第二部 三重大学夏休み自由研究教室

第一回目:8月12日(水)

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 午後からの第二部は、三重大学が主導する教室が開催されました。初回である12日(水)、まず初めに、伊藤コーディネーターによる趣旨説明が行われました。「今回の発表は、最後に皆さんに発表をしてもらいます。楽しみにしていてください」

 また、岡田副館長による挨拶では「この環境未来館には、博物館もプラネタリウムもあります。四日市は公害に苦しんでいた時期もありましたが、環境未来館の展示物などで、皆さんの先輩が良い環境をつくってくれたことがわかります。この教室も当時を再現したものです。子どもらと同じ気持ちになって、考えてみてください」

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 まず、三重大学人文学部の朴教授による講義からスタート。午後の部の対象の子どもたちは、市内在住の小学生児童です。テーマは『四日市公害から学ぶ四日市学』。「今日は楽しいけど、勉強する日にしましょう。同じグループの人の名前を覚えて、一緒に学びましょうね」

 講義は、公害に苦しんだ四日市の歴史や変遷から、環境改善のための努力についてまで幅広いものでした。「当時、公害のせいで多くの人に喘息などの被害がでました。住民運動や裁判を経て、ものづくりは環境に配慮すべきという認識が高まっていきました」。朴教授のエネルギッシュな講義に、子どもらは引き込まれていました。

 また未来館の紹介や、持続可能な開発を目指すESD教育について、三重大学の環境への取り組みなども披露されました。「四日市は辛い経験を乗り越え、世界一の環境先進県へと成長しました。皆さんは大切な四日市の未来の宝物。皆さんが知恵を絞って、世界に誇れる四日市、三重を皆さんと一緒にどう作っていくのか考えましょう。一緒にがんばってくれますか?」。 問いかけに、「はい!」という大きな声が飛んでいました。

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 そして、四日市港管理組合の山下晃氏による講義が行われました。テーマは、『四日市港と環境』です。まず山下氏は、四日市港の基礎をつくった稲葉三右衛門氏について、紹介を行いました。「明治時代から工場地帯であった四日市に、彼は私財を投げ打って、10年以上かかって港を築きました」。また、クレーンなど港で使用する機械や、働く人々についてなど言及しました。そして、公害からいかに環境を改善させていったかについても紹介。


 山下氏は、「人々は、工場からの排水汚泥を取り除く努力を続け、水の汚れが改善していきました。現在、海岸や干潟には、カニや貝、亀など、貴重な生き物が生息しています。生き物の力もあって、海が綺麗になりました。皆さんもできることから行動してくださいね」と話していました。

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 最後は、中部電力の南創はじめ氏による、エネルギーに関する講義です。電気について学び、「電気を使う家電には何があるでしょうか?」という質問に、子どもらは「LEDライト」「冷蔵庫」「コンピューター」などと、回答していました。

 磁石とコイルを使い電流が流れると動く電流計や、手回し電球発電機など、子どもたちの興味をひく体験型学習がふんだんに盛り込まれ、電気の仕組みや発電について、また自然エネルギーについてなど、わかりやすい内容となっていました。「できるだけエネルギーについて学び、大切に使ってほしいと思います」

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 また、人力発電自転車では、全員が自転車を漕いで、発電体験を行いました。たとえば、掃除機は1200ワット、レンジでは1300ワット、炊飯器では300ワットを必要とします。 「皆さんの漕ぐ力で、どのくらいのものを動かせるのでしょうか」。いざチャレンジ、学年と男女に分けて、最高発電力を競います。結果、男の子が285キロワット、女の子で232キロワットと、炊飯器の必要電力を満たすこともできませんでした。発電することについて、身をもって体験することができた講義となりました。

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 そして、最後は三重大学の学生さんの紹介です。環境衛生委員会や学生委員会などのメンバーらが子どもたちのサポートを行います。「皆さん、いろいろなプログラムを楽しみながら学んでくださいね。そして夏休みを楽しんでください」。これで初日のプログラムは終了です。




第二回目:8月19日(水)

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 2日目19日の午後、噴水広場前に集合した一行は、バスツアーにでかけました。挨拶に立った伊藤氏からは、スケジュールの確認と密着取材を受けた四日市ケーブルテレビ局CTYの放送時間などが伝えられました。「今日はフィールド学習です。楽しみにしていてください」

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 まず、一行が訪れたのは、展望展示室うみてらす14です。ナビゲーションシアター模型と大型映像で四日市港について学ぶことができます。シアターでは、「ポルテくん」と「稲葉三右衛門さん」のキャラクターによる、子どもたちにもわかりやすく伝わるようなビデオ映像が放映されました。

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 また、見晴らしの良い展望室から、港を見ながら港の働きについての説明を受けました。 車を輸送する輸送船や、対岸の碧南発電所へと運ばれていく石炭の山、香港からやってきた輸送船など、四日市港はまさに貿易港としての活気を見せていました。また、浜にいる蟹や貝などの生き物による自浄作用によって、海の水が綺麗になっていることについても言及がありました。

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 次に一行がやってきたのは、川越電力館。火力発電、電気、地球環境について、学ぶことができます。一行はまず、川越火力発電所の、敷地面積にしてディズニーランド二個分という広大な発電所構内のバスツアーを行いました。

 高さ200メートルという煙突や、緑化を進めていることなど、ツアーガイドさんによる詳細な説明がありました。それからグループ分けを行い、中央制御室などの見学を行いました。「ここは、人体で言うと脳に当たるエリアです。ここからタービン建屋に指示を送っています」。なかなか普段見ることができない制御室の様子に、子どもらは見入っていました。

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 建屋内では、模型を使って現在地を確認しながら、発電所についての説明を受けました。 電気を発電するための燃料である、液化天然ガスはカタールやインドネシアなどから船で輸送され、液体の状態で保管されています。タンクの大きさは、なんと75メートル×45メートル。しかしこの巨大なタンクも、なんと1週間で使い切ってしまうそうです。

 ガイドさんによる「平日と休日のどちらが電気を使うでしょう」というクイズには、休日!と答えた子も多かったですが、実は平日の方が各施設などが稼動するため、使用量が多いのだそうです。また、実際の発電部についても見学をすることができ、子どもらにとって大変貴重な経験となったことでしょう。

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 そして、人と地球の共生をわかりやすく伝える、テーマパーク仕立ての電力館「川越電力館テラ46」では、映像や展示物による体験型学習が行われています。

 一行は、5階にあるハイパーシアターで、地球環境についてがテーマの地球救出サミットに参加。テーブルのボタンを押すことで、議題に対して一票を投じるというものです。子どもらは口々に意見を言いながら、積極的にボタンを教えていました。こういった参加型の学習体験は、子どもらに良い経験になったようです。

第三回目:8月26日(水)

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 そして26日(水)の午後からの講義は最終日です。伊藤氏は「環境未来館とESD教育をセットで、四日市の文化を発信していきたいと考えています」と述べました。

 最終プログラムは、発表会です。三重大学の朴教授は「昔、四日市の悪かった空気は、今は綺麗になりました。皆さんは公害と歴史に学びました。四日市港や稲葉三右衛門、電気についても学びました。そしてバスツアーでも学びました。今日は、これを元にして壁新聞を作ります。そして日ごろ考えていたことなども含めて、文字や絵でも表現してみましょう」と話しました。

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 「すごいなと思ったこと、印象に残ったこと、何でも良いので、自由に紙に描いてみてね」。 子どもらは、三重大学の学生さんの助けを得ながら、模造紙に自由に思ったことやイメージ図などを描きこんでいました。

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 そして、いよいよ発表会です。6班に別れ、それぞれが自分たちの壁新聞について、発表を行いました。
「この学習で行った四日市ポートビルに、あれからまた行ってみました。働く人などに興味を持ちました」
「自然豊かな四日市を守りたい」
「普通は入れない火力発電所に入れた」
「自分の財産を犠牲にして港をつくった稲葉さんはすごい」
「自転車を漕いで発電するのは、思ったより発電しなかった。電気を作るというのはすごい
 ことだと思いました」
「川越発電所の敷地は、ディズニーランド2個分もあると聞いて驚きました」
「公害に苦しんだ港が、今は海外船もたくさん来ていて、すごいと思った。もっと発展して
 ほしい」
「50年も前に公害と戦った人々について、話していきたいです」
「昔の人の努力があって、今の四日市がある。これを維持していきたい」
「四日市はただ大きくなったわけではなく、皆の努力があったからこそだとわかった」
「一人の力では難しいが、みんなで努力すればできる」

 四日市の自然を守っていきたいと力説する姿には、会場から拍手も。さまざまな意見が披露されました。

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 みんなの学習成果が凝縮された壁新聞。それぞれがしっかりと学んだことが伝わってくる発表でした。会場からは、壁新聞についてさらに詳しく聞きたいといった意見も寄せられ、非常に活発な発表会となりました。

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 すべてのプログラムが終わると、修了証書の授与式が執り行われました。朴教授より、一人ひとりに修了証書が手渡されました。子どもたちは、少しはにかみながらも、嬉しそうに修了証書を受け取っていました。

 「皆さん、少ない時間の中で、とてもよくがんばりました。50年前の自分が知らないことに関心を持つのは難しいのに、すばらしいことです。私は胸が熱くなりました。四日市は皆が誇りを持てる町です。皆さんは次の100年を見据えています。次の稲葉さんのような方がでてくることを私は期待して待っています。皆さん、自分とみんなに拍手をしましょう」

 会場は拍手に包まれ、これにて全3回のプログラムは幕を閉じました。このESD授業は、来年も開催される予定です。

 本事業に関する新聞記事を以下に掲載します。

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