コーヒーブレイク…大阪ソーダ開発医薬品精製用シリカゲルの概要

大阪ソーダ 松山に製造拠点新設のニュース

 日経新聞2023年2月2日版記事に大阪ソーダが2024年中に医薬品精製材料生産を松山に設けるという下記の記事が掲載されました。実は私の息子が液体クロマトグラフィー用シリカゲルの開発の中心メンバーで、開発の成功により社長表彰を受けたという話を聞き喜んでいたところ、新聞にこの関連の記事が出たという経緯です。

 『化学品製造業の大阪ソーダ(大阪市)は、愛媛県松山工場内に、医薬品精製用途で需要が拡大している液体クロマトグラフィー用シリカゲルの製造拠点を新設します。投資額は約30億円で、2024年中に完成予定で、2023年2月1日に県、松山市との立地協定書に調印しました。

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 同社によると、液体クロマトグラフィー用シリカゲルは、医薬品の不純物を取り除く精製の工程などで使われます。ヘルスケア事業の主力製品で、世界市場シェアは約6割でトップです。近年世界的な人口増や健康寿命の延伸により、糖尿病治療薬などの精製用途で需要が拡大しています。

 同製品は現在、同社の尼崎工場で生産しており、松山に拠点を開くことで、事業拡大を見据えるほか、災害などに備える事業継続計画(BCP)の観点で生産拠点の分散を図ります。松山工場の敷地内にある医薬関連製品に特化した子会社サンヨーファイン松山工場に建設中の医薬品関連の新製造設備を含め、新たに数十人規模の雇用を見込みます。

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 2023年2月1日は県庁で協定書の調印式がありました。寺田健志社長は「長年、県や松山市と顔の見える関係性を構築しており、熱意のある誘致を受けて(松山への立地を)決めた。事業を通じて、さらに地域経済への貢献を果たしたい」と述べました。県と松山市は今後、投資額や雇用人数に応じ、企業立地に関する優遇制度で支援する方針です。中村時弘知事は「大型の投資で、さらに成長が見込まれる分野。バックアップし、飛躍と次なる投資に結びつくことを期待する」と語りました。野志克仁市長は「複数の候補地から松山を選んでもらった。雇用の創出や税収につながり、ありがたい」としました。

 同社によると、松山工場は1952年9月に創業を始め、現在はカセイソーダのほか、特殊合成ゴムや合成樹脂などを生産、サンヨーファイン松山工場では、医薬品の原薬や中間体を製造しているとのことです。大阪ソーダ松山工場の従業員数は子会社を含めて約170人です。

液体クロマトグラフィーの原理

クロマトグラフィーは混合試料を成分ごとに分離する技術です。もともとは分離した成分を回収 (分取・精製)することが目的でしたが、装置として完成された現在は分離された成分の定量を目的として使用することが多くなっています。

「クロマトグラフィー」の名付け親は、ロシアの植物学者であるTswettです。彼はガラス管に炭酸カルシウムの粉末を充填したカラムに植物抽出液を通し、石油エーテルを流すと図1のように色素が分離されてくることを示しました。そしてこの分析法を、「色」と「描く」を意味するギリシャ語の「chroma」と「graphos」から「Chromatographie」と命名しました。

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             図1  Tswettによる実験の模式図

 「クロマトグラフィー」は分離する方法を示します。似たような言葉ですが、分析する装置のことを「クロマトグラフ」、分離の結果として得られる信号強度の時間変化を記録したチャートを「クロマトグラム」とよんで区別します。

 クロマトグラフィーでは試料を分離するために移動相・固定相とよばれる媒体が必要で、その状態により表1のように分類されます。

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 GCもLCも分離・定量という使用目的は同じですが、分離する際の試料の状態が異なるため測定対象が異なります。ここで固定相とは一般的にカラム(充填剤)、移動相とは試料をカラムに流し込む媒体のことを指し、LCでは移動相を溶離液とよんでいます。「固定相が液体?」は理解しにくいかもしれませんが、シリカゲルなどの担体の表面に液層がコーティングあるいは化学的に結合されていて、ガスや溶媒を流してもはがれにくい状態になっていると考えてください。

カラムの中で試料成分はどのように分離されるのでしょうか?

 試料成分が移動する速さは、試料成分が固定相・移動相のどちらに親和性を持っているかで決まります。親和性には吸着・分配・イオン交換などさまざまな作用が考えられます。図2に示すように、固定相より移動相に親和性が高い成分の移動速度は速くなり、固定相の方に親和性が高ければカラムからの溶出が遅れます。カラムから溶出する順序や分離の度合いは固定相と移動相の選択で変わります。

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                図2 分離の模式図

 クロマトグラフィーの原則は「測定条件が同じであれば、各成分がカラムに注入されてから溶出するまでの時間は変らない」ことで、この特性を利用して定性・定量を行っています。

液体クロマトグラフィー用シリカゲル

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 液体クロマトグラフィー用シリカゲルは、医薬品をはじめ、化粧品、機能性食品などの分析や分取精製に使用される機能性分離材料です。 高性能な球型シリカゲルや、その表面に独自の化学修飾を施した修飾型シリカゲルを徹底した品質管理の下に製造されています。

 シリカゲル(silica gel)は、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)の水溶液を放置することによって生じる酸成分の加水分解で得られるケイ酸ゲルを脱水・乾燥して製造される物質です。組成式はSiO2・nH2O、CAS登録番号は7631-86-9です。

 シリカゲルは多孔質であるため、単位体積当たりの表面積が広く、付近の物質を吸着し易い性質を持ちます。この性質を利用して、水の吸着剤や、液体クロマトグラフィなどのカラムの中身や、触媒の担体などとして使用するほか、下記に示すような安全性を根拠として、包装用乾燥剤として一般的に流布しています。

 シリカゲルには水を吸着し易い性質があるため、乾燥剤として広く使用されています。元来のシリカゲルは無色半透明であるものの、乾燥剤として用いるシリカゲルには、しばしば水の指示薬として塩化コバルト(II)を添加した物が利用されます。塩化コバルトを添加したシリカゲルは、水の吸着量が少なく水の吸着力が充分な時は青色を呈し、水の吸着量が増えて水の吸着力が低くなると淡桃色を呈します。乾燥剤としてのシリカゲルは、電子レンジあるいはフライパンなどで加熱することにより、細孔内部の水分を蒸発させることが可能であるため、この加熱処理により再利用が可能となります。塩化コバルトが添加されたシリカゲルは、淡桃色から青色へと戻ります。

 シリカゲルはカラムクロマトグラフィーの担体としても利用されます。この場合はケイ酸末端が Si=O ではなく Si(OH)2 となるように処理されています。疎水性基で化学修飾した逆相担体や、化学修飾担体の製品も製造されています。

 大阪ソーダでは液体クロマトグラフィー用シリカゲルを生産している会社です。シリカゲルは一般的な材料ですが、糖尿病治療薬の精製時に、特定の不純物をどの様に除去するのかが大阪ソーダのノウハウとなっているようです。皆さんはどう思われますか。



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