金投資に関わる情報(その7)…FRB利上げ利下げと金価格の上下動

2022年1月14日日経新聞掲載

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 未曽有の金融緩和が行われ、通貨価値の下落を懸念する投資家が金を買い求めることになり、金の上昇相場がきました。そんな中2021年は金の上場投資信託(ETF)から6年ぶりに資金が流出しました。米国などが利上げや量的緩和の縮小に乗り出し、マネー膨張による激しいインフレを警戒した金買いが変調しています。

 インフレと利上げと金価格の関係は基本的には次の様になります。


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・ インフレが進むと、貨幣の価値が下がるので、モノとしての価値を持つ金の価格が相対的に上昇します。
・ FRBがインフレを抑えるために利上げしますと、ドルの金利が上昇し、世界の資金がドルに流れ込みます。従って、ドルの価値は上がりますので、相対的に金の価値は下がります。
・ 以上より、一般にインフレが進むと金の価格もそれに従って上昇しますが、FRBがインフレを押さえようと利上げの姿勢をとりますと、ドルの価値が上昇するため、金の価値は下がります。結局、インフレとFRBの綱引きに金の価格は左右されるわけです。

 金を狙うのであれば、米国の金利が上昇しドル高となった時に金を仕込み、金利が下落してドル安となって、金価格が上昇した時に売るのが常套手段であると思われます。現在2021年6月ですが、再度金利上昇・ドル高となり金価格が下落した時まで待ち、買いに向かおうと思っています。

 国際調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によりますと、金ETFは21年12月に3億ドルの資金が流出しました。重量ベースでも173トンと13年以来の規模となりました。ヘッジファンドなど短期筋とみられる売りが先行しました。

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 金ETFの仕組みは下記となります。金ETFは、実際の金(現物)や金価格に連動する先物などを保有しており、金価格の変動に合わせてETFの価格も上下します。たとえば:
• 金の国際価格が上がれば → 金ETFの価格も上がる
• 金の価格が下がれば → 金ETFの価格も下がる
となります。

 金ETFに2020年まで資金が流れ込んでいた理由は大きく2つあります。

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 1つはリスクを回避するため、「安全資産」とされる金の需要が強まったためです。2017年のトランプ前大統領の就任以降、米中対立など世界経済の不透明感が強まり、地政学リスクも意識されました。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めなどで金価格の上値が重かった2016~2018年もETFへの資金流入が続き、さらにコロナ禍ではリスク回避ムードが強まり2020年は487億ドルと過去最大の純流入を記録しました。

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 もう一つは、通貨価値下落への警戒です。コロナ禍を受けて世界の主要な中銀は大規模な金融緩和に踏み切りました。米国では名目金利から市場の予想インフレ率を引いた実質金利が深いマイナス圏に沈みました。実質金利のマイナスはお金の価値の目減りを示し、金利がつかず通貨の代替物とされる金の価値が相対的に上がりました。2019年に1トロイオンス1200ドル台~1500ドル台で推移してきたニューヨークの金先物価格は急騰し2020年8月に2089ドルと最高値を付けました。

 だが、その上昇相場が転機を迎えています。2021年は経済が回復に向かったほか、インフレ対策でFRBなど主要中銀が金融引き締めに動くとの見方から実質金利の将来の上昇観測も広がりました。金利の付かない金の投資妙味が下がったほか、リスク回避の需要も減りました。ETFの代表銘柄「SPDRゴールド・シェア」を扱うステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのS氏は「短期的な目線の投資家には金よりも株式の方が魅力的に映った」と指摘します。

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 それでも金先物相場は1800ドル台と歴史的にも高い水準です。2021年末時点の金ETFの残高は2091億ドル(3570トン)と、2020年に続いて過去2番目の大きさを維持しています。主要中銀がインフレを制御できるか、市場の見方が分かれているためです。インフレ退治に成功すれば通貨の価値が保全され、金価格の下落要因になります。一方、失敗すれば通貨価格の下落につながり、金価格の上昇が見込まれます。

2022年5月26日日経新聞掲載

 金の価格が再び上昇基調を強めています。経済指標の悪化を受けて米国の景気後退懸念が高まり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ姿勢が揺らぎ始めたためです。守勢を強めた投資家が「安全資産」とされる金に資金を傾けています。株式市場でもハイテク株売り・ディフェンシング株買いの流れが強まっています。

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 金価格の国債指標であるニューヨーク市場の先物は、2022年5月24日に一時1トロイオンス1870ドル程度と2週間ぶりの高値まで上昇しました。4月中旬には2000ドルを超える場面もありました。FRBが利上げを加速する姿勢をみせ、名目金利から予想物価変動率を引いた「実質金利」は4月下旬からプラス圏に転換しました。金利のつかない金への投資妙味が薄れ、売り圧力が強まっていました。ここにきて再び金価格が上昇しているのは、利上げの前提だった米国の好景気に陰りがみえてきたためです。米S&Pグローバルが発表した5月の米国の購買担当者景気指数(PMI、速報値)は市場予測を下回り、4月の米新築一戸建て住宅販売件数は2年ぶりの低水準に沈みました。「米国株のファンダメンタルが(経済の基礎的条件)への懸念が高まっています」。

 景気後退懸念の強まりを受けて、金融引き締めを急いでいた米国の姿勢には変化がみえはじめています。米アトランタ連銀のボスティック総裁は23日、「9月に利上げを一時停止するのが理にかなう」と発言したといいます。マーケットエッジのK氏は、足元の金価格の上昇について「利上げの早期停止や(将来的な)利下げの思惑を先んじて織り込んでいる可能性がある」と指摘します。

 経済の失速感が強まっているのは米国だけではありません。欧州もロシアからの禁輸や輸入削減の影響でエネルギー高という「返り血」を浴び、今年の経済成長は鈍化する見通しです。中国も新型コロナウィルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)が重荷になっています。エネルギーや穀物の価格高騰が沈静化する兆しがみえないなか、景気後退と物価上昇が併存するスタグフレーションが世界的に起きかねないとの警戒感は強いと言えます。

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 SNS(交流サイト)のスナップが23日夕に従来予想を下回る業績になりそうだと発表したのを契機に、24日の米株式市場ではネット広告収入減少への警戒感からメタプラットフォームズやアルファベットなどにも売りが波及しました。ナスダック総合株価指数は年初来安値を更新しました。一方で景気減速の影響を受けにくい公益やヘルスケアなどのディフェンシブ株は上昇が目立ちました。

 金は希少性が高いうえ発行体の信用リスクにさらされないため「安全資産」と呼ばれ、マーケットの不安心理が高まると買われやすいと言えます。投資家の守勢が強まれば、金の輝きはいっそう増しそうです。皆さんどう思われますか。



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