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企業防災BCP策定セミナー 実務紹介編 第3回

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 11月10日に第3回企業防災BCP策定セミナーが開催されました。当日の実習では、2004年10月に発生した新潟県中越地震で、大きな被害を受けた三洋電機半導体工場のケースが取り上げられました。

 今回のケースですが、震源から約10kmの位置にある三洋電機の半導体工場では、生産ライン5本のうち、200mmライン1本を失うという痛手を被りました。設備損失は423億円、機会損失は310億円に上りました。震度7相当の直下型地震を経験した半導体工場は、世界的にもほとんど例がありません。三洋電機が受けた被害の実態と、それから学んだ対策の全貌を明らかにして行きます。特に工場の震災対策に焦点を当てました。

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 今回のケーススタディを行う目的は何かを少し考えてみます。

 BCPマニュアルを作成して行く過程では、自分自身の事業所がどういった被害を受けるのかを予測し、その対策を講じて行きます。その際に予測する被害の程度を誤ったり、対策が抜けていると、実際に災害が発生した時には想像以上の被害を蒙ることになります。従って、ケーススタディとして大被害に遭った企業を取り上げて、自分自身の問題として扱っておけば、予測の不備、対策の抜けが生じた場合に、どのような損失を覚悟しなければならないのかが良く分かります。

 実習では、日経マイクロデバイス2005年11月号「東日本巨大地震~震災から復興へ、過去の事例に学ぶ。地震からの復活。三洋電機に学ぶ半導体工場のリスク管理」の記事を皆さんに読んで頂きました。そうした後で、下記の設問についてグループディスカッションを行いました。

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 今回のグループディスカッションは下記のテーマで行われました。
①人的被害が4名と少なかった理由は何か。重要な数項目。
②大きな経済損失(733億円)を出した原因は何か。重要な数項目。
③この判例を教訓に自社で採用すべき施策は何か。3点以上。




 まず、模範解答を示します。そして、現在追跡調査している㈱環境思考さんが所属しているAグループでの回答と比べたいと思います。

 モデル解答(1)  人的被害が少なかった理由
(1)大企業であり、支援体制がしっかりしていた。
(2)普段から5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を徹底していた。
(3)普段から防災避難訓練を実施していた。
(4)2次災害の防止に力を入れた。入室チェック、入室2人体制、手洗い洗顔義務化、ガス検知の実施など。
(5)衛星電話の備えがあり、グループ企業の支援が得られた。
(6)会社幹部が出勤しており、即適切な対策行動をとれた。

 Aグループの解答ですが、
・工場が広々としている。
・当日は土曜日。出社している人が少なかった。(ラインの稼働がしていなかった。)
・避難訓練を行っている。
・大震災を想定してマニュアルが策定してあった。
というもので、模範解答と大差ありません。

 次に、モデル解答(2) 大きな損失を出した原因は何か
(1)防災マニュアルはあったが、BCPはできていなかった。
(2)災害想定が甘かった。震度5までしか対策していなかった。短周期地震、強烈な加速度に見舞われた。
(3)代替生産の体制ができておらず、長期間生産を止めてしまった。
(4)ライフラインの長期停止、交通機関の長期不通を想定していなかった。
(5)地震保険に加入していなかった。

 これに対し、Aグループの解答ですが、
・生産ライン5本のうち、200mmライン1本を失った。
・代替生産できる設備を持っていなかった。
・操業停止が2ケ月続いた。
・出社できない従業員がいた。
・地震保険に加入していなかった。
・想定外の地震のため、ライフラインの回復に時間がかかった。
・道路が寸断され、出社できなかい状況が続いた。
となりました。まずまずの解答でしょうか。

 さて、今回のケーススタディの中心課題は、「なぜ730億円の被害を出してしまったのか」という点です。ポイントは代替生産の体制ができておらず、長時間生産を止めてしまったことが一番大きな要因となります。