脱炭素革命(その1)…地球温暖化メカニズム解明と異常気象の発生

地球環境の現状

 話は地球が現在どういう状況になっているのか、これからどうなるのか、ということから始める必要があります。この写真は我々が住む地球です。地球が誕生してから46億年が経過しています。銀河系というとてつもなく大きな宇宙空間があり、その中に小さな太陽系があります。太陽という光り輝く恒星の周りに、8つの惑星があって、その惑星の1つが地球です。(銀河系の星の数は2000億個。)

 この写真は1972年に撮影されたものですが、まだまだ綺麗です。ところが、この地球に今地球温暖化という大変なことが起こりつつあるのです。

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地球温暖化の基本的なしくみ

 どうしてこの様に地球温暖化が進んだのでしょうか。これは主として二酸化炭素の排出によると言われています。今から200年ほど前の1800年に産業革命が起こりました。以降、産業が発達しまして、地球上の工場という工場から二酸化炭素が排出されました。そして、地球を囲んだ大気圏の外側に、二酸化炭素の層ができてしまいました。

 太陽からの赤外線が地球を暖めた後、地球から赤外線が放射されます。放射された赤外線は、昔は宇宙に戻って行きましたが、現在は宇宙に戻ることができず、この二酸化炭素の層に吸収されます。すると、二酸化炭素の層が赤外線をこの大気圏内に放射し、これがまた地球に吸収され、地球を温めます。その結果成層圏に赤外線が閉じ込められてしまい、地球がどんどん温まって行きます。これが地球温暖化のメカニズムです。

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二酸化炭素濃度の急激な上昇と地球温暖化の関係

 これは、地球上に蓄積されている二酸化炭素濃度の値をプロットしたものです。人類誕生は約800万年前ですが、65万年まえからのデータをプロットしています。かなり大きく変動していますが、注目すべきは1800年の産業革命以降CO2の濃度は急激に上昇しているということです。

 これまでは200~300ppmの当たりで変動していましたが、ここから急激に上昇を始めまして、今では倍の400ppmに近づいているという事実です。ロニー・トンプソンの調査チームは、氷床コアの中に閉じ込められている小さな気泡を調べました。その年に降った雪の中に空気が入って、それが気泡となって存在しているのです。従って気泡を調べることで、年毎の二酸化炭素の量が分かります。

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地球温暖化のデータ

 また、気泡中の酸素の同位元素(酸素16と酸素18)の割合を計算することによって、過去の各年の大気温も正確に測ることができます。(この酸素の同位元素は、気温によって雪に取り込まれる速度が微妙に異なっているので、極めて正確な精密温度計となってくれます。)

 これは地球の北半球の気温を測定したデータです。西暦200年からのデータがあり、2018年の現在はこの円の部分です。赤い円の中を見て下さい。今までの温度変化とは全く違う変化をしていることがわかります。急激に温度が上昇しています。今、世の中で言っている地球温暖化とは、このことを言うのです。そして、二酸化炭素の量と、気温の間には1:1の対応がありますので、地球温暖化は二酸化炭素によるものだと結論づけられています。

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国連発表の地球温暖化の今後の試算

 ここで1つ、国連が発表したちょっと恐ろしいデータを紹介します。この図は、横軸に年度を、縦軸に二酸化炭素の排出量を示したグラフです。この横のラインから下の白い部分は、地球の二酸化炭素の自然吸収量を示しています。地球が何をしないでも吸収する二酸化炭素の量です。地球には森がありますが、光合成をする際に森は二酸化炭素を吸収します。また、地球には海がありますが、大気と海の間では、常に二酸化炭素のやり取りが行われています。

 1800年に、ヨーロッパに産業革命が起ると、多くの工場が二酸化炭素を吐き出す様になった結果、どんどん二酸化炭素の量は増えて行きます。現在は2018年ですから、地球の上にはこの分だけ二酸化炭素が余分にあるわけです。これだけの面積の部分の二酸化炭素量で、地球は通常15℃ですが、それに対し+1℃高くなりました。さて、このまま地球上の人々が、今までと同じ生活を続けるとどうなるのか、地球の温度はどんどん高くなり、+2℃に近づいて行きます。

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 皆さん、地球の温度が1℃から2℃位上昇しても、何もないと思っていませんか。1℃~2℃上昇することで、大きな問題が発生するのです。

 現在、コロナ感染の問題もあって、2100年では遅すぎる2050年をターゲットにすべきだというのが、一般的になってきました。そこでもう一度この図を使って、2050年とはどういうものかを考えて見ます。さきほど言いましたように、何も手を打たないと地球の温度上昇は2℃を超えます。これを阻止するには、どうしたら良いのでしょうか。まず、考えたのが二酸化炭素の排出削減でした。この右側2本のラインは二酸化炭素の排出量低減を示すものです。しかし、この図から判るように100年は掛かります。とてもそこまでは待てません。そこで現在、世界は一番左側のラインを目標に動いていまして、2050年までに地球の温度を元に戻そうとしています。それには二酸化炭素の排出低減ではなくて脱炭素であると言っているのです。

国連における動き

 世界、すなわち国連の場においても、この問題を放っておいた訳ではありません。25年前の1995年には、第1回目のCOP、すなわち、気候変動枠組み条約会議が開催されています。1997年のCOP3では「京都議定書」が、最近の2015年には、COP21で、「パリ協定」が採択されました。そして、同じ年の2015年には、パリ協定を受けてSDGsすなわち「持続可能な開発目標」がスタートしました。SDGsのスタートは、環境問題が大企業だけの問題ではなく、世界の中小企業や、地球に住んでいる世界の人々に関与することになったと言う意味で重要なことでした。

 1997年の京都議定書では、世界各国が協力して地球温暖化を防止するため、2008年から2012年までの期間に先進国の温室効果ガス排出量を5%減少(1990年度比)させることを目標として採択されました。また、2015年のパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする目標が設定されました。

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気温上昇で表面化するリスク

 このスライドは、今、地球上で我々を苦しめている環境に関する問題を羅列してみました。1番の海面上昇、2番の観光サービスの消失により、北極・南極圏での温度上昇で氷が溶けだし、海面上昇がおこっています。そのため赤道近傍のモルジブでは陸地の消失が起こっています。またこれによる観光サービスの消失もおこっています。

 また、日本では3番の異常気象や4番の河川の氾濫により、インフラの停止があります。海外では、5番の干ばつによる食糧不足、6番の水資源不足も、7番の熱波による死亡や疾病の問題も起こっています。

 そして、いま我々を苦しめているものとしてコロナ感染症の流行の問題があります。これも地球温暖化がもたらす最たる問題で、ここでいう8番の生物多様性の崩壊としてカウントされます。

 地球環境問題というのは、このような各種のリスクにどのように対応していくかという問題であるわけです。そして、これら問題は我々が生活をしていく上で真剣にかんがえなければならない段階にさしかかっています。

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海洋コンベアベルト

 地球の温度が2℃上昇すると何が起こるのか?この図が示します様に、海のすべての海流は繋がっていて、ひとつの大きなメビウスの輪のようになっています。この輪は「海洋コンベアベルト」と呼ばれます。

 図の輪の赤い部分は、暖かい海面を表しています。良く知られているのは、米国の東海岸に沿って流れるメキシコ湾流です。メキシコ湾流からもたらされる熱がヨーロッパへと運ばれるお陰で、パリやロンドンでは、ほぼ同じ緯度にあるカナダのモントリオールやアメリカのノースダコタ州よりずっと暖かくなります。スペインのマドリッドとアメリカのニューヨーク市の緯度は同じですが、マドリッドの方がずっと暖かいのです。ところが、地球の温度が1℃~2℃上昇すると、この海洋コンベアベルトが乱れて、異常現象が次々と現れます。

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グリーンランドの氷解と北極熊の運命

 その最たるものが、北極や南極で氷が溶けることです。北極熊のような生き物にとってこれは脅威で、熊たちは氷盤から次の氷盤へと移ろうとして溺れ死んでいます。岸から氷のヘリまで、50~60kmもあるので、北極熊もとても泳ぎ切れないのです。

 また、北極圏にはグリーンランドがありますが、今グリーンランドの氷が劇的な速さで溶けています。グリーンランドや南極の氷の半分が、海水中に溶け出すと、世界中の海水海面は5.5~6m上昇すると言われています。

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偏西風の異常張り出し

 成層圏の上空には偏西風と言う風が吹いておりまして、地球温暖化でこれが大きく張り出してきています。そして、各地で起こっている異常気象は、この偏西風の張り出しに大きく影響しているといわれています。

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偏西風の張り出しに伴う異常気象

 この偏西風の張り出しの影響で、日本でも、ここ数年異常気象が頻発しています。例えば、とてつもなく大きなスーパー台風だとか豪雨・豪雪が日本各地に大きな被害をもたらしています。

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 地球環境問題の背景についてみてきましたが、地球環境問題の主原因が地球温暖化にあること、そしてその地球温暖化がどのようなメカニズムで異常現象を引き起こしているかも見てきました。皆さんどう思われますか。



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