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企業防災BCP策定セミナー 実務紹介編第4回

 企業防災BCP策定セミナーの第4回講義は12月8日に開催されました。

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 今回の講義は下記の個別テーマで行われました。具体的には、(1) 耐震対策の進め方、(2) 緊急時避難体制の整備、(3) 災害発生後の対応、(4) 安否確認のしくみ構築、(5) 情報システムの防災対策、(6) 持てる資源をどう生かすか、でしたが非常に盛り沢山でした。

 一方で、実務としては、「防災力トレーニング」が行われましたので、これについては追跡調査の対象である㈱環境思考さんを追いかけてみました。

 防災力トレーニングの重要なポイントは何でしょうか。それは、災害発生に直面した時、どれだけ「防災力(減災力)」を発揮できますかということです。

 ㈱環境思考さんを含め参加された企業さんには、
(1) その時のあなたのとっさの行動と、その後の行動について記述して下さい。
(2) また、その行動をとったすべての状況判断の内容を、その行動を最優先させた理由を挙げて下さい。
という課題が与えられています。

 具体的な災害発生場面として下記の3つの状況設定がありました。
1.事務所で地震に遭遇したとき。
2.店舗で地震に遭遇したとき。
3.高速道路で地震に遭遇したとき。

 それでは1つづつ検討して行きます。

1.事務所で地震に遭遇したとき

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(1) 場面:(写真左)
外出から帰って、営業所に戻った時、突然揺れ始めました。事務所をのぞくと左の写真の様な有様で、所員3人は椅子に座ったまま、周りをただ見ているだけです。揺れが続いています。さあ、営業所長のあなたはどう行動しますか。



(2) ㈱環境思考さんの回答
・とっさの行動
机の下に自分の身を置く事を指示。大声を掛ける。揺れが収まったら安全な場所へ誘導す る。安否の確認とけが人はいないか確認。けが人がおれば救援に回る。
・状況判断
そのまま座っていると、棚、PCなどの高い所から落下物があるため、スペースをつくり、まず身を守ることが必要と判断した。

(3) 模範解答
  1) 所員に対して「すぐに廊下に出ろ!」と手振りで指しながら、大声で指示し、
   落下物、倒壊物の少ない廊下に緊急避難させる。
  2) 落下物、倒壊物の無い所で、手摺り等に掴まり、頭をカバンなどで守りながら、
   揺れが収まるのを待つ。
  3) 揺れが収まったら、火災、ガス漏れ、負傷者の有無を確認し、ガスの元栓を閉
   める。
  4) ガラスの飛散、建物の倒壊、転倒物、落下物の危険のないルートを選び、外の
   避難場所(駐車場など)に集合し、点呼を取る。
  5) 携帯のワンセグTVなどで、周辺の被災状況を把握、本社に通知する。

2.店舗で地震に遭遇したとき

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(1) 場面:(写真右)
取引先での商談を終え、自社のスーパーマーケットに戻った時、突然揺れ始めました。店をのぞくと左の写真の様な有様で、棚から商品が落下、酒ビンの棚が大きく揺れています。さあ、店長のあなたはどう行動しますか。



(2) ㈱環境思考さんの回答
・ とっさの行動
まず、安全な場所を確認し、揺れのおさまるのを待ち、誘導する。大丈夫でない従業員を助けに行く。揺れがおさまったら、店長自身が安全な場所へ誘導し、けがの状況、安否を確認する。
・ 状況判断
動ける状況であることを確認したので、安全な所へ店長が誘導していく必要があると判断した。

(3) 模範解答
  1) 顧客及び店員に対して、「直ぐに棚から離れて、こっちへ逃げろ。」と手招きし
   ながら、大声で指示し、安全なスペースに緊急避難させる。
  2) 落下物・転倒物の無い広いスペースにしゃがみ、カバンなどで頭を守るよう指示
   する。
  3) 揺れが収まるのを待って、顧客、従業員に負傷者がいないことを確認し、いたら
   即救出し、避難させる。
  4) 火災の発生、ガス漏れのないことを確認し、避難経路にガラスの飛散、柵の転倒、
   天井の落下など危険がないことを確認しながら、顧客を一旦外の駐車場等の一時
   避難場所に誘導、集合させ、全員の点呼を取る。行方不明者がいれば、複数の調
   査担当者を任命し捜索に当たらせる。
  5) 携帯、ワンセグなどで地震の震源地、規模、震度を調査するとともに、調査チー
   ムを編成し、店内の被害状況調査、周辺地域の被害状況を調査する。

3. 高速道路で地震に遭遇したとき

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(1) 場面:(写真左)
営業所長会議の為、本社に向かって高速道路を走行中、突然揺れ始めました。前方を
見ると、道路が波を打っています。さあ、営業所長のあなたはどう行動しますか。




(2) ㈱環境思考さんの回答
・とっさの行動
後方、右側を確認。スピードを落としながら、安全な場所へ車を停める。会社に連絡し、状況を知らせる。
・ 状況判断
走行することが不可能であるため、車を停めることにした。会社の状況がどうなっているのか知ると同時に、自分の状況を知らせる。助けの依頼をする必要があると判断した。

(3) 模範解答
  1) 後続の車に注意しながら減速し、路肩に停車させ、揺れが収まるのを待つ。
  2) 揺れが収まったら、ラジオのスイッチを入れ、地震情報を聞き、震源地、規模、
   震度、津波の発生予報を確認する。津波が想定される場合は、周囲の状況から津波
   の及ぶ範囲であれば、直ちに車を放棄し、徒歩で丘の上に避難する。
  3) 津波の心配がなければ、携帯で営業所に連絡を取り、営業所の被害状況を把握し、
   本社に状況報告をして出張中止を伝える。
  4) 徐行により、次のインターチェンジまで走行し、そこで高速道路を降り、一般道
   を使って営業所へ戻る。
  5) 途中、渋滞に巻き込まれ、動けなくなったら、車を脇に移動し、エンジンを止め、
   キーは付けたまま、メモを置き、車検証を持って出る。この時、ドアロックはしな
   い。

 ㈱環境思考さんの解答と模範解答を比べますと、幾つかの必要な行動が抜けています。下記のことを常日頃から頭に準備しておくことが必要だと思われます。

事例(1)、(2)の様な事務所や店舗で地震に遭遇したら、
・ 所員、家に対し大声で緊急避難させる。
・ 安全な場所で揺れを待つ。
・ 揺れが収まったら、火災、ガス漏れ、負傷者の確認
・ 外の避難場所へ
・ 被害状況の確認と本社への連絡

一方、事例3の高速道路で地震に遭遇したら、
・ 路肩に停車、揺れを待つ
・ ラジオで地震情報を聞く
・ 本社へ連絡
・ 営業へ戻るのが不可の場合、エンジンを切り、キーを付けたまま車検を持ってドアロックしない。