金融機関の環境問題への取り組み

1. はじめに

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 皆さんこんにちは、私は、ここに元と書きましたが、最近まで北伊勢上野信用金庫で産学連携コーディネーターをやっていました。伊藤幸生と申します。産学連携コーディネーターをやっていた期間ですが、2008年から2019年11月までの11年間です。在籍させていただいた時の私の役割は、北伊勢上野信用金庫のお客様で、三重大学との間で共同研究とか技術開発を進めたいという要求があった時に、その間に入って三重大学の先生を紹介させて頂くというものでした。今回その様な関わりで本日の研修会での話題提供をさせて頂きます。今日私に与えられたテーマは、「北伊勢上野信用金庫の地球環境問題への取り組み方」というものです。今回のこの話は南部理事長様、武岡営業推進部長様から直接依頼がありました。最近、金融業界におきましても、世界的な流れでもあります地球環境問題への取り組み方が色々と脚光を浴びてきており、避けて通ることはできないということのようです。具体的には、ESG投資とかSDGs活動というものです。

 ちなみに、ESG投資とは、地球環境関連投資のことですし、SDGs活動とは持続可能な開発目標のことを指します。南部理事長様も、先日この問題に取り組むためのSDGs宣言を行ったとのことをお聞きしています。地域の中小企業をお客様として多く抱えておられる北伊勢上野信用金庫様が、この地球環境問題にどの様に対応されるのか、私としましても一度、営業の最先端でバリバリ行動されている渉外担当の皆さんの考えをお聞きして何かアドバイスできればと考えていますので、宜しくお願いします。今日は話題提供ですので、途中で色々と質問して頂いて構いませんし、私の方からも問いかけをさせて頂くかも知れません。

2.  気温上昇で表面化するリスク

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 このスライドは、今、地球上で我々を苦しめている環境に関する問題を羅列してみました。1番の海面上昇、2番の観光サービスの消失は、北極・南極圏での温度上昇で氷が溶けだし、海面上昇がおこり、赤道近傍のモルジブでは陸地の消失問題が起こっています。これによる観光サービスの消失もおこっています。また、日本では3番の異常気象や4番の河川の氾濫により、インフラの停止があります。海外では、5番の干ばつによる食糧不足、6番の水資源不足も、7番の熱波による死亡や疾病の問題も起こっています。そして、いま我々を苦しめているものとしてコロナ感染症の流行の問題があります。これも地球温暖化がもたらす最たる問題で、ここでいう8番の生物多様性の崩壊としてカウントされます。

 地球環境問題というのは、このような各種のリスクにどのように対応していくかという問題であるわけです。そして、これら問題は我々が生活をしていく上で真剣にかんがえなければならない段階にさしかかっています。地域の金融機関である北伊勢上野信用金庫が、この問題にどのように関わっていくのか、今日はこれを考えてみたいと考えています。

3. 今日の話題

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 今日の話題の内容ですが、大きく下記の項目にしました。まず、最初に地球環境問題が起こってきた背景を説明します。次に、この地球環境問題に対して、世界はどの様に対応しているのか、日本はどうなのか、そして金融業界はどの様に対応しようとしているのかを示します。そして、もう少し踏み込んで北伊勢上野信用金庫にとっての課題は何なのか。その課題に対してどのように対応すればよいのかを考えます。最後に、この課題を解決すると具体的にどの様な成果が金庫にもたらされるのか、についても考えます。

4. 環境問題の背景

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 まず最初に地球環境問題の起った背景についてです。地球環境問題は、地球の温暖化がすべての根源であると言っても過言ではありません。地球温暖化は、どの様にして起こったのでしょうか。まずは地球温暖化のメカニズムについて説明します。




5. 地球環境の現状

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 話は地球が現在どういう状況になっているのか、これからどうなるのか、ということから始めます。この写真は我々が住む地球です。地球が誕生してから46億年が経過しています。銀河系というとてつもなく大きな宇宙空間があり、その中に小さな太陽系があります。太陽という光り輝く恒星の周りに、8つの惑星があって、その惑星の1つが地球です。(銀河系の星の数は2000億個。)この写真は1972年に撮影されたものですが、まだまだ綺麗です。ところが、この地球に今大変なことが起こりつつあるのです。

6. 地球温暖化の基本的なしくみ

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 どうしてこの様に地球温暖化が進んだのでしょうか。これは主として二酸化炭素の排出によると言われています。今から200年ほど前の1800年に産業革命が起こりました。以降、産業が発達しまして、地球上の工場という工場から二酸化炭素が排出されました。そして、地球を囲んだ大気圏の外側に、二酸化炭素の層ができてしまいました。太陽からの赤外線が地球を暖めた後、地球から赤外線が放射されます。放射された赤外線は、昔は宇宙に戻って行きましたが、現在は宇宙に戻ることができず、この二酸化炭素の層に吸収されます。すると、二酸化炭素の層が赤外線をこの大気圏内に放射し、これがまた地球に吸収され、地球を温めます。その結果成層圏に赤外線が閉じ込められてしまい、地球がどんどん温まって行きます。これが地球温暖化のメカニズムです。

7. 二酸化炭素濃度の急激な上昇

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 これは、地球上に蓄積されている二酸化炭素濃度の値をプロットしたものです。人類誕生は約800万年前ですが、65万年まえからのデータをプロットしています。かなり大きく変動していますが、注目すべきは1800年の産業革命以降CO2の濃度は急激に上昇しているということです。これまでは200~300ppmの当たりで変動していましたが、ここから急激に上昇を始めまして、今では倍の400ppmに近づいているという事実です。ロニー・トンプソンの調査チームは、氷床コアの中に閉じ込められている小さな気泡を調べました。その年に降った雪の中に空気が入って、それが気泡となって存在しているのです。従って気泡を調べることで、年毎の二酸化炭素の量が分かります。

8. 地球温暖化のデータ

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 また、気泡中の酸素の同位元素(酸素16と酸素18)の割合を計算することによって、過去の各年の大気温も正確に測ることができます。(この酸素の同位元素は、気温によって雪に取り込まれる速度が微妙に異なっているので、極めて正確な精密温度計となってくれます。)これは地球の北半球の気温を測定したデータです。西暦200年からのデータがあり、2018年の現在はこの円の部分です。この赤い円の中を見て下さい。今までの温度変化とは全く違う変化をしていることがわかります。急激に温度が上昇しています。今、世の中で言っている地球温暖化とは、このことを言うのです。そして、二酸化炭素の量と、気温の間には1:1の対応がありますので、地球温暖化は二酸化炭素によるものだと結論づけられています。

9. 国連発表の地球温暖化の今後の試算

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 ここで1つ、国連が発表したちょっと恐ろしいデータを紹介します。この図は、横軸に年度を、縦軸に二酸化炭素の排出量を示したグラフです。この横のラインから下の白い部分は、地球の二酸化炭素の自然吸収量を示しています。地球が何をしないでも吸収する二酸化炭素の量です。(皆さん、地球には森がありますが、光合成をする際に森は二酸化炭素を吸収します。また、地球には海がありますが、大気と海の間では、常に二酸化炭素のやり取りが行われています。)1800年に、ヨーロッパに産業革命が起ると、多くの工場が二酸化炭素を吐き出す様になった結果、どんどん二酸化炭素の量は増えて行きます。現在は2018年ですから、地球の上にはこの分だけ二酸化炭素が余分にあるわけです。これだけの面積の部分の二酸化炭素量で、地球は通常15℃ですが、それに対し+1℃高くなりました。さて、このまま地球上の人々が、今までと同じ生活を続けるとどうなるのか、地球の温度はどんどん高くなり、+2℃に近づいて行きます。皆さん、温度が1℃から2℃位上昇しても、何もないと思っていませんか。1℃~2℃上昇することで、大きな問題が発生するのです。

10. 海洋コンベアベルト

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 地球の温度が2℃上昇すると何が起こるのか?この図が示します様に、海のすべての海流は繋がっていて、ひとつの大きなメビウスの輪のようになっています。この輪は「海洋コンベアベルト」と呼ばれます。図の輪の赤い部分は、暖かい海面を表しています。良く知られているのは、米国の東海岸に沿って流れるメキシコ湾流です。メキシコ湾流からもたらされる熱がヨーロッパへと運ばれるお陰で、パリやロンドンでは、ほぼ同じ緯度にあるカナダのモントリオールやアメリカのノースダコタ州よりずっと暖かくなります。スペインのマドリッドとアメリカのニューヨーク市の緯度は同じですが、マドリッドの方がずっと暖かいのです。ところが、地球の温度が1℃~2℃上昇すると、この海洋コンベアベルトが乱れて、異常現象が次々と現れます。

11. グリーンランドの氷解と北極熊の運命

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 その最たるものが、北極や南極で氷が溶けることです。北極熊のような生き物にとってこれは脅威で、熊たちは氷盤から次の氷盤へと移ろうとして溺れ死んでいます。岸から氷のヘリまで、50~60kmもあるので、北極熊もとても泳ぎ切れないのです。また、北極圏にはグリーンランドがありますが、今グリーンランドの氷が劇的な速さで溶けています。グリーンランドや南極の氷の半分が、海水中に溶け出すと、世界中の海水海面は5.5~6m上昇すると言われています。

12. 偏西風の以上張り出し

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 成層圏の上空には偏西風と言う風が吹いておりまして、地球温暖化でこれが大きく張り出してきています。そして、各地で起こっている異常気象は、この偏西風の張り出しに大きく影響しているといわれています。




13. 偏西風の張り出しに伴う異常気象

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 この偏西風の張り出しの影響で、日本でも、ここ数年異常気象が頻発しています。例えば、とてつもなく大きなスーパー台風だとか豪雨・豪雪が日本各地に大きな被害をもたらしています。ここまでは、地球環境問題の背景についてみてきました。地球環境問題の主原因が地球温暖化にあること、そしてその地球温暖化がどのようなメカニズムで異常現象を引き起こしているかも見てきました。何か質問があれば受けたいと思います。

14. 地球環境問題とその課題

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 それでは、ここからは、この地球温暖化問題に対して、世界レベルではどう対応しようとしているのか、日本はどう対応しようとしているのか、また金融業界ではどう対応しようとしているのか、について確認して行きたいと思います。




15. 国連における動き

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 世界、すなわち国連の場においても、この問題を放っておいた訳ではありません。25年前の1995年には、第1回目COP、すなわち、気候変動枠組み条約会議が開催されています。1997年のCOP3では「京都議定書」が、最近の2015年には、COP21で、「パリ協定」が採択されました。そして、同じ年の2015年には、パリ協定を受けてSDGsすなわち「持続可能な開発目標」がスタートしました。これは、環境問題が大企業だけの問題ではなく、世界の中小企業や、地球に住んでいる世界の人々に関与することになったと言う意味で重要なことでした。

16. COP21パリ協定の内容

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 前回、2015年に開催されたパリ協定の内容は次の通りです。「世界の平均気温上昇を2℃未満に抑える」に向けて、世界全体で今世紀末後半(2100年まで)には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにして行く方向を約束するというものです。



17. 2050年までの脱炭素の意味合い

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 現在、コロナ感染の問題もあって、2100年では遅すぎる2050年をターゲットにすべきだというのが、一般的になってきました。そこでもう一度この図を使って、2050年とはどういうものかを考えて見ます。さきほど言いましたように、何も手を打たないと地球の温度上昇は2℃を超えます。これを阻止するには、どうしたら良いのでしょうか。まず、考えたのが二酸化炭素の排出削減でした。この2本のラインは二酸化炭素の排出量低減を示すものです。しかし、この図から判るように100年は掛かります。とてもそこまでは待てません。そこで現在、世界はこのラインを目標に動いていまして、2050年までに地球の温度を元に戻そうとしています。それには二酸化炭素の排出低減ではなくて脱炭素であると言っているのです。当然この様な活動にはお金がかかります。脱炭素に向けての活動に対して世界の機関投資家が一生懸命努力している企業に対してはお金を投資しますよという流れになってきました。こうなると完全にビジネスとなります。金融機関の出番です。

18.  社会貢献活動からビジネス活動へ

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 実は、地球環境問題といのは、初めの内は、企業にとっては社会貢献活動の一環としてやってきました。社会貢献活動というのは、企業が身銭を切って環境問題解決のために色々と対策を打つ事を意味します。しかし、企業の方もお金儲けに繋がらないことを一生懸命やるはずがありません。そこで、この環境問題についてはビジネスとして進めようということになったのです。それは企業が環境対応をすれば、利益として跳ね返ってくるような仕組み作りをすれば良いのです。環境問題を一生懸命やる企業に対しては、投資対象として見做していこうということになっていったのです。金融機関の出番です。

19. 環境ビジネスを推進する国

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 まず国レベルでの対応の具体例です。アブダビという国がありますが、砂漠に中国製の太陽光パネルを設置し、何と1kwhr当り2.6円で電気を売っています。日本は1kwhr当り12.6円ですから、1/6の安さです。また、ヨーロッパのドイツでは、電気自動車に切り換えようとの動きが加速しています。



20. 環境ビジネスを推進する企業

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 ここでは環境ビジネスを推進する企業を幾つか紹介します。リコーは電気自動車の安全運転を支える車載用ステレオカメラを生産しています。SDGs的には安心・安全に住み続けられる街づくりということではないでしょうか。住友化学は、環境にやさしい農薬を研究しています。SDGs的にはつくる責任、使う責任を意識したものです。また、戸田建設は洋上発電に力を入れています。SDGs的には再生可能エネルギーをみんなにそしてクリーンにを意識しています。LIXILは発展途上国向けのトイレを生産しています。これはSDGs的には安全なトイレを世界中に広げることを意識しています。

21. 日本の課題

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 ここまでは世界の取り組みを見てきましたが、日本の取り組みはどうでしょうか。実は日本には日本独自の事情がありまして、ヨーロッパがこういうことをやったから日本も同じ様にやれば良いではないかとはいかないのです。




22. エネルギーバランス

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 日本独自の事情の1つは、エネルギーバランスの問題です。東日本大震災が起こる前の2006年に、((財)日本エネルギー経済研究所は、)下図のようなわが国の長期エネルギー需給展望が発表されました。それによれば、2030年の石油依存度は現在の47%から37%に低下するものの、依然として石油への依存度は高いものとなっていました。また、原子力も14%から20%まで上がることが想定されていました。しかし、2011年3月11日に東日本大地震が発生し、原子力発電の割合を、現状維持あるいは減少させようとの政策に変わりつつあります。具体的には、0~14%にまで、最大20%減少させることにしました。それでは、その分を何で補うのかが問題となります。今、再生可能エネルギーが大きく脚光を浴びていますが、水力を入れて6%、水力を入れなければ太陽光、風力、廃棄物、バイオマス等で2%に過ぎません。これをどうやって20%レベルまで増やすのかが、我々に突き付けられている課題です。

23. 脱炭素社会

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 日本では2020年の秋に菅内閣が誕生し、2050年に向けての脱炭素社会の実現を宣言しました。脱炭素社会を実現するために、2つの柱を準備しました。1つはグリーン成長戦略で、重点14分野を指定しました。そこには洋上風力、水素、住宅、物流、船舶、航空機などか上がっています。これらの分野でイノベーションを起こして二酸化炭素をゼロにして行こうというものです。もう1つが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。グリーン成長戦略を成功させるうえではAIによるDXが不可欠というわけです。

24. 水素社会の実現

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 このグリーン成長戦略の下で、日本が今進めようとしているのが水素社会の実現ですが、具体的に示します。ヨーロッパと日本では、太陽光、風力といった再生可能エネルギーについての事情がことなります。日本は国の面積が狭く、台風の襲来といった問題を抱えています。したがって、再生可能エネルギーをエネルギー源として活用することに制限があります。具体的に自動車を考えて見ますと、ヨーロッパは再生可能エネルギーで造り出した電気を蓄電池に溜めて電気自動車を動かそうという考えで、現在進んでいます。ところが、日本は、先ほど上げた独自事情があり、再生可能エネルギーがヨーロッパほど安価にできません。そこで、水素でエネルギーを得ることを考えています。すなわち、水素社会の実現です。化石燃料から水素を作りだします。その際には二酸化炭素の固定とか二酸化炭素の改質といったことが不可欠となりますが、この部分の技術開発では日本は世界を一歩リードしています。自動車で言えば、ヨーロッパや米国ではEV車の開発競争ですし、日本はどちらかというとFCV車、燃料電池車の開発に力を入れています。

25. 金融機関の課題

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 ここまでは地球環境問題に対する世界レベルおよび日本レベルでの対応を見てきました。ここからは北伊勢上野信用金庫も属する金融機関が、この問題にどう対応していくべきかを考えて見たいと思います。世界レベルでは、ESG投資を通して多くの環境マネーが動いていますが、これを担っているのは金融機関です。北伊勢上野信用金庫も黙って見過ごしているわけには行きません。

26. 持続可能な開発(SDGs)を中心に据えた展開

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 SDGsは2015年国連サミットで取り上げられた持続可能な開発目標であることを話しました。現在はこのSDGsをキーワードとして物事が動いています。SDGsでは、17の開発目標が掲げられていますが、中でもESG投資が大きな話題になっています。(Environment/Social/Governance) すなわち、脱炭素をキーワードに世界の投資家がマネーを動かし始めています。ところがESG投資で扱われる金額は世界に君臨する金融機関、大企業でしてとても地域の金融機関、中小企業が扱えるレベルのものではありません。そこで考え出されたのが、持続可能な開発すなわちSDGsという概念です。SDGs(Sustainable Development of Goals) の開発目標の中には、17の開発目標がありますが、エネルギー、異常気象というお金のかかる領域の他に、飢餓とかジェンダーとか、食料とか言う様に、地域の金融機関、中小企業でも十分にあつかえるものが設定されています。今コロナ対策で北伊勢上野信用金庫も色々と努力されていますが、これもSDGs活動の一環であると考えられます。どのような活動でも、持続可能な開発に関係づけて展開する事はできます。やはりやるからには他とは一つ違うと言う展開をしなければなりません。

27. 都市銀行や地方銀行で始めたこと

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 EGS投資関連で都市銀行や地方銀行がやりはじめたことは次の3つです。ESG投資、ESG融資、ESG預金の3つです。ESG投資が最も早く、20年近く経ちます。ESG融資とかESG預金はいずれも最近始めたものばかりです。




28. ESG投資の具体例

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 ESG投資ですが、世界の資産運用会社や機関投資家、投資銀行、信託銀行が大企業が参加し、2300兆円の規模に達しています。世界の一流企業が発行するグリーンボンドを、世界の資産運用会社や機関投資家が購入しています。そしてその仲介役を世界の大手銀行が担っています。場合によっては、銀行自身がグリーンボンドを直接購入ということも考えられます。しかし、ESG投資では金額のスケールがおおきすぎて、地域の金融機関には手が出ません。

29. ESG預金の具体例

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 次にESG預金ですが、環境定期預金ということで三井住友銀行が扱い始めています。これは企業に定期預金をしてもらいます。現在、定期預金の利息は低いですから、預金としての魅力は全くないと思います。しかし、企業はグリーン預金をすることで、企業が環境に貢献していることを外部にアピールすることができます。そして、ESG投資家のお金を提供してもらおうという戦略です。ができるのです。結局、これは大企業と都市銀行だからできるもので、地方の金融機関では無理だと思います。

30. 環境融資の具体例

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 次にESG融資ですが、これは企業のESG対応を促すため、環境数値目標の達成で金利を引き下げると言う融資です。これだと、銀行と企業が一緒に目標を作るため、ESG対応が遅れている企業や、規模が小さい企業も検討しやすいのが特徴です。金融機関が企業と一緒になって開発目標を作るということになりますので、銀行側にもそれなりに環境について勉強しておくことが求められます。このあたりが、北伊勢上野信用金庫が取り組んで行く上で、十分参考になる事例ではないかと思います。

31. 北伊勢上野信用金庫の地球環境問題への取り組み方法

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 それではここからは北伊勢上野信用金庫による地球環境問題への独自の取り組み方について考えてみたいとおもいます。ここからは皆さんの課題ですから、真剣に考えてみて下さい。言えることは、何もアクションを起こさなければ、どんどん他行に先を越されてしまうということです。それから、どうせやるのであれば、他行ではやってないようなオンリーワン的な取り組みをやりたいものです。

32. 取り組み方

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 それでは北伊勢上野信用金庫の対応策を考えて見ます。最低限の対応は確実に進めたいと思います。トップによるSDGs宣言。これはすでに行ったとお聞きしました。ESG融資の開設。これは担当部門にお願いするだけです。それではオンリーワンとなる活動の推進をどうして行くかについて考えます。3つ考えられます。
1つは、これまでの北伊勢上野信用金庫が培ってきた実績をきっちりとフォローすることです。このことは次に具体例で説明します。
1つは、プロジェクトを組んでお客様と一緒に事業展開することです。これも後で具体例を紹介します。
もう1つは、コンサル機能を強化するために職員の皆様の環境に対する質の向上を図ってもらうというものです。

33. これまでの実績のフォロー

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 これまでの実績のフォローとは何かということですが。具体例を挙げて紹介します。㈱マツザキですすめた事業に、小水力発電事業があります。これはSDGs的には再生可能エネルギー創出への貢献ということで、意義のある事業でした。この事業では、北伊勢上野信用金庫として補助金の申請のサポート、プロジェクトファイナンスといういままでにない手法で支援してきました。企業が事業を進める場合、ある目標を達成したらそれで終わりではありません。ほとんどの事業が、必ず次の目標を持ち、限りなく努力を続けていくものです。そして、それをサポートするのが金融機関です。お客様と長期間にわたって関係を続けて行くようにしなければなりません。

34. ㈱マツザキの全体スキーム

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 マツザキの小水力発電事業の第一段階の開発目標は小水力発電の稼働にありました。これは上手く成功しました。しかし、次のステップとして、地域おこし事業の推進というものがまだ残っています。これを北伊勢上野信用金庫が一緒になって進めて頂きたいもので、フォロー体制を組んでやる必要があると思います。要はやりっぱなしでは駄目だということです。


35. プロジェクト対応による事業展開 ㈱環衛

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 プロジェクト対応による事業展開について具体例を紹介します。環衛さんのケースは、SDGs的には、汚泥バイオマスの有効活用した、住み続けられる街づくりといったところでしょうか。この事業は先日内閣府の地方創生に資する特徴的取り組みということで表彰を受けたとお聞きしています。これこそ、北伊勢上野信用金庫においてもプロジェクト体制を敷いて支援して行って欲しいと思います。具体的には、農作物の販売ルートの開拓などの点で支援できるのではないかと思います。

36. コンサル機能の充実 (有)希望産業

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 コンサル機能の充実を要求される具体例を紹介します。これは建築廃材を活用したバイオマス発電の事業です。希望産業さんのところではこれまで集めてきた建築廃材をチップ処理して、名古屋の企業へこのチップを売却してきました。しかし、これにはチップの横持ちのための費用が馬鹿にならないほどかかるため、社内に発電設備を設置して、バイオマス発電を行なおうと考えました。これは発電事業ですので、色々な専門分野の知識が必要となって来ます。とくに環境に関する規制やら発電に関する規制などをしっかりと勉強してからではないと、中々前へ進めることはできません。そのためにも、北伊勢上野信用金庫の皆さんのコンサル機能の充実が欠かせません。

37. コンサル機能の充実 環境サイレッツ

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 それでは、この金融機関のコンサル機能の充実をどの様に図るのかについて考えて見ます。コンサル機能とは、お客様の技術的、法務的相談事に対し、北信の職員の皆様が、信頼のおける相談相手になってやれるかどうかであると思います。この環境問題に関係する技術的、法律的問題に対処の仕方を身に付ける方法として、三重大学のSciLetsという地域科学人材育成事業を紹介したいと思います。これは環境アナリスト資格を取るビデオ講座です。 お客様からの相談に乗るために必要とされる情報や基礎知識を皆様が学んで頂だく上で最適ではないかと私は思います。

38. 環境問題・環境評価法

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 三重大学のSciLetsの講座を受講すると何を学ぶことができるのか、について具体的に紹介します。1つは、環境問題・環境評価法があります。これを習得することで、CO2削減に挑戦している企業と一緒にCO2の削減目標を設定できます。




39. 環境関連法・行政概論

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 また、環境関連法・行政概論という講座があります。企業が直面していると法的規制への対応を一緒に考えて行きます。






40. 北伊勢上野信用金庫の地球環境問題への取り組みから得られる成果

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 最後に三重大学SciLets講座を皆さんが受講されて、アナリスト資格を取得されるとどのような効果が生まれるのかを考えて見ます。アナリスト資格を有する職員の確保し、質の高い仕事に着手できれば、お客様の信用獲得に繋がります。そのことは北伊勢上野信用金庫の業績の向上にもつながります。




41. アナリスト・エキスパート資格の取得

analist&expert

 三重大学のSciLets講座を半年かけて受けて頂くと、アナリスト資格が得られます。この講座は、個人でオンラインで受けて頂くことも可能ですが、現在私の方からは南部理事長様や武岡部長様には集合講座の形で進められてはどうかと提案しています。週1.5時間で、約半年かけて資格を取得できます。



42. 金融機関に求められていることは

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 今、金融機関に求められていることは、次の2つが重要です。1つは、コンサル機能です。お客様が何か事業を進める計画がある場合には、ワンストップサービスの形でその相談に乗ってやる必要があります。

 1つは、目利き能力です。技術的な知識となってきます。このいずれおも自分のものにしようとすれば、是非アナリストの資格を取って頂くのが、良いのではないでしょうか。私も実はエキスパートの資格を取りました。

43. プロジェクト推進体制の重要さ

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 アナリスト資格を取っていただいたら、それを活用してプロジェクトとしてお客様と一緒に事業を゜進めて行くことになろうかと思います。その際には、三重大学との連携を図ることが重要です。そして、具体的に動き出したら、、補助金の申請や、融資の手助けをしてあげて下さい。



44. おわりに   

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 今日は、地球環境問題に対して北伊勢上野信用金庫さんが、どの様に取り組むべきかを考える参考となる指針を述べさせていただきました。1つの意見として今後参考にして下さい。重要なテーマですので、一度皆さんで議論していただければと思います。







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