い、市中銀行が保有する国債を中央銀行が買い取る行為で、これを行うと債券価格は上昇するので、間接的には金利を引き下げることと同じです。米国の場合、これまで

QE1(2008年11月~2010年6月、1兆7250億ドル)
QE2(2010年11月~2011年6月、6000億ドル)
QE3(2012年9月、月額400億ドル)
QE4(2019年10月、月額600億ドル)

の4回実施されてきました。

バーナンキ・ショック

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 2013年5-6月に発生した、アメリカ合衆国の連邦準備制度理事会(FRB)の第14代議長を務めたベン・バーナンキ氏の発言を引き金とした世界的な金融市場の混乱(動揺)をいいます。具体的には、2013年5月22日に当時のバーナンキFRB議長が、今後、幾度かの会合を経て債券の購入ペースを徐々に減速することで量的緩和を縮小する可能性を示唆し、さらに2013年6月19日にFRBが今年中に債券の購入金額を減額し、2014年半ばに完全に終了する可能性があるという一段の踏み込んだ発言をしたことで世界的な流動性懸念が生じ、新興国の通貨や株式などから資金が流出し、市場に大きな動揺をもたらしたものです。当時、市場は、バーナンキFRB議長の発言を時期尚早と受け取り、新興国リスクを改めて認識し、特に「フラジャイル・ファイブ」と呼ばれた、財政赤字や経常赤字を抱え、GDP比で対外債務が比較的大きい新興国が狙い撃ちされました。

チャイナショック

 2000年代以降、飛躍的な経済成長を遂げ、2010年に米国に次ぐ世界第二位の経済大国となった中国が、景気失速懸念や政策変更、シャドーバンキング問題などから人民元の急落や中国株の急落などを招き、それが世界各国の金融市場に伝播して、為替相場の急変や株式相場の急落などの混乱を招いた事象の総称をいいます。現在、中国は、高度成長期が終焉し、ある程度の成長鈍化を容認しながら、構造改革を通じて持続可能な安定成長を目指す「ニューノーマル(新常態)」を進めていますが、一方で計画経済で先進国と比べて規制や介入などが多いため、時としてマーケット(市場)に歪みが生じ、相場が大きく動きやすくなっています。

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 2015年8月11日に、輸出部門のてこ入れと、価格設定における市場の役割拡大に向けた取り組みを強化した形で、中国人民銀行が人民元相場の20年ぶりの実質的な大幅切り下げに踏み切りました。また、8月13日まで3日連続で対ドル為替レートの基準値を引き下げたことで、夏季休暇明けの世界のマーケットは大混乱し、為替相場が急変しただけでなく、株式相場も急落しました。その後、人民元の切り下げがいったん収まり、マーケットに安堵感が漂ったのも束の間、8月18日に再び上海株が急落し、それをきっかけに8月26日まで世界の株式市場に株安が連鎖しました。

コロナショック

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 2020年のコロナショックは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に大流行したことにより起こった、グローバルな疾病面と経済面の複合危機をいいます。2020年3月から2021年3月までの一年間で全連銀の総資産が+2.4兆米ドル(約269.6兆円)となるほどの大規模な金融緩和を行い、米経済の回復を支えました。



 このように、FRBが実施する金融政策は米国経済を大きく動かします。米国経済の動向が世界経済に大きく影響を与えることに鑑みると、世界経済を理解するにはFRBについて理解することが不可欠です。今後は、FRBの動向にも注目しながら世界経済を眺めていくつもりですが、皆さんはどう思われますか。



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