為替問題と貿易事業(その10)…ブラジルエメラルド鉱山採掘事業への直接投資

グループ管理会社MMGの発足

 ブラジルのサンパウロ市にMMGという投資会社が設立されました。諸戸孝徳氏の兄・諸戸健治氏はMMGの出資者の1人です。MMGの傘下には、A7 STONESといったエメラルド鉱山会社やmiemeibutsujapan合同会社などがぶら下がっています。その中の1つ、miemeibutsujapan合同会社は、アジア地区の宝石販売委託会社であり、三重県三重郡菰野町で諸戸孝徳が経営しています。

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エメラルド鉱山投資募集内容

 今回のエメラルド鉱山への直接投資の話は、MMGの投資案件の1つで、MMGがファンドを設定して投資を募集し、その資金で鉱山の技術開発を進めようというものです。現在、ブラジルでは鉱山の掘削技術が旧式で、どの鉱山も先進技術を導入したいと考えています。そこで今回は、パートナーシップとしての参加の場合には1.5億円/人、M&Aとしての参加の場合には15億円という値段設定となっています。

対象鉱山の概略

 2006年ブラジル国家鉱物採掘局(DNPN)によって、Bahia鉱山公社(CBM : 政府系会社)に採掘権が与えられました。その後、2012年に採掘権の許可(PLG)が無期限でJose Fernanda de Farias(民間企業)に与えられています。

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 歴史的には、
・ 2006年に390haが公的機関Bahia鉱山会社(CBN)に与えられました。
・ 2012年にはその内の50haが民間のJoseに譲渡され、その内の11haで具体的に鉱山開発が行われています。

 Bahio鉱石の広さは37ha(1ha=10,000m2)で、東京ドームの約8倍です。エメラルドの埋蔵量は2100tonで、エメラルドの原石価格は145$/kgですので、全体の価値は300億円実質収入260億円と推定されています。

投資内容提案書

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1. 概 要

 本報告書は、Jose Fernando Maranda de Farias鉱山のエメラルド採掘現場についての情報を提供するものです。Jose Fernando Maranda de Farias鉱山は、ブラジル国・Bahia州・Pindobaqu市・Carnaiba de Baixoに位置し、ここでの埋蔵エメラルドの採掘が定期的に開発されてきました。しかし、採掘に用いられている技術は、もはや近代的なものではありません。エメラルドや二硫化モリブデンの抽出に対して用いられているプロセスは、現在でも手作業であり、危険な作業のままです。

 歴史的にみると、対象となるエメラルドは1963年に発見されました。そして、初期の頃は、月間3,000万US$(30億円)に達する商い量となりました。その後、エメラルドの採掘は数百という多数の鉱山業者が参加する採鉱形態を取っていたため、地表面のみが採掘される結果となりました。現在エメラルドの採掘は、初期の量の10%程度まで減少しています。主として、掘削で到達する深さが300mまでという理由のためです。かくして、鉱石の採掘コストの上昇により、結果として採掘困難な状況となっています。

 国営企業によって実施された地質学的調査によれば、より近代的な設備の導入と同時にエメラルドの埋蔵構造の発生学的管理およびそれに適合する方法論の検討が、採掘権保持者によって少しずつではありますが行われて来ています。

 鉱石埋蔵量や採掘可能期間を検討することによって、Jose Fernando Maranda de Farias鉱山は、現在、共同出資あるいはM&Aのいずれかの方式で対応できる様になっています。これらによって投入される資金は、エメラルドや二硫化モリブデンの生産を増やすことを目的に活用され、先端研究技術の導入および近代採鉱技術の開発や方法論を適用することに使われています。

2. 法的認可

 国家鉱物採掘局(DNPM)によって、Bahia鉱山公社(CMB)に採掘権が与えられました。CNPJ : 08020967/0001-47 この領域は下記の特徴を有しています。

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 1ha=100a=10,000m2=0.01km2

 上記の採掘権の許可(PLG)は、2014年7月1日までが有効期間です。DNPMからは、定期的に再更新することを要望されています。

3. 地理的位置関係とアクセス手段

 本報告書の対象地域はBahia州中部から北部にかけてのPindobaqu自治区です。Pindobaqu市の西方20km、Salvador市の北西400kmの所に位置します。主たるエメラルドの採鉱区は、Jacobean山脈の西側斜面にあり、Carnaiba村で最初の発見がなされました。他の場所でもエメラルド鉱床は見付かっています。近くの数カ所の村でも発見されたのですが、Carnaiba村からは5km以上離れた位置でした。Salvadorからのアクセスは、Capim Grossoへの高速道路324号線が便利です。また、Senlor do Bonfimへは高速道路407号線が、PindobaquやCarnaibaへのルートを取ることもできます。これらの道路はすべて舗装されています。

4. 歴史的経緯

 Carnaibaのエメラルドは、1963年に発見されました。開発初期には、月間3,000万US$にも達していたと推定されます。(資料:Santos, O. M. 2009)

 しかしながら、幾つかの要因により、生産の減少を引き起こしています。公文書によれば、1963年から1979年の間では、平均で600万US$の歳入を示しています。エメラルド原石の生産量は、過少に見積もっても31,000kgが報告されています。1983年から1987年の間は、Carnaiba地区は、平均で年間5,000kgの生産が行われていました。一方で、1991年から1993年では、4,060kgの生産量が報告され、2,100万US$の歳入が発生していました。

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 1978年以降は、DNPM鉱山業者によって引き起こされた騒動のもとで、行政上の管理が行われています。”garimpeira”と呼ばれる鉱区のみが採掘が認められ、36.92haの限られた領域が確保されています。その領域では、研究開発プロジェクトが、国家機関(CBPMやCPRM)によって続けられて来ました。基本的には、1979年以降は、Bahia州政府が、CBPMを通して地質学的調査を進め、地図の作成、穿孔や掘削を行ないました。(資料:Esmeralda—santana and Moreria Priget, 1980)

 更に、Careado Project (Santana, 1981)は、分光測定や磁気測定も含む航空-地球物理学上の測定を行いました。2000年にはCBPMは2,824mに亘る調査を行ないました。これはCarimpo de Carnaiba de Cimaの半分に当ります。新たな調査キャンペーンが2005年にも行われました。13の孔で総計3,482mに達しました。(Fernando Miranda de Farias鉱山の地域も含まれます)

公開された掘削開発区の調査結果

4.1 エメラルドの形成と産出形態

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 エメラルドの生成は、残留マグマの侵入によって起ります。マグマはaplogematitic, Si、Beが豊富で、Crを含む自然基-超塩基性(サーペンティナイト基石)のものです。CoutoとAlmeida鉱区(1982年)の成果に対しては、南アフリカのKaapvaal CratoのAnhaensserにより1971年に示されたCarnaiba鉱化形成理論が適用されました。Jose Fernando Miranda de Farias鉱山では、構造的に以下の3タイプで支配されていることが証明されました。

(1) 割れ目や破壊と関連付けられる構造であること
(2) 硅岩や深成花崗岩を有するサーペンティナイト岩同志の接触で形成されていること
(3) サーペンティナイトの上層下層にある破面または欠陥の伝播が認められること


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4.2 エメラルドの埋蔵量

 一連のCBPMの作業で収集されたデータから、エメラルドの推定埋蔵量が計算されました。CBPMとは、Bahia州鉱物・エネルギー省の鉱物調査機関であるBaian公社のことを指します。そして、CBPMは4,040tonの緑色Beの埋蔵を、Carnaiba de Cima鉱区には990tonの緑色Beが埋蔵されていることを示しました。

 新規ドリリングが2005年に13カ所で実施され、その内Carnaiba de Cimaでは9カ所で、400m×200mの間隔で、119mから447mの深さに達するものでした。この領域では、23の探査孔からエメラルド状態の連続した層が500mの深さまで確認されました。そして、かなりの確率で岩盤が延びていることが判りました。その結果は、調査データと断面図との対比で示されました。(CBPM-2006-Annex03)これらの深さでの調査結果は、今後エメラルド採掘を行なう時に、更なる開発や設備投資をする必要がなく、これによる損失を最小限に抑えることを示しています。

4.3 Jose Fernando Miranda de Farias鉱山での鉱石推定埋蔵量

 Jose Fernando Miranda de Farias鉱山では、添付資料で推定されるように、Carnaiba de Cimaの鉱脈の中央部分に位置し、上述した採掘を左右する3つの主要因を基に出来上がった領域が存在します。その領域に対して、既存データと推定データを合わせた埋蔵量算出が行われましたが、それには認可PLGによってカバーされている11.34haの領域が含まれます。

 黒雲母頁岩から成る貯蔵岩盤での各抽出深さや層の厚さを調べた地質学的データが提供されています。このデータには、地質学的断面図、プロファイル集計データ、展示室等々が含まれます。また、既存の隣接地のデータをも含めますと、これは606,100m3の蓄積埋蔵量となりますが、これも表示されています。この部分は、宝石貯蔵母岩の20%のみに過ぎませんが、将来経済的にも鉱区化することは以下に示すように可能です。

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4.4 推定埋蔵量

 今回計算された確認埋蔵量は安全サイドで見積もっても、推定埋蔵量全体の20%で、この値は自然埋蔵物として、十分に受け入れられる値です。このパラメーターを用いますと、推定埋蔵量は下記の値となります。
確認埋蔵量=606,100m3

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4.5 二硫化モリブデンの埋蔵量

 掘削したまま利用できるという利点を考慮してMoS2は月間10トンが現在生産されています。その平均的濃縮度は、掘削で抽出されたサンプル重量の0.020%に達しています。上記に示しました推定埋蔵量の値を考慮すると、密度4.7のMoO2は12.122m3の埋蔵量となり、56,973トンが存在する計算になります。これは、トン当たり20,000US$と設定できますので、Jose Fernando Miranda de Faias鉱山のエメラルドの歳入に11,394,680US$を追加できます。

5. 採掘事業の経済可能性評価

5.1 経済的観点
 
 CBPMによって行われているCarnaibaプロジェクトの第1および第2ステージにおいて、この地域でのエメラルド採掘の生産性と事業可能性はTable1に示されています。

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6. 歳入予測

6.1 エメラルドの評価

 上記の歴史的データや実施された調査を基に、総埋蔵量やそれらの評価結果は以下の様にまとめることができます。

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6.2 二硫化モリブデンの評価

 二硫化モリブデンの埋蔵量は下記の様になります。

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6.3 Jose Fernando Miranda de Fariasに埋蔵されている鉱石の総計

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7. 投資計画

 現存するすべての記録を基に実施された分析やこの地域での観察結果から、500m深さまででは、埋蔵の5%のみが掘削されたものであり、いずれもCarnaiba de Cima鉱区で掘削されたものです。(Santos, OM, op. cit.)

 この観点から地質学的研究や掘削計画における投資プログラムを詳細に作成する必要があり、そのために資金投入することは、現時点において非常に重要なこととなっています。その際には、全利権を有する総鉱区を見極めるために、鉱物化管理に関するこれまでに得られている知見を総動員すべきです。

 将来の掘削計画の実現化に向けて、以下の点を考慮すべきと考えます。

(1) 水平方向および傾斜方向断面図の展示室での展示
(2) パネル展示
(3) 各種傾斜断面の展示室での展示
(4) エレベータを有する支柱を設置し、より深い場所へのアクセス確保
(5) 10年ないしは15年に亘る開発映像を紹介する場の提供

8. 結 論

 Jose Fernando Miranda de Farias鉱山での管理領域では、深さ方向への探索は、推定埋蔵量727,320m3の10%も行われていません。そして、エメラルドや二硫化モリブデンの既存および推定埋蔵量を評価することによって、311,793,841US$の鉱物量歳入を期待できます。Jose Fernando Miranda de Farias鉱山での作業の近代化を図ることによって、実質的な経済リターンが得られるようになり、新規の採掘計画を推進できることが判ってきました。

 投資案件文書の翻訳はここで終了となります。日本での海外鉱山への直接投資は原油や鉄鉱石が大部分で、エメラルド等の宝石類についてはほとんど行われていないようです。

 ブラジルでは、現在、政治的に不安定であり、アマゾン川流域の環境破壊が問題になっています。このような時期にブラジルへの直接投資はどのようなスタンスで考えるのかも難しいものがありますが、皆さんはどう思われますか。



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