未来を担う技術革新(その15)…生成AIを支える先端半導体GPUの凄さ

 人工知能AIが様々な分野で活用され、人間の生活を劇的に変えようとしています。そのAIの開発で欠かせないのが、「GPU(画像処理半導体)」です。膨大なデータを効率的に処理できるため、AIに事例などを覚えさせる段階で能力を発揮します。縁の下の力持ちであるGPUとはどのような半導体なのか調べてみました。

GPUで大量のデータ学習

 GPUは米半導体大手のエヌビディアが発明した演算用の半導体です。もともとはゲームなどの映像を高速に処理し、なめらかに表示するために使われました。膨大なデータを処理する特長がAI開発者に注目され、AIの深層学習に使われるようになりました。

 半導体は回路線の線が細いほど性能が高いと言えます。国内半導体メーカーの技術は現時点で40ナノメートル(ナノは10億分の1)程度ですが、最先端のGPUは4ナノメートルです。GPUは頭脳にあたる「コア」と呼ぶ部品を多く持つのが特徴で、大量の仕事を各コアが分担してできています。

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 同じ演算用半導体CPU(中央演算処理装置)と比較してみます。GPUは例えるならば、たくさんのスクーターです。ピザ配達など軽い荷物を手分けして運び、複数の顧客へ一気に届けられます。一方のCPUはトラックです。性能が高いので重い冷蔵庫などを一度に乗せられますが、顧客を順番に回るため時間がかかります。

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 電子製品は半導体無しには成り立たず、そのため半導体は産業のコメと呼ばれます。2000年代にかけてはパソコンに使うCPUの引き合いが強まり、米インテルなどが台頭しました。2010年代にスマートフォンが普及すると米クアルコムなどが業績を伸ばしました。足元ではGPUをもつ米エヌビディアの存在感が強くなっています。同社の株価は10年で100倍に伸びましだ。

 米テック大手は生成AIの開発を競っています。賢いAIをつくるにはたくさんのGPUが必要で、メタなどはGPUの調達に力を入れています。AIの覇権争いの裏側で、GPUの調達競争も熱を帯びています。

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GPUはいつ生まれたのか

 1999年にエヌビディアが画像処理用の半導体をGPUと命名し、業界で定着しました。エヌビディアはアメリカ合衆国カリフォルニアサンタクララにある半導体メーカーです。半導体の中でも特にCPUを汎用計算用途に拡張したGPGPUの設計に特化しています。2000年初頭から膨大なデータの処理に応用され始め、2010年には当時最速のスーパーコンビュータに搭載されました。その後AIの学習に使われるようになりました。開発当初は「1秒で最低1000万のCG処理能力」と宣伝されたが、現在の処理能力は70億以上に高まっています。

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GPUの世界シェアは

 英調査会社オムディアによりますと、AI向けのGPUのシェアは直近でエヌビディアが約8割を占め、米AMDが2割程度です。エヌビディアは大規模生産ができるため性能の割に値段が安いとされています。AIの学習でGPUの性能を十分に発揮するには専門のソフトウェアが必要です。エヌビディアはソフトウェアを豊富に持ち、しかもそれらを無料で開発者に提供しています。

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課題は何か

 消費電力が大きいことです。計算用の半導体は、高度で大規模な処理をするほど消費電力が大きくなります。発熱した本体を冷やすための電力も必要です。科学技術振興機構の2022年時点の試算では、AI市場の拡大により世界のデータセンターの消費電力は2030年時点で6700億キロワット時と、2018年比で約4倍に急増します。消費量が増えればエネルギーの安定供給や脱炭素にも影響しかねません。

SBGとの関係は

 SBGは2016年に320億ドル(約3兆6000億円)でアームを買収しました。エヌビディアとはアーム売却の対価として100億ドル超の現金に加え、エヌビディア株最大約8%を取得する契約を結んでいました。取得総額は当時の株価に換算して約400億ドルです。SB Gは差し引き1兆円規模のリターンを得るはずでした。

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 アーム売却の頓挫はSBGの成長戦略に響きます。SBGは自己資金を活用した投資を加速しており、アーム売却は優先度が高い施策でした。対価として得た現金を新興企業に振り向けるとともに、エヌビディアとアーム連合によって最先端の半導体の一大勢力も生まれます。

 SBGにとってアームのエヌビディアへの売却は、「AI(人工知能)革命」に弾みを付ける戦略だったのですが、修正を迫られることになりました。皆さんどう思われますか。



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