機能性トマトの開発(その4)…四日市農業センターとの連携

 四日市農業センターにおける機能性トマト栽培実証試験は、3期にわけて実施されました。

第1期…2011年11月8日~2012年3月15日(冬場)

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・ 栽培目的
(1) 対象とするカンパリ種塩トマトを四日市市の土壌でまず栽培してみる。
(2) 水管理については、四日市農業センターの持つ情報を活用。
(3) トマトの持つ機能性成分については、デザイナーフーズ㈱にて分析。


第2期…2012年5月1日~2012年8月7日(夏場)

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・ 栽培目的
(1) 夏場のトマト栽培で水を絞ることの影響調査。
(2) 四日市で高糖度の塩トマトを栽培する方法を開発。
(3) トマトの持つ機能性成分については、デザイナーズフーズ㈱にて分析。



第3期…2012年10月1日~2013年3月15日(冬場)

・ 栽培目的
(1) 水管理を駆使してカンパリ種での高糖度トマトの実現。
(2) 栽培段数と抗酸化性成分の相関調査。
(3) トマトの持つ機能性成分については、デザイナーフーズ㈱にて分析。

 四日市農業センターでの実証試験にて、四日市市の土壌で機能性トマトを生産することは可能であるとの地検を得ました。後は具体的な事業化をどのように進めるかということになります。

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1. 四日市農業センターにおける第1期トマト栽培について
   2011年11月8日~2012年3月15日(冬場)

1-1. 栽培計画

 表1-1に栽培計画を示す。今回購入した苗木の品種は、熊本井手農家で使用されているカンパリ種(有限会社ベストクロップ、1苗230円前後)と四日市の上杉農家で使用されている桃太郎はるかを購入した。今年は初めての年であるため、それらの品種を用いて水欠乏で高糖度トマトを生産できるかを検討する予定。ここで様々な起こり得るであろう問題を解決していきながら技術構築を目指す。まずは、井手農家と上杉農家のトマトの味に近づけることができるかどうかを確認し、その後、土壌改良などを行なうことで、更なる品質向上と技術確立を図る。

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1-2. 苗木の準備

 保木に使用している「カンパリ」は、オランダのエンザ社の品種で、ミディトマトに分類される。井手農家ではこれを使用して「塩トマト」を生産しているため、今回使用した。もう一方の保木に使用している「桃太郎はるか」は、タキイ種苗の品種で、果形が220gr程度になる大玉種である。上杉農家では同じ大玉品種の「桃太郎ヨーク」を使用しているが、「桃太郎はるか」の方が、低温期の栽培性が高いため、今回はこちらを使用した。低温期の栽培性が高いとは、低温・少日照下での果実の肥大力が安定し、低温伸長性に優れるので、長期栽培にも適することを意味する。(写真1-1)

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                  写真1-1 苗木の準備

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 台木に使われている「ブロック」は、サカタのタネで販売されている台木品種で、萎凋病やトマトモザイクウィルスに抵抗性があり、草勢は中程度である。今回は両方の台木に使用されている。(写真1-2)





1-3. 畝の準備

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 トマト栽培を行うハウスは、平面寸法20m×5.4mで、その中に2畝準備し、片方にカンパリ種塩トマト他方に桃太郎はるかを植えた。桃太郎はるかの畝には、写真1-3に示すように一部穴が掘られている。ここには、穴の底にマルチを張って根を張らさないようにし、また、株間を20cmとし密植させる。こうすることで、実が大きくなり辛くなるため、高糖度化させることができる可能性がある。





1-4. カンパリ種系塩トマトおよび桃太郎はるかの栽培概要

 表1-2に四日市農業センターで実施したカンパリ種および桃太郎(はるか)の栽培概要を示す。

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 第1期栽培を通しての反省点は下記の通り。
(1) 黄化葉巻病の対策を徹底する必要あり。具体的には、抵抗性品種の導入、
   コナジラミ対策の実施がある。
(2) 半促成栽培になってしまったので、作型を早める(10月定植)。
(3) 糖度が糖度が思ったほど上がっていない。理由としては、病気の影響、
   摘心したため葉数が確保できなかったため、が考えられる。
(4) カンパリ種は温度が上がると、玉が軟化してしまう傾向がある。

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1-5. トマト成分測定結果

 表1-3にデザイナーズフーズで実施したトマト成分の測定結果を示す。抗メタボに対して効果のある抗酸化性成分は、カンパリ種に特有のものであることが確認できた。

               表1-3 トマト成分測定結果

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2. 四日市農業センターにおける第2期トマト栽培について
   2012年5月1日~2012年8月7日(夏場)

2-1. 栽培品種区分

① カンパリ種(中玉)…120株
  熊本井手農家の塩トマトと同一品種。四日市農業センターの土壌で育てたものが、
  どの程度の機能性を示すかを評価することが第1目的。
② フルティカ(中玉)…120株
  カンパリ種以外の中玉であるフルティカで、機能性がどのように現れるかを調査する
  ことを目的とする。
③ アニモ(大玉)…10株
  機能性が中玉特有のもので、大玉には現れるのかどうかを調査することを目的とする。

2-2. 栽培概要

 表2-1に四日市農業センターで実施したカンパリ種(中玉)、フルティカ(中玉)、アニモ(大玉)の栽培概要を示す。

            表2-1 カンパリ種、フルティカ、アニモ栽培概要

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2-3. トマト成分分析結果

                 表2-2 トマト成分分析結果

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① 上杉農家の高糖度トマト“桃太郎はるか”で、抗酸化力が36.5、リコペン15.1と
  カンパリ塩トマト並またはそれ以上の値を示した。
② フルティカ中玉、アニモ大玉でも段数が進むと抗酸化力の値が増加していく。
③ これらのことから次のことがわかる。
  (1) 同じハウス内で同一生産者による栽培では、大玉よりも中玉の方が機能性は
     付けやすい。
  (2) しかし、大玉でも栽培方法を上手く調整すれば、機能性の付与は可能である。
④ 栽培方法で機能性を変化させうることが判ったので、安定したカンパリ種塩トマトを
  栽培している井手農家からサンプルを取り寄せ、統計的な分析をやってみることを
  検討する。
  ⇒ デザイナーズフーズ検討
  ⇒ デザイナーズフーズでは、150~200検体/月こなしているので、
    一段毎(1週間)で1検体のサンプル調査は可能。
⑤ 高糖度トマトを生産している上杉農家にも、今後機能性トマト栽培をお願いすることは
  可能となった。
⑥ 機能性のバラツキを抑えるために、栽培の安定性をどの様に確立するか。
  ⇒ 栽培マニュアルが必要。
⑦ 機能性といっても、リコペン、抗酸化力、ビタミンC、糖度等色々ある。機能性の
  数値上の定義が必要。
⑧ 機能性トマトの栽培農家を上杉農家、メロン農家と幅広く考えることができる。
⑨ 水については、途中からコントロールして行う。第3段~7段。
⑩ トマトの栽培は、土壌構造が40%、栽培技術が60%である。
⑪ 土壌は、水持ちと排水性について、両方の機能を持つことが重要。
⑫ 毛管水か重力水の区別も重要。畑の土壌の水は、どの程度蓄えられているか。

2-4. 栽培トマトの評価表

                 表6-3 栽培トマトの評価表

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3.四日市農業センターにおける第3期トマト栽培について
   2012年10月1日~2013年3月15日(冬場)

3-1. 栽培品種区分

① 第3期栽培での容器は、カンパリ中玉は金色、コルト大玉は銀色とする。
② 全体では、200株超となる。中玉-カンパリ1種、大玉-コルト、アニモ2種の計3種。
③ 上杉さんの桃太郎高糖度トマトは、機能性トマトとして十分に通じる。

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3-2. 種を蒔いて発芽させる方法

① 種を蒔いて発芽させる場合、冬場であると下から熱を与える必要がある。
② 種植えは10/1日。10/30日に観察。これから2週間以内に定植をする。
③ 苗で育てる目安は、つぼみが見えるまで。
④ 現在の苗の段階での水の管理は、乾いたら2~3日に一度やる。
⑤ カンパリ中玉の内、10株は隔離ベッド用の試験栽培に向ける。

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3-3. 接ぎ木で発育させる方法

① アニモ大玉は、接ぎ木用で10~12株とする。
② 第1回目は失敗し、10/27日に台木の再挑戦。
  両者の生育状況が同程度でないとさし木はできない。
③ トマトの台木には、ナスを使う。理由は、ナスの方が幹が細いので根の成長が弱く、
  水が下がらない。これによって糖度を保つことができる。

3-4. 温室での栽培方法

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① 温室20mの値段は、約100万円。
② トラクターは2回かける。
③ 一部は5m幅でマルチを入れる。目的は、根がマルチの外へ出ないようにするため。
   断根シートと呼ぶ。




      
4. あとがき

 今回、本リコピン機能性トマト栽培マニュアルを作成するに当っては、平成23年7月9日~10日および平成24年8月10日~13日の2回に亘る土壌調査で、熊本県有明干拓地の土壌がトマト栽培にとって非常に適した土壌特性を有するという立場に立っている。

 今後は、熊本県有明干拓地の井手農家と互いに連携を取り、リコペン機能性トマトを市場に送り出して行く。

     

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