三重大学社会連携研究センター公開講座 中小企業のためのセミナー 事前説明会 7月18日)

 
 「中小企業のためのBCPセミナー」を、平成26年7月18日(金)13:30~16:00の時間帯で、じばさん三重4階視聴覚室にて開催しました。主催は三重県中小企業家同友会と三重大学社会連携研究センター四日市フロントです。

 講師の三重大学工学研究科の川口淳准教授からは「南海トラフ地震に備える」と題して約1時間半講演を頂きました。その後、地域地震情報㈱の川合一明代表取締役からは「企業防災・BCP策定セミナー」の紹介がありました。

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 川口先生の講演の要旨を紹介させて頂きます。

 最初に取り上げられたのが「ハードウェアの限界」という問題です。

 具体例として、三重県大紀町の津波避難タワーを紹介されました。避難収容人数200人の避難施設です。大紀町の住民の数は2,000人ですので、住民の10%程度しか収容できません。残りの1,800人はどうなるのでしょうか、これがハードウェアの限界です。要はハードウェアをいくら整備しても、それで安心というものではなくて、結局は自分自身で自分の命を守る対策を考えなればならないと、先生は言われます。

 次の話は「避難訓練に魂を込めろ」というものです。

 一般にやられている避難訓練は、訓練をやれと言われてやっている場合が多い訳ですが、しかし、ここには落とし穴があると先生は指摘されます。作られたマニュアルに従って繰り返し繰り返し行なっても、何のためにやっているかを考えながらやらなければ、いざ自分が災害に遭遇した時に、何もできない状況が起こる、と先生は心配されます。やはり魂を込めた避難訓練が求められるのです。

 その後、先生は大紀町の子供達の避難訓練の模様を紹介されました。子供たちは自分達で話し合いながら訓練をやっているので、どんどん面白いアイデアが出て来る。これが重要だと先生。その時の状況に応じた避難訓練これが必要で、それは如何に本番と同じ状況を想定してやるか、何のためにやっているかを考えながらやるのが重要です。

 次に「地震の被害対策における目標レベルの設定」について話がありました。

 先生は、図に示す様に、未知・想定・未周知の3つの領域に分けて、それぞれの領域での目標レベルの設定の考え方を示されました。

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 まず、未知の領域での最大のものとして、県で設定した理論上最大クラスのものを持ってきます。これは正に想定外の規模に相当しますが、出来るだけ生き残ることを目標レベルとして掲げるべきと言われます。

 次に、想定の領域で考える最大級のものは、県で実際におきた過去最大クラスのものを足し合わせて最大のものとして持って来ます。ここでは今後のハード整備等の対策目標レベルを設定することになります。

 最後に、未周知の領域では、近年の既往最大レベルを持って来て、生命も財産も絶対に失わない目標レベルとしています。

 要は、1,000年に1回の地震に対して、自分の命を救うことを、100年に1回の地震に対しては、ハード整備という具合に対策の対象を変えなければならないということです。


 最後に「企業におけるBCPとは」について話がありました。

 事業者に求められることは、まずは従業員・お客の生命を守ることであり、その後に会社の財産を守るということになります。会社として速やかな復旧・復興を目指すわけですが、事業者間連携は社会貢献の遂行であり、事業者と地域の連携は地域貢献の遂行となります。また、事業者と行政の関わりは、公助・共助・自助の限界を認識することに繋がります。BCPが防災訓練と大きく違うことは、社会貢献、地域貢献を如何に考えて行くかの点にある様です。

 BCP策定上の注意点については、「BCPはうまくいくプランではなく、発生した事態に臨機応変に対応できるようなプランであること。また、最小限の資源で優先順位をつけた対策を検討することが求められます。従業員の教育・啓発は基本中の基本であり、必ずPDCAを回し続けることが必要です。プランは決して完成しません。」

と、本日の講演を締めくくられました。