為替問題と貿易事業(その8)…外国為替証拠金取引(FX)の仕組みを理解する

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 近頃、テレビや雑誌の特集、あるいはブログやSNSで「カリスマFXトレーダー」と呼ばれる人たちが登場し、注目を集めています。彼らの多くはサラリーマンや主婦、なかには専業の個人投資家として独立を果たしたというケースもあります。儲け度合いもハンパではなく、億単位というケースもあるほどです。このFX(外国為替証拠金取引)のどこにその様な魅力があるのかを今回調べてみました。



FXの基本的仕組みとは?

 例えば、1米ドルが100円の時に米ドルを買い、110円になった時点で売ってしまえば、1米ドルあたり10円の値幅となります。こういった相場の上昇局面で利益を取るには、外貨を買う「買い取引(ロング)」で取引に入り、反対に1米ドルが100円から90円台に下落するという流れなら、逆に外貨を売る「売り取引(ショート)」を選ぶのです。そして、取引に入った後、予想と同じ方向に為替が動くと「含み益(未決済の利益)」、逆の方向だと「含み損(未決済の損失)」が発生し、「買い取引であれば売り取引」というように、決済(反対売買)をしたら損益が確定します。

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株や外貨預金との違いは?

外貨を取引する金融商品では、銀行などが扱う「外貨預金」もありますが、こちらも、米ドルの定期預金であれば、為替が円安にならないと差益は生まれず、かつ、約束の利息を得るには満期まで待つ必要があります。ところが、FXで付与される金利相当の「スワップポイント」は、1円単位なので、期日を気にしないで外貨を売却することができます。

FX取引の手数料とは?

 また、外貨預金には為替手数料、FXには「スプレッド」という取引コストが発生しますが、米ドルの外貨預金だと「ドル当り1円ほど。FXは1銭以下なので、その差は100分の1にもなるのです。」

FX最大の特徴“レバレッジ”とは?

 FXを取引するには、元手となる資金=「証拠金」をFX会社に預けます。では、一体どれくらいの額の証拠金が必要かというと、基本的には最低取引単位の4%程度です。仮に1,000通貨から取引できるFX会社で米ドルを扱うとすれば、1米ドル=100円のレートなら4,000~5,000円ということになります。このように、預けた預金以上に通貨を売買できる仕組みを「レバレッジ」と呼びます。外貨預金の場合、買い付ける分だけの金額が必要で、1米ドル=100円のレートで1,000通貨(1,000米ドル)を保有するには10万円が必要ということです。対してFXは、「最大25倍のレバレッジ」を効かせられるので、証拠金は25分の1である、4%程度の4,000円で済むのです。すなわち、同じ資金で外貨取引をするなら、外貨預金よりFXの方が、断然資金効率は良くなります。

 但し、レバレッジは常に25倍である必要はありません。高いレバレッジで取引すると、損失が発生した時に証拠金に与えるダメージが大きく、その後の挽回が大変になることもあります。そういった事態を避けるため、基本的には2~5倍以下とします。ここぞというチャンスの時でも10倍程度に抑えるのが取引を長続きさせるコツです。

 結局、FXは2つの通貨の間の投機的売買、信用取引の一種だと言えます。外貨預金は2つの通貨についての貯蓄です。貿易会社は、為替予約の他にFXを使うこともあります。

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いろんな通貨を取引できるのもFXの強み

 FXで取引する通貨の組合せを「通貨ペア」と呼びます。世界にはたくさんの国があり、政府(各国中央銀行)が発行する通貨もたくさんあります。アメリカの米ドル、欧州のユーロ、イギリスのボンドといった、いわゆる先進国の通貨であり、実需・投機ともに多く取引される「主要通貨」、オーストラリア豪ドル、カナダのカナダドルなど、資源が豊富とされる国々の「資源国通貨」、ニュージランドのNZドル、トルコリラ、南アフリカのランドをはじめとする「高金利通貨」などがあります。

 「ユーロ/米ドル」「ポンド/米ドル」「米ドル/日本円」といった対米ドルの通貨ペアは「ドルストレート」と呼ばれています。また、「ユーロ/円」「ポンド/円」など、米ドル/円以外で対円通貨だと「クロス円」と呼ばれています。

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FXで得られる“ふたつの”収益

 為替差益…為替差益が第一の利益と考えられます。FXには、取引する通貨ペアの交換レートの変化で利益を狙う「為替差益」が収益源になります。今後の相場が上昇・下落のどちらに動くか予測して「買い取引」もしくは「売り取引」のどちらを選ぶのかが、FXで儲けるためのカギです。

スワップ金利…FXには、高金利の通貨を持つことで利息のような収入を受け取れる「スワップポイント(スワップ金利)」という仕組みがあります。これは、売買する2国間の金利差で得られる利益のことで、1日単位で発生するというもの。価格の変化に関係なく、低金利通貨を売り、高金利通貨を買って保有していればもらえるので、長期で持てば持つほど利息が受け取れるというメリットもあります。但し、逆に高金利通貨を売って、低金利通貨を買うと、スワップポイントを毎日支払う必要があるので注意が必要です。

 FXの最たる収益源は、為替差益ですが、売買する2国間の金利益で得られる「スワップポイント」も、もう1つの魅力です。2016年現在、日本円は空前の低金利です。よって日本円を売って、より金利の高い外貨を買っておけば、その金利差分のスワップポイントを受け取れます。例えば、米ドル/円を買い取引で持っておれば、10,000通貨当たり1日約10円(必要証拠金約4万円),豪ドル/円の買い取引きであれば円約50円(必要証拠金約3万円)が付与されます。1年間-保有し続けると18,250円となります。

 但し、注意したいのは、スワップポイントを受け取るには、1日以上通貨を保有するのが条件で、1日以内に決済してしまうとカウントされません。

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FXと切っても切れないリスクとは?

① 為替変動リスク…必ずしも、予想通りに為替相場が動くとは限りません。短期間で急激に動くこともあり、証拠金が一気に減ってしまうこともあります。
② 流動性リスク…マイナー通貨になればなるほど、流動性に乏しく、買いたい時・売りたい時に約定(注文が成立)しないといったこともでてきます。
③ 金利変動リスク…各国通貨の金利が変わると、それに伴い為替相場が大きく動くと言うのは、よくある話です。時にはスワップポイントを支払う事態にもなります。

具体的な手続きは?

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Step1. FX取引事業者を選びます。
   口座を開いて証拠金を預けないことには取引は始められません。その際、押えるべき基本的ポイントは、
(1) 手数料(スプレッド)はどのくらいか
(2) 通貨ペアの取引単位
(3) 通貨ペアの数
(4) スワップポイントの水準

手数料
 最も重要なのは、手数料(スプレッド)で、売値と買値に差があり、これが実質的な取引コストに相当します。この水準は各社で異なり、通貨ペアによっても違うのが一般的です。安いほど取引に入った後に、利益が出やすくなり有利です。米ドル/円であれば、0.3銭が最安値の目安で、これを基準にFX会社を選びます。

通貨ペアの取引単位
これも重要で、一般的なFX会社は10,000通貨ですが、最近は1,000通貨から取引できる事業者も増えてきました。取引単位が1,000通貨だと証拠金は
1米ドル=100円の場合、1,000米$=1,000$×100円=100,000円で、これの4%が証拠金なので4,000円~5,000円となります。

Step2. 口座開設

Step3. 口座に資金を入金
   「どのくらい証拠金を預けておけばいいのか?」ということですが、「余裕資金の範囲内で、多目に入れておくこと」となります。

 FXでは最低取引単位に対して定められた証拠金以上の資金を取引事業者の口座に入金しないと取引はできません。現在、個人取引では最大レバレッジが25倍ですから、最低取引単位の25分の1、すなわち1米ドル=100円の場合、1,000通貨の取引ならば4,000~5,000円、10,000通貨の取引であれば4万~5万ということになります。但し、この場合、トレードを始めた時点で証拠金のレベルは、ギリギリ=レバレッジ25倍の水準になり、儲けている時は問題ありませんが、25倍を超えたら強制的にロスカットされてしまいます。最大レバレッジ25倍ギリギリの取引は、綱渡りのようなものです。レバレッジを下げた方が安全・安心にFXを楽しめますので、できれば2~3倍の水準になるくらいの証拠金を入れておくことが良いでしょう。

 レバレッジを効かせることにより、証拠金の最大25倍の取引ができれば、効果的に利益を増やせるのがFX最大のメリットです。例えば、1米ドル=100円の時、10,000米ドル=100万円を買い付けたとします(買い取りでエントリー)。仮に口座に入っている証拠金が10万円であれば、10万円の資金で100万円の取引をするわけですから、レバレッジは10倍です。その後、米ドル/円のレートが、1米ドル=101円と円安ドル高にシフトすれば、10,000米ドルを円換算すると 101円×10,000米$=101万円。ここで取引を終えると10,000円の利益となります。同じ10万円の資金で20,000米ドルを買い付けると、レバレッジは20倍になりますが、利益を2万円に倍増させることは可能です。

 付加されるタイミングもFX会社で異なり、週末や海外の祝日を挟むと、数日分がまとめて付くことも。口座に即時反映させるFX会社もあれば、含み益として扱われ、決済時に確定損益になるケースもあります。また、高金利通貨を持てば付与されても、逆の場合は支払わないといけません。

Step4. 取引スタート
 株なら取引時間は平日15時までなので、ビジネスマンにとって不利な面もあります。FXなら24時間取引できるので、出勤前や昼休み、帰宅後などいつでもOKです。こういった利便性の高さとハードルの低さが、FXトレーダーが誕生する背景になっているようです。

 因みに、2023年10月17日の日経新聞にFXに関して次の様な記事が掲載されました。

FX取引、最高の8957兆円。1~9月の個人、円安進み収益期待

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 「個人投資家による外国為替証拠金(FX)の売買が膨らんでいる。2023年1~9月期の取引額は8957兆円と同期間として過去最大になった。2022年以降に大幅な円安が進むなど相場変動が大きくなる中で売買が盛り上がった。足元では円高を見込んだ取引が拡大する。円安水準が続けば持ち高解消で値動きが大きくなるとの見方もある。

 金融先物取引業協会が10月16日に発表した店頭FX月次速報によると、1~9月の取引額は2022年の8698兆円を上回り、統計れる2009年以降で最大だった。米国など海外の金利上昇を背景に大きく円安・ドル高が進む中、収益機会が増したとみた個人投資家の取引が活発になっている。

 FX取引は2つの通貨の先行きを予想して取引する。投資家はFX会社に預ける「証拠金」の数倍の売買ができるレバレッジ(てこ)の仕組みを使える。元本以上の金額を取引できるため、高いリスクを好む投資家から根強い人気を集める。

 顧客から注文を受けるFX会社は自社の顧客同士で取引が成立しなかった場合、注文を銀行につなぐ。その注文の一部は銀行間で取引され、グローバルな為替相場に影響を与える。

 日銀の調査によると、2022年4月の国内の外国為替取引のうち約17.9%が個人関連で市場での存在感は大きい。同時期に国際決済銀行(BIS)が実施した調査では世界の為替取引のうち、個人投資家の取引は全体の4.5%にとどまった。日本では2000年代以降にFX会社の設立が相次いだ。競争激化で各社が顧客に提示する売値と買値の幅が縮小した。コストの低下を受け高頻度で売買を繰り返す手法が活発になっている。

 円相場が1ドル=150円付近で推移する中、FX取引を手掛ける個人投資家の間では円高・ドル安を見込んだ取引に傾く。QUICKが算出した店頭FX5社取引状況をみると、円買い・ドル売りの持ち高は10月13日時点で57%にのぼる。

 もっとも日米金利差が大きく開いているため、円安・ドル高が緩やかに進みやすいとの声が多い。個人が円買い・ドル売りのポジションを解消した場合、市場には円売り・ドル買い圧力がかかり、円安に弾みがつく。FX取引の膨張が為替相場の値動きを激しくさせるとの指摘もある。」

 以上紹介してきましたように、とても魅力的ではありませんかと、FXの実用書は煽りますが、リスクは結構高いように思えます。皆さんどう思われますか。



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