ESG投資とSDGs(その9)…SDGsは世界共通のビジネス手法
SDGsは、Sustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」ということです。持続可能な開発とは、文字通り今後の世代の若い人々にも十分に理解してもらえる、あるいは引き継がれて行く内容の開発テーマであるということです。
2015年9月、SDGsが国連サミットで採択されました。SDGsとは、国連加盟193ケ国が2016年~2030年の15年間で達成するための活動で、17の目標と169のターゲットからなります。SDGsでは、貧困や飢餓の撲滅をはじめ、健康・福祉、ジェンダー平等、エネルギー、働きがいから気候変動まで、途上国、新興国、先進国、あらゆる国で取り組むことが必要な目標となっています。
2030年に向けた世界共通の未来の羅針盤であり、様々な諸問題を解決する処方箋となるのがSDGsであると言えます。SDGsはいわば世界共通言語です。新しいビジネスチャンスや、同じ共通言語を有する多くのグローバルなビジネスパートナーと手を結ぶ、非常に良い機会を提供するものであると言えます。
企業を含め、多くのアクターを巻き込むのがSDGsです。国内でSDGsが掲げている目標に取り組めば、結果として世界と同じ目標に向かうという意味で、直接繋がって行きます。従来は、いわゆるCSR、社会貢献という観点からSDGsにある課題に取り組むようなケースが多かったと思います。それが今、CSRを越え、SDGsという仕組みを使って、本業としてビジネス化して行くといううねりができつつあります。
国連地域開発センターの遠藤所長が、製造業でのSDGsの思想について非常に判り易く説明されていましたので、ここで紹介します。

「製造業においては、特色であるものづくりの視点でどう取り組むかが重要で、「変革の物差しの1つ」として、企業の生産活動の改善や技術革新に期待が寄せられています。これによって企業はイメージの向上や新たなビジネスの創出に繫げることができます。地球の資源を発掘、加工、販売、消費、廃棄する経済モデルで世界は発展してきましたが、これが持続可能でないことは共通認識になっています。製造業に関しては、持続可能ではない部分もあるはずで、何を変革し、何を改めるべきか、方向性を議論する物差しの1つがSDGsになる」と述べられています。その上で、再利用や再生産をあらかじめ想定した資源循環型の生産活動への移行を訴えています。そして、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネットへの接続)といった先端技術を活用したSDGsへの取組みに期待を寄せています。
以下は企業としての具体的な取り組み例です。
(1) リコーは電気自動車の安全運転を支える車載用ステレオカメラを生産しています。
(2) 住友化学は、環境にやさしい農薬を研究しています。
(3) また、戸田建設は洋上発電に力を入れています。
(4) LIXILは発展途上国向けのトイレを生産しています。
さらに経団連でのSDGsの実施例を見て行きたいと思います。
経団連では、IoTやAI、ロボットなどの革新技術を最大限活用し、人々の暮らしや社会全体を最適化した未来社会、Society 5.0の実現を目指しています。
この未来社会が描くのは、持続的な経済成長と、健康・医療、農業・食料、環境・気候変動、エネルギー、安全・防災、人やジェンダーの平等、などの社会的課題の解決を同時に実現した、真に持続可能な社会です。それは、取りも直さず、国連の掲げるSDGsが目指す、「誰一人取り残さない!人間中心の社会と軌をひとつにしている」と言えます。企業が持っているリソースやノウハウ、技術を使って、社会を大きくいい方向に変えて行くことになります。
次に、国としての取り組み例を示します。

(1) アブダビという国がありますが、砂漠に中国製の太陽光パネルを設置し、何と1kwhr当り2.6円で電気を売っています。日本は1kwhr当り12.6円ですから、1/6の安さです。
(2) また、ヨーロッパのドイツでは、電気自動車に切り換えようとの動きが加速しています。
SDGsは、個人レベル、企業レベル、団体レベル、国レベルのそれぞれにおいてテーマの掲げ方や取り組み方が少しずつ違うように思えます。その上で、これらに積極的に取り組んで行くことだと考えますが、皆さんどう思われますか。