ESG投資とSDGs(その7)…企業目標としてのSDGsを考える

 ESGとSDGsの関係は、ESGは投資においては環境・社会・ガバナンスを考慮しなさいというものです。SDGsは我々の世界を変革するには、将来の世界を良くする持続可能な開発が重要というメッセージです。ESGもSDGsも環境問題の解決や多様な人々の活躍、教育や医療の普及の実現を目指すものです。

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 「SDGsとESG(環境・社会・企業統治)はどう違うのか」、そんな疑問を抱く向きも少なくありません。一言で言えば、SDGsは経営者が目指すべき視点であり、ESGは投資家が経営を評価するポイントです。経営者を動かす大きな力の1つが、投資家の声です。その意味で「SDGsは目標、ESGは手段」と理解してもいいでしょう。

三菱地所が考えるSDGs

 2030年の達成を目指すのがSDGs(持続可能な開発目標)ですが、多くの日本企業が17の目標を貫く理念である「誰1人取り残さない」への思いを深め、行動を加速させています。

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利益と社会貢献を両立させ、持続可能な社会をつくる前例なき挑戦です。その実現にはイノベーションが欠かせず、企業は取り組みを積極的に発信し、ステークホルダー(利害関係者)に背中を押してもらうことが重要です。

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 東京都心では三菱地所が温暖化ガスを排出しないビジネス街を目指し、エリア集積を生かした企業・団体の連携で未来をたぐり寄せようとしています。政府が策定した「2050年カーボンニュートラル」の長期戦略や、地球の平均気温の上昇を1.5度以内に抑えるという国際的な動きを背景に、三菱地所は2019年に制定した温暖化ガスの排出削減目標を2022年に見直し、取り組みを強化しました。新たな目標は、2030年までにスコープ1(自社排出量)、スコープ2(他社から供給されたエネルギー使用に伴う排出量)の合計を2019年度比70%以上、スコープ3(取引先の排出量)の合計を同50%以上削減。2050年までにネットゼロの達成です。この目標は科学と整合した目標設定イニシアチブ(SBTi)が掲げる「1.5度基準」を満たしています。

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この先まちづくりにどう取り組みますか。

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 まちづくりは100年先を見据えていく必要があります。我々の次の代、その次の代の人も快適に住み、働ける場所をつくっていかなければなりません。地球があってはじめて人間は生きていくことができます。三菱地所のブランドスローガン「人を、想う力。街を、想う力」に「地球を、想う力」も加え、事業を通じてSDGsの実現へ取り組みを続けていきたいと考えています。

一橋大学大学院 名和高司客員教授のSDGs観

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 利益追求と社会貢献は相反関係ではありません。社会にいいことをしながら利益を上げることは十分可能です。ただし社会貢献との両立にはイノベーションが必要で、むしろSDGsへの取り組みがイノベーションのきっかけにもなります。

 もし短期的に利益が出ていないとしても長期的な視点を持つ株主にとってはあまり問題ではありません。例えば年金ファンドの投資家であれば、自分たちがリタイアしたときに投資先がきちんとリターンを上げていてくれるかどうかが重要です。10年先の社会に貢献することで利益も出ている姿を描くことができれば、株主と企業の思いは相反しません。

 SDGsにおいてダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂性)の視点が欠かせませんが、日本ではダイバーシティばかり重視する傾向があります。これはあまり望ましくないと考えられます。なぜならダイバーシティを単なる数合わせと捉えているからです。既に社内には外国人もZ世代も女性もいるのに、彼らが存分に活躍できていないことが問題です。インクルージョンこそが重要で、多様なメンバーをワンチームにまとめることが管理者の手腕にかかっています。「自分はメンバーの一員だ」との思いであるビロンギングス(所属意識)なしに会社は成り立ちません。日本語の「会社」は英語の「カンパニー」が訳されたものです。カンパニーの語源は「仲間」、志を同じくする人たちの集まりです。社員が志を共有すればこそ、人材の多様性を生かしてイノベーションを創出できます。

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「SDGsとESG(環境・社会・企業統治)はどう違うのか」の問いに対し、「SDGsは経営者が目指すべき視点であり、ESGは投資家が経営を評価するポイント」という回答は素晴らしいと感じますが、皆さんはどう思われますか。
 
 



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