コーヒーブレーク…インボイス登録の進まない小規模企業
インボイス制度の登録状況を示した日経新聞2023年6月27日掲載の記事を紹介します。
インボイス制度の10月の導入にあたり、初めて消費税を納めることになる免税事業者の準備が道半ばです。約500万の事業者のうち、インボイスを発行できるよう登録したのは1割でした。インボイスは納める消費税額の差し引きに必要になります。混乱を招かない対策が重要になります。
課税事業者は8割完了
インボイスは請求書の一種です。2019年10月の消費税引き上げで、食品などに適用する軽減税率8%と、通常の10%の2つの税率となったため導入が決まりました。インボイスでどちらの税率の取引かを明確にすることで、商品やサービスの買い手から受け取った消費税を納める際に、既に仕入れ業者に支払った消費税の分を差し引くことができます。
取引先がインボイスを発行できないとその分は差し引くことができませんので、納税額が増える可能性があります。発行に必要な登録をしていない個人事業主やフリーランスは取引を避けられる懸念が出ています。売上高が1000万円以下のため消費税を納めていない500万ほどの免税事業者の対応が特に課題となっています。
国税庁によりますと2023年5月末時点でインボイスの発行事業者として登録を済ませたのは約66万でした。納税義務がある300万ほどの課税事業者は全体の8割を超える250万程度が登録しています。登録はあくまで任意です。政府は当初、制度開始に間に合わせるには23年末までに申請する必要があるとしていました。登録の遅れを受け、期限を9月末までに延ばしました。政府は免税事業者の懸念を受け、インボイスの発行を登録した場合も3年間は納税額を売上時に受け取った消費税の2割とする経過措置を設けました。消費税の計算の手間を省けるとしています。
免税事業者の登録か進まない要因
それでも免税事業者の登録が進まない要因が5つ浮かんできています。
1. まず免税事業者の取引の6割ほどが一般消費者を対象とする点です。販売先が個人の場合、消費税を差し引きするケースは少なく、インボイスの発行を求められません。
2. 2つ目として売上高5,000万円以下の簡易課税事業者にはインボイスがなくても支払った消費税額を控除できる仕組みが整っていることです。こうした事業者との取引が大半なら、インボイス登録の動機は薄れます。
3. 3つ目は、免税事業者との取引の場合、経過措置として29年9月末まで消費税を一定額差し引けるようにしていることです。取引先がすぐにインボイスを求めていないと言った理由で登録判断を先延ばしているとの見方があります。
4. 4つ目は、免税事業者である100万ほどの農業者との取引では条件次第でインボイスなしでも消費税額の差し引きができる制度の存在が4番目の理由です。
5. 最後の理由は、取引先の求めに応じて免税事業者がインボイス発行できるようにすると、消費税の納付義務が生じ、経費と事務作業の負担が増すことです。
それまで払っていなかった消費税を払いながらも利益を維持するには、商品やサービスの価格に消費税分を上乗せする必要があります。日本商工会議所は「取引先との関係によっては価格転嫁できない事例が出てくる」との懸念を示しています。
財務省はインボイス制度によって160万の免税事業者がインボイスを発行する「課税事業者」となり、消費税収が年2500億円ほど増えるとの試算を示しています。制度の導入により、現在の免税事業者の負担が増え経営が厳しくなったり、事業者間でトラブルが生じたりすることも予想されます。財務省は不利益が生じないように法令に基づき適切に対処する方針で、相談体制の拡充などが求められています。
小規模事業者である(有)クレバープラニングの場合
㈱大京穴吹不動産から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関し、(有)クレバープラニングがインボイス制度に登録しているかどうかの問い合わせがありました。また、旭化成不動産レジデンス㈱からも伊藤幸生個人に対し、インボイス制度に登録しているかどうかの問い合わせがありました。
インボイス制度は8%か10%の税率の取引かを明確にすることで、商品やサービスの買い手から受け取った消費税を納める際に、既に仕入れ業者に払った消費税の分を差し引く制度です。免税事業者からの分が10件あったとすると、消費税納入時に10件分は差し引けないから、余分に支払うことになってしまいます。
これまで㈱大京穴吹不動産は、免税事業者である(有)クレバープラニングの売上に対しては10%の税率とみなして消費税を算出し、仕入れ分の消費税を控除していました。従って、今後免税業者の分は消費税なしということになるので、㈱大京穴吹不動産は控除分が小さくなり、より多くの消費税を支払うことになります。企業が免税業者から仕入れたものについては、免税業者のインボイスがないと消費税の負担を免れないわけです。
因みに、小規模事業者である(有)クレバープラニングは、下記の制約のなかで会社の運営を行っている会社で免税事業者です。
1. 法人事業所(株式会社、有限会社など)は、厚生年金保険・健康保険の加入が法律で義務付けられています。
2. (有)クレバープラニングの場合
① 役員(社長:伸子、取締役:幸生)の2人以外には従業員はおらず、
② 2人とも報酬なしということで、厚生年金保険・健康保険には加入していません。
結論として、塾運営とコンサルタント業を進める小規模事業者である(有)クレバープラニングは、個人の消費者が多いこと、仕入れ分も少ないことからインボイス制度への登録をしないことを選択しました。皆さんはどう思われますか。