プロジェクトの概要

1. はじめに

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今日の講義は、エネルギー技術概論であり、具体例として、株式会社マツザキと連携して進めた小水力発電プロジェクトについて、その概要について紹介したいと思います。





2. 馬野川小水力発電復活プロジェクト事業

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 プロジェクト期間は2014年~2019年までですから、5年間を要した長期プロジェクトでした。水車の出力は200kw級で、落差70m、年間電力量100万kwhを稼ぎ出してやろうという計画です。

 ㈱マツザキは、伊賀地域で60余年にわたり建設業を営んできました。2011年3月の東日本大震災で、東北のために何かしたいと思い、それが、伊賀のために何かしたいに変わって来たそうです。そして、現在では、小水力発電を通じて「建設業者としての地域貢献」「安定的経営の一角となる事業」の両立を図りたいという目的を掲げています。

3. プロジェクトの概要

 具体的に馬野川における発電所設備の設置位置を示したのがこの図です。取水口を2つの支流の合流直下の河川内にもうけます。標高461mです。850mの導水管を使用し、標高462m地点まで導水します。75m落下させた水を、発電所の中の水車へ落とし込みます。発電所の標高は385mです。近くの浄水場には導電線が引き込まれているので、これを利用して送電を行います。

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4. 事業の展開経緯

 事業の事業の展開経緯ですが、2013年12月に㈱マツザキの方から支援して欲しいとの相談がありました。すぐに三重大学との間で勉強会を開催しようということになり、2014年1月には第1回勉強会を開催しています。以降、5年間1回/月の形で進めて来ました。

 また、6月からはこのようなプロジェクトは地域の協力が絶対に必要と言うことで、地域協議会もスタートしました。その後最初の1年間は事業性評価、次の2年間は技術開発、そして工事開始前の1年間は国への許認可活動で謀殺されました。工事は1年かけ2019年8月に竣工式が行われました。事業性評価とOnly One技術開発には国の補助金も活用しました。事業化可能性評価に500万円、技術開発に1500万円、事業化支援に400万円の合計2,400万円です。

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5. 事業性評価①

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 1919年~1958年に稼働していた馬野川水田発電所を再復興しようというのが、当初の大きな目標でした。その当時の発電機の出力は60Kwでした。川の流量との兼ね合いで、60kwをどこまで大きくすることができるのかが、事業を成功できるかどうかと関わります。事業性評価の段階では200kwにどこまで近づけるのかで苦労しました。



6. 事業性事業性評価②

 これは再生可能エネルギの固定価格買取制度制度の価格区分を示したものです。水力発電では200Kw未満の34円kwhでFIT事業を展開することになります。水力発電では、一番高い価格で買い取ってもらえる領域です。

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7. 事業性評価③

 最終的には建設コストがどの程度かかるのかどうかが、この事業を進めるかどうかを判断しますが、マツザキは建設会社なのでかなり詳細に見積もることが可能でした。建設コストは3億17百万円かかると推定しました。従って、この建設コストを賄えるだけの収益が得られるかどうかが、次の大きな検討項目となりました。

 34円/kwhrで買い取って貰えるとすると、年間百万kwhの電力量の供給が必要となりました。これを確保するためには、Only One技術を駆使しなければなりません。

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8. Only One 技術の開発

 年間100万Kwhを引き出そうとすると、未利用水の活用ということを考えることが必須となります。ここで、我々が目指したオンリーワン技術について少し説明します。従来は、川からの水を引く導水路は開放U字構方式です。流量は自然にまかせる訳です。

 今回の新技術では、パイプを使用した閉館タイプを用いて、流量の多い場合に、ポンプで押し込んででも流量を稼ぐことを考えています。通常だと捨てていた部分、すなわち、未利用水部分を、何とか有効に使おうとする考え方です。今回技術開発を進めた最大の理由は、この未利用水の活用技術の開発にあったわけです。

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9. 馬野川小水力発電復活プロジェクト事業

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 ㈱マツザキの馬野川小水力発電復活プロジェクト事業について、2019年8月に無事竣工式を迎え、事業がスタートしました。

 ところで、企業が事業を進める場合、ある目標を達成したらそれで終わりではありません。ほとんどの事業が、必ず次の目標を持ち、限りなく努力を続けていくものです。そして、それをサポートするのが金融機関です。お客様と長期間にわたって関係を続けて行くようにしなければなりません。

10. ㈱マツザキの全体スキーム

 マツザキの小水力発電事業の第一段階の開発目標は小水力発電の稼働にありました。これは上手く成功しました。しかし、次のステップとして、地域おこし事業の推進というものがまだ残っています。これを北伊勢上野信用金庫が一緒になって進めて頂きたいもので、フォロー体制を組んでやる必要があると思います。 要はやりっぱなしでは駄目だということです。

 発電事業は、第二創業で新しい会社を発足させて運営します。新会社の名前は「三重地域エネルギー株式会社」です。また、収益を確保は中部電力との間での固定価格買取制度を活用したFIT事業で実現します。そして、この事業を進めるには、地元の住民の協力を得なければなりませんが、そこの部分は、当面事業が軌道に乗るまでは地域協議会という形態で進めます。また、事業で収益が出始めたら、これを基に基金を作って、一般社団法人として、その中で地域おこしをやって行こうと考えています。

 一般社団法人は営利を目的としない非営利法人で、人が集まって初めて法人格を取得することができます。人が集まってということで、地域おこし事業のようなものには最適です。また非営利とは「利益の配分をしないこと」を言います。非営利と聞くと、ボランティアや無償活動を行わなければならないというイメージを持ちますが、まったく異なります。一般社団法人も株式会社などの営利企業と同様、利益を上げて、役員や従業員への給料支払いを行うこと自体は全く問題ありません。ただ、利益の配分を行なわなければ良いのです。

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11. 地域おこしの取組み

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 これは、今日出席してもらっている地域おこし協力隊員である早川さんの処で作成された地域協議会の取り組み方針です。すでに地域住民参加の取組みをスタートさせています。地域振興、環境学習などの情報発信、住民や地元企業への出資要請。利益還元方法の検討といったものの検討がなされています。


12. 自然体験学習ゾーン

 森教授からも1つの提案が出されています。自然体験学習ゾーンの提供です。例えば、

・ゾーン1では、馬野川小水力発電所での環境体験学習ゾーン
・ゾーン2では、さるびの温泉での健康リゾート体験学習ゾーン
・ゾーン3では、夏場のほたる鑑賞体験学習ゾーン
・ゾーン4では、星空観察体験学習ゾーン
・ゾーン5では、農業体験学習ゾーン

といった様に、多くの体験学習ゾーンを考えて行きます。できるだけ沢山のメニューを準備して、観光客に選んで楽しんでもらうようにしようと考えています。

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