ESG投資とSDGs(その8)…SDGsは地球の未来守る「宿題」

近年、すっかり生活に浸透した言葉「SDGs(持続可能な開発目標)」ですが、ただ、その意味を問われると「エコ?」「環境問題?」など、ぼんやりとしたイメージしかない人が多いように思われます。そこで、SDGsの具体的な中身と生活との関わりについて考えます。
慶応義塾大学大学院教授の蟹江憲史氏へのインタビューの内容を紹介します。
国連で合意の17目標

17の目標と、達成を目指す年や数値などを示した169のターゲットからなるSDGs。「一言で表現するなら?」という問いへの慶応義塾大学大学院教授の蟹江憲史氏さんの答えは「未来の世界のかたち --- 。」でした。2015年の国連総会ですべての加盟国が合意、15年後の30年までに達成することが掲げられました。
未来の日とも豊かに暮らすことができる「持続可能な社会」を実現するには何が必要なのでしょうか。かつては地球環境を守ることとされていました。しかし、SDGsが画期的なのは「環境と経済、社会の問題を融合して考えること」です。だからこそ、17の目標は広範囲にわたります。
環境、経済多角的に

目標の1つ、「飢餓をゼロに」を取り上げます。真っ先に浮かぶのは食料を大量に作り、行き渡らせることです。しかし、これまでの方法で生産量を増やそうとすれば、生態系の破壊など他の課題への影響が大きくなります。持続可能な仕組みを探るには、製造や輸送にかかるエネルギー資源の使い方から、二酸化炭素の排出量や食品ロスを減らす方法まで、さまざまな角度から考える必要があります。

SDGsが生まれた背景には危機感があります。農作物の供給だけを見ても、温暖化が進んで干ばつや災害が多く起きる中、不安定さが増しています。「今、行動を起こさないと地球は持たない」と蟹江さんは指摘します。私たちにできることとして「身近な生活を少し変えてみてほしい」と呼び掛けています。
行動変えるきっかけ
例えば海を汚すペットボトル。1日1本飲むなら、2日に一度はマイボトルを使うようにします。本数は半分に減ります。こまめに電気を消せばエネルギー対策にながります。電車やバスで高齢者に席を譲れば福祉向上につながります。「17の目標は内容もシンプルです。行動を変えるきっかけを見つけやすい」と期待できます。

蟹江さんによると「日本ほどSDGsという言葉が浸透している国はない」そうです。ただ、それが実際の取り組みに結び付いているとは言いにくい面もあるとのことです。目標の1つに掲げられるジェンダー平等。各国の男女格差を示すジォーェンダーギャツプ指数は、先進国で最低レベルです。蟹江さんは不平等を示す一例として、新型コロナウィルス禍で困窮する母子家庭が増えた点を挙げています。女性は不安定な非正規雇用の割合が高いためと考えられます。「子どもが栄養不足に陥ったり、進学の機会を失ったり、ジェンダーの不平等はさまざまな負の連鎖を生む」と断じています。
貧困、感染者への差別、使い捨てマスクの増加 --- 。新型コロナの流行で、目標の多くは達成から遠ざかりました。「今後4、5年が大事」と蟹江さんは強調します。達成への具体策は、国や企業、個人が自由に決められるのがSDGsの特徴です。「出勤しなくても働けるリモートワークが定着したように、コロナ禍からの回復の過程でさまざまな変革を進めることが必要」と言います。
今回は、近年すっかり生活に浸透した言葉「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉について、具体的な中身と生活との関わりについて考えてみました。皆さんはどう思われますか。