ESG投資とSDGs(その12)…持続可能なサプライチェーンの構築

企業の持続可能な成長

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 企業の持続可能な成長には、自社だけではなく供給網も含めたサプライチェーン全体のESG課題(環境・社会・企業統治)を考慮した経営が求められています。日本経済新聞社と日経リサーチは、新たに企業評価プラットフォーム「日経サステナブルリンク」を共同で立ち上げ、企業のESG観点からみた国際競争力向上への寄与を目指しています。

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経済産業大臣 斎藤健

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 日本経済はデフレ構造から脱却し、コストカット型経済から、投資も賃金も物価も伸びる成長型経済に移行しつつあります。これの実現には、グローバルな資金を一層日本に引き付ける必要があります。そのためには投資家をはじめステークホルダーの関心の高いサステナビリティ課題(ESG課題)に対し、サプライチェーン全体で対応していくことが重要となります。

 脱炭素では温暖化ガスの排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の実現に向け、日本を含め世界各国が高い排出量削減目標を掲げています。企業はサプライチェーン全体で協働して取り組みを進めていく必要があります。カーボンニュートラル実現に積極的な企業が集まるGX(グリーントランスフォーメーション)リーグでは、自社だけでなく他社の排出削減への貢献につながるグリーン製品の市場投入や、その積極的な調達を促進しています。GX経済移行債を活用した投資促進策でも、サプライチェーン全体でのGX実現を求めています。

 また、政府は国際スタンダードに沿った人権尊重のガイドラインを策定し、普及に努めています。経団連の昨年の調査によりますと、会員企業の76%が人権尊重の取組を進めています。3年間で2倍以上に増えており心強い限りです。経済産業省は今後、アジア各国の取引先における人権尊重の取組み支援事業や、中小企業の取組みをサポートできる専門人材の育成を進めて行きます。持続可能なサプライチェーン構築が進み、社会課題の解決と成長の好循環が生み出されることが期待されます。

サステナブル経営の具体的取組について

 大丸、松阪屋、PARCO、GINZA S-Xなどを傘下に持つJ.フロントリテイリングは、「くらしのあたらしい幸せを発明する。」をビジョンに掲げ、2030年までに「感動共創・地域共栄・環境共生」を提供する目標を掲げています。「価値共創リテーラーグルーブ」への進化です。顧客や取引先、従業員と思いや考えを共有し、新たな価値創出に取り組むパートナーとして仲間を増やしていきたいと考えています。例えば、大丸松坂屋百貨店ではファッションのサブスクリプションサービスを通じて衣料を循環型にすることで環境や社会課題の解決に資すると考えています。同時に、サステナビリティの取組を進める仲間を増やし、今後も社会課題の解決に直結する事業を増やすことを目標に掲げています。

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 大成建設は地図に残る仕事をしてきました。グループ理念は「人がいきいきとする環境を創造する」で、サステナビリティトランスフォーメーションを通じて社会課題を解決するというのが基本的な考えだ。いわゆるゼネコンの仕事は調査・設計、調達、施工、運用、修繕、解体のどの部門でも多くの専門工事業者やサプライヤーとの協働で成り立っている。工事施工のため直接契約している取引先は年に3000以上あり、長時間労働や外国人労働者の人権問題、温暖化対策でもパートナーとの協働が欠かせない。人権や環境では各種項目ごとに目標を設定して取組を進めている。

社会課題の解決には何が重要なのか

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 J. フロントリテイリングの場合、社会課題の解決は多くの人と企業の共通テーマであり、競争ではなく共創という意識共有が重要です。例えば、地域共栄のためには競合他社も含め、地方行政、NPOとも連携し、エリア全体のステークホルダーの利益を考える事が大切です。。パートナーが増えることで、取り組みの社会的影響も大きくなります。

 大成建設の場合、課題解決のためには多くの変革が求められます。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を実現するためには、サプライチェーン全体での取り組みが必要です。例えば、カーボンニュートラルのためには、使うほど二酸化炭素(CO2)が削減できるコンクリートの開発など、技術開発も欠かせません。人権問題では、人権デューデリジェンス(DD)で問題点を洗い出し、顧客とも対話しながら、働きやすい環境を構築することを特に重視しています。

 サプライチェーンをバリューチェーンに置き換えると、価値共創は上流、下流の両方に作用します。従って、売り手と買い手の枠を超え、共に新しい価値を生み出していくことが重要ですが、皆さんどう思われますか。



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